豪華クルーズ船MUホンデウス号には150人近くの、23か国から来た旅行者が乗っていた。大西洋を航海中アルゼンチンからカポベルデ沖に達し、スペインのカナリア島に到着するまでに3人の死亡者と2人の重症感染者を出した。今後感染者も死者も増えるだろう。
カナリア島政府と住民が、船の入港と乗船者の上陸を拒否したため、各国政府は23か国、150人をそれぞれの政府が用意したチャーター機で母国に帰国させた。日本人乗客は英国機で英国に飛び、そこで隔離された。
豪州政府は、5人の乗客と、1人のニュージーランド乗客のために特別機を出して、西豪州パースに飛んで、そこから数キロのところに新たに作られた隔離病院に収容する。ここは、2020年コビッドパンデミックのとき、患者収容先に困った政府が大急ぎで作った隔離施設で500床のベッド数があるが、一度も使われることなくコビッド感染は収束した。ニュースで見ると、500床の個室は、ホテルのようだ。
ハンタバイルスは、ネズミ、蝙蝠、爬虫類や魚類が感染源になるバイルスで、発症した生物や人から呼吸器を通して感染する。細菌バクテリアよりも細胞が小さいため抗生物質が効かないし、治療法はない。致死率40%といわれるが、まだよくわかっていないバイルスで、昔からあったが潜伏期間が1日ー24日、コビッドは2週間の隔離で擬陽性者が済んだのに対して、はるかに長い期間隔離されなければならない。
クルーズ船内で亡くなったのは、69歳と70歳の夫婦と、もう1人の3人で、アルゼンチンでバードウォッチングしたことが感染の契機になったかもしれないと言われている。年寄りは肺炎で亡くなるものだが、リタイヤして老後を楽しんでいた仲良し夫婦が一緒に亡くなったのは悲しいことだ。
注目すべきは、英国政府の対応だ。
1人のハンタバイルス感染者が、クルーズ船から降りてセントヘレナ島のその先にある、トリスタンデクンバ島という小さな南太平洋の島に戻った。セントヘレナ島は、アフリカと南米との間にある島で、アフリカ大陸から1840キロ離れ、ナポレオン皇帝が島流しにあって、1821年に、51歳で亡くなった島だ。
パリ観光をした人は、パリの立派なナポレオン墓を訪れるだろう。これはあまりにセントヘレナ島の墓が母国から離れていることに同情した政府によって、遺体を掘り起こしてパリに運んだものだ。セントヘレナ島に行くには、小型機か船だと南アフリカケープタウンから5日間船に乗らなければならない。
で、、、
さらに、そこから飛行機で着陸できる空港がないため、2,400㎞の距離を船で5日間船旅をしなければトリスタンデクンバ島にたどり着けない。そんな島に、疑感染者のクルーズ乗客が帰ったのだ。
英国政府は、島中の住民の感染を予防、治療の対応をするために、昨日、6人のパラメデイックと2人のドクターをパラシュートで島に落下させた。南大西洋の小さな島、ケープタウンから5日間でセントヘレナ島、そこからさらに6日間の船旅でたどり着ける英国植民地、トリスタンデクンバ島の住民のために、これだけのことをする。英国政府。
パラシュートでピューンと島に降りていくドクターたちの姿に、医療関係者であるわたしは心から感動したのであった。



