2026年8月2日日曜日

いろいろな死

んな死に方をしたいかは、どんな生き方をしたいかと同じくらい大事なことだ。でも違うのは、あまり自分では選べないことだ。
豪州で私立の老人高度医療施設でナースをしている。今年で21年目になる。数え切れない患者を見送ってきた。 アルツハイマー、パーキンソン、精神分裂症、癌末期、人工栄養、胃瘻、人口肛門、MS、難病、糖尿病、などなどの患者のほとんどが、老人性認識障害をもっていて、尿排便がコントロールできない。

入所時に家族と本人に、心臓麻痺や脳卒中になったとき人工呼吸で延命したいかどうか、肺炎などの感染症になったとき病院で集中治療をしてほしいか、施設で服薬治療するだけで良いか。骨折などの怪我した時には、病院で治療するかどうか、嚥下障害で物が食べられなくなったときにどうしてほしいか、死ぬとき牧師を呼ぶかどうか、死んだら 献体か埋葬か火葬か、希望の葬儀会社があるかどうか、などの質問に答えてもらう。それがその後に予期しない死が起きたときの、法的な証言にもなる。
入所のためには個室:5千万円、2人部屋:3千万円くらいのデポジットをしなければならない。患者は死ぬまで施設で看護されるので家を所有する必要はない。家を売却してデポジットを払い入所してきて、亡くなった場合、施設で使われた金額を差し引いた金額が家族に返される。 収入のない老人のために政府は老人年金を支給するので、月付きにかかる費用はそこから政府に吸い取られ、最初にデポジットされた数千万円のお金は、無事家族に返金される。しかし患者が何年施設で長生きするかわからない。子供達よりも長く生きる場合もある。
豪州で働く人の最低賃金は、とても高くて、1時間$26.44、円安の今なら1時間2700円くらいなので、人件費がばかにならない。3交代24時間のナーシングに加え、暖房、冷房、ベッド、食事、レクリエーションを提供するには費用が掛かる。半分は政府が援助しているので、豪州ではナーシングホームは半公共施設ともいえる。

患者たちは朝シャワーを介助され、朝食、モーニングテイー、ランチ、アフタヌーンテイー、夕食、寝る前の軽食を提供され、その合間に施設で専門の人の指導で体操、ダンス、ゲーム、映画鑑賞、バスでピクニックに行ったりする。ナースは、投薬、怪我の治療、人工栄養の管理、体にチューブをつけている人の管理、癌末期の鎮痛対策、医師との情報交換、政府への一人一人の患者の報告などなど、とても忙しい。

多くの場合、死は突然やってこない。嚥下障害が出てきて流動食も呑み込めなくなったら、終末医療の準備をして家族の了解をとって、モルヒネなどで苦痛のない死を迎える。
何年たっても忘れられない患者が沢山いる。いつも思い出すのは脳の障害で5歳程度の知能になってしまった50代の体の大きな農場主だ。いつも私の後をぴょこぴょこぴょこ、ついて回るので、アキコのペットと呼ばれていた。仕事に来るのをドアのところで待っていてくれて、ドアを開けると、飛び跳ねて喜こんでくれる。うーんと考え事をしていると、心配そうに顔を覗き込む。大男なのにしぐさが5歳児なので可愛くて仕方がない。子守唄を歌って寝かしつけるのが私の仕事だった。1週間休暇を取っている間に肺炎であっけなく亡くなっていた。

豪州には安楽死法(VOLUNTARY ASSIST DYING LAW)があって、様々な規制があるが条件が整えば死ぬことができる。その州に3年以上住んでいること、6か月以内に亡くなると予想され、耐えがたい痛みがある、といった条件で2人以上のドクターが判定した場合に限られる。

94歳で自分で歩けて尿排便障害もなく、認知障害もない、家族もみな独立していて心配もない、血液検査結果は問題ない健康体。でももう何にも興味が持てず死にたい、という。可愛らしい思いやりのある優しいおばあちゃんがいた。医師は必死で抗うつ薬を投与したり、サイコロジストもサポートしたが、頑として死にたい。彼女は5週間、自分から飲まず、食べず、最後は枯れ木が倒れるように眠ったまま亡くなった。彼女には、まったく健康だったので安楽死法が適用できなかった。本当に優しい人で前の日まで自分で立って抱きしめてくれた。顔を近ずけるとほほを撫でてくれた。最後の時はその手を上げようとして力なく、そのまま逝ってしまった。

職場で一番仲の良かったのが、ドイツ人のナースだった。彼女は自由党支持、私はグリーン支持だったから口つば飛ばして政治談議したり、同じ映画を見て解釈が違って熱い議論になったり、唯一オペラでは意見があって同じソプラノ歌手のファンだった。仕事仲間でこれほど心許せる仲間は、この21年間他に居なかった。コビッドの大騒ぎの間、ナースたちは物凄いプレッシャーの中で働いていた。職場を往復するにも半径10キロ以上移動できないと言われ、途中でポリスに車を止められて尋問されたり、職場ではガウン、ゴーグル、キャップ、手袋の姿で、患者に死なれないために必死だった。その最中、彼女が仕事に出てこないし電話にも応答がないので娘さんに家を訪ねてもらったら、ベッドで亡くなっていた。コビッドがなかったら、彼女は死んでいなかっただろう。でもベッドで眠ったまま何の苦しみも痛みもなく、病気で苦しむこともなく眠ったまま逝ってしまった。彼女が職場で使っていたマグカップでお茶を入れて、わたしは76歳の今も彼女が座っていた椅子に座って働いている。

いろんな死がある。 それを自分では選べない。でもたくさんの人の心の中で、いつまでもいつまでも生き続けるような、そんな死に方をしたいものだ。
歌は浜辺の歌


2026年7月24日金曜日

日本の少子化と移民促進

日本の少子化の勢いが止まらない。
カップルが持つ子供の数が1人以下になって久しい。
また、日本人の生涯未婚率が上がっている。男性28%、女性17.8%。単独世帯数は、男性36%、女性64%だという。
いよいよ1人1世帯という生活スタイルが定着してきた。少子化を止めるには、若い人に結婚を奨励したり、若夫婦に子供手当を支給したりすることよりも、男女にかかわらず子供を持ちたい人が、安心して生み育てる環境を整えることの方が大切だと思う。

30年前に豪州にシングルマザーで2人の子供達と移住した。
自治体の面接官に、「あなたには何ができるのですか?」と問われて、豪州に来る前はバイオリン教師をしていたと言ったが、資格でひっかかり、成城大学でマスコミを学び記者をやったと言っても、豪州では紙屑より何の役にも立たない。なんちゃって、、だけど、看護師の資格を持っている、と答えたら、「よし、それだ!」というわけで、職業訓練所に無料で入れることになった。
外国で看護師をやっていた経験を持つ移民が、豪州の看護大学の指定する職業訓練校に通うことになって、出会ったクラスメイトは、セルビア人、アルバニア人、ポーランド人、ロシア人、クロアチア人、フィリピン人、スリランカ人、中国人だった。
クラスメイト全員が、シングルマザーだった。アルバニア人でクリスチャンの人など、私の娘くらいの年齢なのに、戦火を逃れてイタリアに着き、難民キャンプの、冷たい体育館のコンクリートで赤ちゃんを出産した、という。それぞれの人が豪州にたどり着くまでのストーリーは、私自身のストーリーを含めて書けば、電話帳くらいの厚さになる。

政府は,16歳以下の子を持つシングルマザーの移民に対して職業訓練所に無料で通わせてくれただけでなく様々な支援をした。(うちの子たちは16歳を超えていたので、いくつかは除外)
1)ブリッジングビザ 2)国民健康保険証
3)無料の職業訓練校と試験の合格したら正看護師資格を与える
4)電車、バス、フェリー1日1ドル(当時)で乗り放題のカード  5)電話、電気、ガス代半額  6)映画、コンサート、バレエなどの半額  7)薬代 8)学資金援助
などなどだ。

子供が一人前に育つためには時間がかかる。国が支援するならば子供の母親をまず、その能力を生かせるように支援して、職業人に育て、自立して暮らせるようにする、という政府の支援の仕方は立派だった。
豪州では、1869年から1969年まで、政府がアボリジニーの子供たちを強制的に母親から取り上げて教会施設などに送り込んで教育をした。それが社会にとっても子供たちにとっても良いことだと当時は考えられていた。しかし親を失い情愛に満ちた経験を持たない子供たちは教会や、白人の里親に使用人のように酷使されたり性的被害にもあった。親にとっても子供にとっても、その歴史的トラウマの大きさは計り知れない。これを、2008年にケビンラッド首相が公式に謝罪した。

英国では、1949年から1976年まで、未婚女性が妊娠すると、国と教会が、赤ちゃんを強制的に取り上げて強制養子縁組をした。その数、17万人。この恥じるべき歴史を辞任する直前の、キースターマー首相が公式謝罪をした。つい先月のことだ。
首相の会見に、招待された被害者の母親は毅然たる態度で「産院で顔も見ないまま赤ちゃんを奪われた恨みは、もう昔のことだが、今後このようなことはどこの国でも行われてはならない。」と言っていた。

女性が子供を産み育てることに、政府が介入して様々な悲劇も、恥ずべき歴史も経てきた。これからの少子対策は、子供を持ちたい女性が自分の意志で子供を生み、育てるシステムを社会が整備するすることが第一歩だ。子供を持ちたい人は沢山いるだろう。人にはいろんな生き方がある。ゲイカップルが養子を迎える家庭もあれば、シングルマザーを選択する家庭もあるだろう。それぞれに合った支援のシステムを作っていけば良い。女性が男性に頼らずに生きていける社会、男性も女性も自立した関係で、互いに尊重して生きていける社会でなければいけないと思う。



2026年7月13日月曜日

バルカンのフラミンゴを守れ


アルバニアの人々は、いま怒っている。バルカン半島のアドリア海に面した美しい国。人口の90%がイスラム教徒の伝統的な、アルバニア語を話す人々だ。

トランプ大統領の義理の息子ジャレットクシュナが、アルバニア最大の島、サザン島の土地を買い占めて開発計画を進めている。サザン島はアドリア海地域で最も大切にされてきた自然保護湿地で、フラミンゴやウミガメが生息している。フラミンゴは塩湖に発生するプランクトンや甲殻類を食べる大型水鳥だ。彼らの群舞する姿は、目を奪われる美しさだ。サザン島は、人々にとって、本土から日帰りでシュノーケルを楽しめる避暑地であり、水鳥などの自然に触れることができる土地として親しまれてきた。自然環境を守り、環境を保護するためにタバコも、ペットの持ち込みも禁止してきたそうだ。
ここに、米国資本で大規模なリゾート開発が持ち込まれたら、近代的な高級ホテルが建設されて、酒あり、ドラッグあり、カジノあり、売春ありの米国型、富裕層優先のリゾートになってしまうだろう。

アルバニア周辺の国々の歴史は、とても分かりにくい。
チトー大統領が統一したユーゴスラビアは、彼の死後6つの共和国に分解してしまった。クロアチア、スロベニア、マケドニア、ボスニアヘルツエコビナ、セルビア、モンテネグロ。
セルビア共和国にあるコソボは、人口のほとんどがアルバニア人で、少数派のセルビア人と互いに、今もなお衝突を繰り返している。1997年コソボ解放軍が独立をめざして蜂起したが、米国、NATOの介入によって、ミロソビッチは逮捕され、国際法廷で裁かれた末、獄死した。
今もNATO軍による平和維持部隊が、コソボには駐留している。しかしミロソビッチが国際法廷に引きずり出されるほど、アルバニア人に対して戦争犯罪を犯したのかどうか、米国による介入は正しかったか、NATOは米国による誤った情報で踊らされただけではなかったか、疑問だらけだ。 ともかくアルバニアを含むバルカン半島の歴史は、血なまぐさい。
地中海沿岸のリゾートで夏を過ごす贅沢は、誰もが夢見ることかもしれない。
しかし、トランプファミリーのリゾート計画が強行されると、フラミンゴとウミガメの楽天地は、破壊されるだろう。また、ジャレルクシュナのリゾート開発は、環境問題にとどまらない。これは、アルバニア共和国に人々にとって、「主権問題」ではないのか。裕福な外国人投資家によってリゾート地ができて、誰が利益を得るのか。それはアルバニアの現地の人々では決してなく、投資した外国人の手に渡る。トランプファミリーの懐を富ませるだけだ。

これは、一部の腐敗したアルバニアの政府による「売国行為」であり、国民への「裏切り行為」だ。金による買収、米国ユダヤ資金による植民地化、とどまることのない元ニューヨークの不動産屋トランプの欲望、、、こんなどす黒い雲が、EUのなかで一番貧しい国、アルバニアを覆っている。
押しとどめなければいけない。


2026年7月4日土曜日

人道ビザを100万人に

豪州が、戦後100万人の「人道ビザ」を発給した記念に、記念切手が発行されると報道された

第1次世界大戦のあと人口600万人を切った豪州では、第2次世界大戦前後、ヨーロッパから戦火を逃れて沢山の移民がやって来て、職を得て生活基盤を作る手助けをしてきた。これら数百万人の移民以外に、人道ビザでやってきた難民とは、生まれて育った国が消失したり、他国に占有されたり、政治的な理由で亡命せざるを得なかった人々や、LGBTQなど迫害を受けてきた人々に出されるビザだ。
移民も難民も政府の受け入れビザに違いがあるが、いったん永住権や市民権が出ると、その後は同じプロセスで、国民健康保険と510時間の英語教育を受けられる権利が与えられる。

私は小さな私立の医療施設で働くが、同僚のマリアは、シエラレオーネから来ていて、父親がダイヤモンド鉱山の持ち主だったが、鉱山が英国企業に乗っ取られて、命を狙われて追われるように移民してきた。またもう一人のガーナから来たナースは、レズビアンだったので、2000年シドニーオリンピックの時に選手として来豪しそのまま移住した。またシニアナースのラデイアは旧ユーゴスラビアから来たので、「チトーは英雄だった。」と思わず私見を言ったら、彼女火のように怒って「コミュニストのチトーのくそやろう。」と、、、ユーゴ統一の犠牲者だったのだ。
国民の4人に1人は外国生まれの豪州では100人100様の現代史に沿った物語がある。

もとあったグループに新しい人が入ってきたら、決められたルールが理解されなかったり、コミュニケーションがうまくいかず新人を受け入れるよりも排除しようとする動きが必ず起きる。
戦後50万人ものイタリア移民が豪州に来たとき彼らは、シドニー中心に近いライカットの街に住み着いた。それをオージーらは「臭い、汚い、黒髪黒目のどぶネズミ」などと言いあったそうだ。いまではライカットのイタリア街は、高級イタリアレストランの並ぶ静かな美しい町だ。チャイナタウンも同様。30年前、私が豪州に来た頃、カブラマッタの街は、ベトナムから来たドラッグデイラーがのさばって、学校に行かない子供たちが徘徊していた。自浄効果によって今は街が整備され、ベトナム出身の上院議員もいて、ドクターや法律家も多い。
新しい到着者を迎える側も、迎えられる側も少しの我慢強さと、歴史への理解と、良識と、好奇心が必要なのだ。キーは「マルチカルチャル」(多文化主義)

豪州では労働党と自由党の2大政党がほぼ選挙ごとに交代で政権を取ってきたが、この関係を脅かす新しい極右の台頭が目立ってきた。ポーリーハンセンによるワンネーション党だ。最近の人気投票では、現政権の労働党が33%、次いでワンネーション党が29%、自由党が17%、グリーンが13%という結果が出た。
ワンネーション党のこのバカ女(おっと失礼)は、豪州はマルチカルチャーを止めて、モノカルチャー(単独文化)に切り替えるべきで、マンダリンとアラビックを豪州でしゃべるのは、もう許さない。英語以外の言葉は禁止すべきで、外国から移民してきた人々に健康保険や年金を出すべきではない。と語っている。

マルチカルチャー(多文化主義)は豪州では保守党の自由党が60年前に言い出した言葉だが、人口の4分の1が外国生まれの国民で形作られた国の姿をよく表したことばだ。自由党党首は、ワンネーションとの違いを強調したくて、「わが保守党はマルチカルチャーを生み出してきたお父さんお母さんなのであって、これは豪州のエンジンであり、豪州の基盤なのである。」と言っている。でも今年まで90%以上の国民に支持されていた言葉だが、今日の報道では,74%の支持に落ちてきたそうだ。

国力とは労働力のことであり、その国が力のある国かどうかは、労働人口の数による。超音波弾道ミサイルや、AIデータを使ったドローンや核兵器の力で一時的にその国が戦争に有利になっても、その国を支える国民の経済力がなければ国は維持できない。
モノカルチャーではなくマルチカルチャーを、排除ではなく受け入れを。人口減少ではなくて移民受け入れで人口増加を維持していくべきだとおもう。


2026年7月3日金曜日

サメの保護とクジラの保護と

昨日、民主党のクリスミン、ニューサウスウェルス州知事が、サメ対策のために$34ミリオン(3千400万円)の予算を割いて365日、日の出から日没まで、すべてのビーチにドローンを飛ばして、人々の命を守ると発表した。

先月31歳の女性が、クージービーチというシドニーで最も人気のあるビーチで、安全区域とされていた場所で泳いでいて、サメに襲われて両手両足に大怪我を負って、数週間危篤状態だった。被害者が1歳に満たない赤ちゃんのお母さんで、学校の先生だったことで彼女の赤ちゃんを抱く写真が瞬く間に拡散され、テレビ局に数万ドルの寄付金が寄せられた。彼女が意識を取り戻しました、というニュースがトップニュースで報じられるほどだった。

1月にはシドニー湾で、6メートルの高さの岩場から海に飛び込んで遊んでいた子供がサメに襲われて両足に大怪我をして、翌日には、シドニーシテイ近くのデイワイビーチで11歳のサーファーが襲われ、またその翌日はマンリービーチで25歳のサーファーが大怪我を負う、というたった48時間に3件のサメによる事故が起きた。

シドニーばかりでなく、オーストラリア全体でサメによる人身事故は、2025年に21件起きていて、5人が死亡している。怪我をせずともサーフボードを噛みつかれるなどの接触事故も含めると、105件に上る。これに対して政府は、ビーチにシャークネットを張りめぐらせてサメが陸地に近いところに来ないようにしているが、ネットによって亀やイルカやクジラが傷を受けることも多く、海洋生物保護の見地から批判が多く、またネットの破損も多い。ビーチにはライフガードが常駐していて、溺れる人の救助や、サメが見つかった場合、ヘリコプターを出動するなど対策は取られてきた。ドローンやヘリコプターでサメが確認された場合、直ちに遊泳やサーフィンが禁止される。しかし被害は起こる。

365日ビーチにドローンを飛ばしてサメ対策するのに今後34ミリオンドルを使うという決定は良いことのように思われるが、シドニーっ子は、夜明けとともにボードを抱えて海に入り、ひと泳ぎして、それから仕事や学校に行く人も多い。真冬の今でも、同じだ。生活とビーチとが密接に関わっている。どれだけ被害を減らせるだろうか。
サメは希少生物で存亡危機にあり保護対象だ。人に被害を与えるからと言ってむやみに殺せない。昨年ニュースで、サメに襲われ片足を持っていかれそうになった女性が、救急隊の運ぶ担架から、気丈にも「殺さないで、私をアタックしたサメを殺さないで。サメは悪くない。ビューテイフルクリエイチャー(美しい生き物)を殺さないで。」と叫びながら運ばれていく姿に感銘を受けた。
共存が難しくても自然環境を守りたい、生き物を殺さない、というのがシドニーっ子たちの心意気だろうか。

南半球はいま真冬。クジラウォッチングの時期だ。
クジラは南太平洋で赤ちゃんを産んで、餌を求めて南極海にやってくる。シドニー沿岸でも子供を連れたお母さんクジラが、暖かい海を渡って南極大陸と豪州の間を行き来する姿が見られる。6万頭ものザトウクジラが南に向かって回遊するそうだ。巨大なクジラが潮を吹く姿、お母さんクジラに必死でついていく赤ちゃんクジラの姿など、本当に愛らしい。運が良いと、シドニーのビーチ高台から肉眼でその姿が見られるから、沢山の人々がビーチ沿いで目を凝らす。
野生の生き物を、殺さない、共存する、被害にはできる限り保証する、これがキーだと思う。

2026年6月26日金曜日

シルクロードを鉄道で

イランと中国は鉄道でつながっている。
中国の西安からカザフスタン、トルクメニスタンを通ってイランの首都テヘランに達する、この全長10399キロの中伊鉄道は、シルクロード直通線と言ってよい。
ホルムズ海峡を通じる海上だけではない、イランは世界につながっている。これからエネルギー供給国としてだけでなく、米国のドル決済を拒否して、西アジア回廊を通して、グローバルな大国になっていくだろう。
数千億ドルのイラン国家の資本が、1979年のイラン革命から、米国の圧力で凍結されて続けてきたが、正しく、国際社会はこの凍結を解除せざる負えなくなるだろう。

海底では、アジアとヨーロッパをつなぐ通信ケーブル、ペルシャ湾と紅海などイラン周辺の海底にデジタル通信の動脈が、張り巡らされている。アジア、ヨーロッパ間の90%の情報、貿易など金融取引が、このケーブルを通して行われている。この海底ケーブルをイランが、切断をしたり、切断しなくても情報を傍受する技術を持てば、イランは世界の軍事、企業に介入することができる。

イランを一貫して苦しめてきた米国は、第2次世界大戦で地上戦で損害を受けなかったラッキーカウントリーとして、戦後世界の金の80%、2万トンを所有し、米国ドル金融決済システムで、世界を自由に操ってきた。大国として他国を侵攻しては、オイルを奪い、他国の政権に介入し富を奪取し、資本主義社会の究極の醜さをさらしてきた。

1961:ベトナム戦争、キューバ侵攻、1973:チリ、アジェンデ追放、1979:ニカラグア介入、1979:イラン介入、1993:セルビア攻撃、2001:アフガニスタン戦争、2003:イラク侵攻、2011:リビア攻撃、シリア政権奪取、2025:ベネズエラ大統領誘拐、イラン爆撃。ソマリア、ルワンダ、コンゴ、ナミビア、アンゴラ、モザンビーク、スーダン、、、数えきれない。戦後の米国政府の手は血で汚れ、世界の最悪暴力団としての歴史を更新し続けている。

国際法を無視し、他国の主権を侵害し、多国間貿易を拒否し一人勝ちを誇ってきた米国の実際の姿を、後ろを振りかえって見てみるがいい。アメリカファーストの掛け声で60年代から生産に従事してきたブルーカラー労働者がかつての繁栄を夢見てトランプに投票したのに、外国への介入とインフレで、オバマが始めた国民健康保険も捨て去られ、貧富格差は拡大するばかりだ。移民攻撃、人種差別も改まらない。ホームレスの数も世界一。

米国による一極支配の時代は終わったのだ。
これから始まる多極社会、ドル決済でなく、それぞれの国の貨幣を尊重し、国際法、国連憲章の理念に立ち返り、イランやキューバなどすべての国の資産凍結を解除し、パレスチナ、イラン、レバノンの再建に、世界は力を注がなければならない。
写真は、イラン中国間を走る中伊鉄道

2026年6月12日金曜日

ワンネーション党、人気投票で第2位に

豪州に30年あまり居住しているが、国政に極右が台頭してきて、圧力を感じている。それは米国、英国、イタリア、ドイツなど欧州勢の右極化の動きと連動しているようで、急速に拡散されてきて無視することができない。

30年前に、フィッシュアンドチップス屋を営むシングルマザー、ポーリンハンセンが、ワンネーション党を作って、「反移民、豪州は豪州人だけのもの」と、言い出した時は、どの放送局もマスコミも、国会議員も、民間人も、彼女を馬鹿にして大笑いしたものだ。ポーリンのポを言っただけで、お笑いのネタとなったりした。30年前の話だ。

豪州は人口の4人に1人は、外国生まれ。移民の力で作られてきた国だ。それを人々は誇りにしている。
第1次世界大戦のあと、豪州の人口は600万人を切っていた。このままでは豪州は、お隣のインドネシアなどに占領されたら抵抗できない、という恐怖から大規模な移民政策を進めてきて現在に至る。
第2次世界大戦後は、88万人の英国人とアイルランド人、24万人のドイツ、北欧、オランダ人、30万人のポーランドなどの東欧人、52万人のイタリアなど南欧の人々が船でやってきた。
大戦で親を失った英国からの孤児だけでも5万人引き取られた。ギリシャ人などギリシャに住むギリシャ人の次に豪州に住むギリシャ人人口は多いそうだ。
ベトナム戦争では、9万人のベトナム人、13万人のカンボジア人が、ボートでやってきて移民になった。6月4日の天安門で迫害された活動家たち数百人は秘密ルートで豪州に送られてきた。また2019年の香港の国家安全維持法の制定で、弾圧された、沢山の活動家も英国パスポートを捨てて豪州に移住してきた。彼らはこの国でドクターになったり技術者として活躍している。

ポーリンハンセンは、クイーンズランド州で市会議員になったのち、連邦下院議員に選ばれたが、選挙運動違反と詐欺容疑で刑務所に一時収監された。しかし、めげずに激しい人種差別と反移民を訴え、しぶとく、2016年に上院選挙に出馬して国政についた。
2025年11月に、モスリムのブルカを豪州で禁止することを訴えて、イスラム女性の着るブルカを着て国会に出て、議会を騒然とさせた。この結果、彼女は7日間の党院停止処分を受けた。
そのワンネーション党が、徐々に議席を増やし、人気投票でいまや現労働党に次ぐ第2党になった。長年政権を担当してきた自由党を押しのけて、現労働党に次ぐ2位の座を占めたと思ったら、彼女に小型飛行機をプレゼントする輩が出てきて、それに乗って西豪州に講演に行くと発表されたら、2日間で1億ドルの寄付が集まったと、昨日報道された。

自由党の支持が落ちたのは、日本の自民党に対する「中道左翼」が力を失ったのと似ている。リーダーシップが感じられない。古い人材の再利用、自民党の左派と変わらない、存在感がない、といったところか。自民党は、セクト争い、不正選挙疑惑,中傷動画、統一教会資金、裏金などなどスキャンダルだらけなのに、戦後最大の議席数を伸ばして、「党内極右」が闊歩している。

米国はもともと人種差別の国で、バラクオバマ大統領でさえ自分の戸籍謄本を議会に見せなければ国民だということを、議員たちに納得させられなかった。移民排斥、メキシコ国境に壁を作り、ICEが市民を平気で殺してる。白人でプロテスタント以外の国民は、グリーンカードを持っていてさえ身の安全が保障されない差別国家だ。
英国でも労働党政権の閣僚がエプスタインのお友達で刑事事件となり、元王子も追及されて労働党への信頼は地に落ちた。右派の台頭を待つばかりだ。

豪州での問題はインフレと住宅難だ。住宅供給が人口増加に後れを取っていて、若い夫婦が買う家がない。借家の申し込み1件に対して50件の家族が殺到する。大急ぎで建設中だが人材も資材も間に合わない。 戦争の影響で、ガソリン代が上がり、インフレと相まって将来が不安だ。この際、移民受け入れをやめて、小さな政府と緊縮財政で、国の経済を立て直してもらいたい、という意見はそれなりに理解できる。
しかし良識を持った人々が過去の人種差別の歴史を反省し、多文化社会、多民族社会の実現を体現させてきた何十年もの努力を、わずかな不満のために覆されてはならない。右極化を許してはならない。

写真:ポーリンハンセンは、ムスリムのブルカを着て議会に出て騒然とさせた。