先月31歳の女性が、クージービーチというシドニーで最も人気のあるビーチで、安全区域とされていた場所で泳いでいて、サメに襲われて両手両足に大怪我を負って、数週間危篤状態だった。被害者が1歳に満たない赤ちゃんのお母さんで、学校の先生だったことで彼女の赤ちゃんを抱く写真が瞬く間に拡散され、テレビ局に数万ドルの寄付金が寄せられた。彼女が意識を取り戻しました、というニュースがトップニュースで報じられるほどだった。
1月にはシドニー湾で、6メートルの高さの岩場から海に飛び込んで遊んでいた子供がサメに襲われて両足に大怪我をして、翌日には、シドニーシテイ近くのデイワイビーチで11歳のサーファーが襲われ、またその翌日はマンリービーチで25歳のサーファーが大怪我を負う、というたった48時間に3件のサメによる事故が起きた。
シドニーばかりでなく、オーストラリア全体でサメによる人身事故は、2025年に21件起きていて、5人が死亡している。怪我をせずともサーフボードを噛みつかれるなどの接触事故も含めると、105件に上る。これに対して政府は、ビーチにシャークネットを張りめぐらせてサメが陸地に近いところに来ないようにしているが、ネットによって亀やイルカやクジラが傷を受けることも多く、海洋生物保護の見地から批判が多く、またネットの破損も多い。ビーチにはライフガードが常駐していて、溺れる人の救助や、サメが見つかった場合、ヘリコプターを出動するなど対策は取られてきた。ドローンやヘリコプターでサメが確認された場合、直ちに遊泳やサーフィンが禁止される。しかし被害は起こる。
365日ビーチにドローンを飛ばしてサメ対策するのに今後34ミリオンドルを使うという決定は良いことのように思われるが、シドニーっ子は、夜明けとともにボードを抱えて海に入り、ひと泳ぎして、それから仕事や学校に行く人も多い。真冬の今でも、同じだ。生活とビーチとが密接に関わっている。どれだけ被害を減らせるだろうか。
サメは希少生物で存亡危機にあり保護対象だ。人に被害を与えるからと言ってむやみに殺せない。昨年ニュースで、サメに襲われ片足を持っていかれそうになった女性が、救急隊の運ぶ担架から、気丈にも「殺さないで、私をアタックしたサメを殺さないで。サメは悪くない。ビューテイフルクリエイチャー(美しい生き物)を殺さないで。」と叫びながら運ばれていく姿に感銘を受けた。
共存が難しくても自然環境を守りたい、生き物を殺さない、というのがシドニーっ子たちの心意気だろうか。
