2026年6月12日金曜日

ワンネーション党、人気投票で第2位に

豪州に30年あまり居住しているが、国政に極右が台頭してきて、圧力を感じている。それは米国、英国、イタリア、ドイツなど欧州勢の右極化の動きと連動しているようで、急速に拡散されてきて無視することができない。

30年前に、フィッシュアンドチップス屋を営むシングルマザー、ポーリンハンセンが、ワンネーション党を作って、「反移民、豪州は豪州人だけのもの」と、言い出した時は、どの放送局もマスコミも、国会議員も、民間人も、彼女を馬鹿にして大笑いしたものだ。ポーリンのポを言っただけで、お笑いのネタとなったりした。30年前の話だ。

豪州は人口の4人に1人は、外国生まれ。移民の力で作られてきた国だ。それを人々は誇りにしている。
第1次世界大戦のあと、豪州の人口は600万人を切っていた。このままでは豪州は、お隣のインドネシアなどに占領されたら抵抗できない、という恐怖から大規模な移民政策を進めてきて現在に至る。
第2次世界大戦後は、88万人の英国人とアイルランド人、24万人のドイツ、北欧、オランダ人、30万人のポーランドなどの東欧人、52万人のイタリアなど南欧の人々が船でやってきた。
大戦で親を失った英国からの孤児だけでも5万人引き取られた。ギリシャ人などギリシャに住むギリシャ人の次に豪州に住むギリシャ人人口は多いそうだ。
ベトナム戦争では、9万人のベトナム人、13万人のカンボジア人が、ボートでやってきて移民になった。6月4日の天安門で迫害された活動家たち数百人は秘密ルートで豪州に送られてきた。また2019年の香港の国家安全維持法の制定で、弾圧された、沢山の活動家も英国パスポートを捨てて豪州に移住してきた。彼らはこの国でドクターになったり技術者として活躍している。

ポーリンハンセンは、クイーンズランド州で市会議員になったのち、連邦下院議員に選ばれたが、選挙運動違反と詐欺容疑で刑務所に一時収監された。しかし、めげずに激しい人種差別と反移民を訴え、しぶとく、2016年に上院選挙に出馬して国政についた。
2025年11月に、モスリムのブルカを豪州で禁止することを訴えて、イスラム女性の着るブルカを着て国会に出て、議会を騒然とさせた。この結果、彼女は7日間の党院停止処分を受けた。
そのワンネーション党が、徐々に議席を増やし、人気投票でいまや現労働党に次ぐ第2党になった。長年政権を担当してきた自由党を押しのけて、現労働党に次ぐ2位の座を占めたと思ったら、彼女に小型飛行機をプレゼントする輩が出てきて、それに乗って西豪州に講演に行くと発表されたら、2日間で1億ドルの寄付が集まったと、昨日報道された。

自由党の支持が落ちたのは、日本の自民党に対する「中道左翼」が力を失ったのと似ている。リーダーシップが感じられない。古い人材の再利用、自民党の左派と変わらない、存在感がない、といったところか。自民党は、セクト争い、不正選挙疑惑,中傷動画、統一教会資金、裏金などなどスキャンダルだらけなのに、戦後最大の議席数を伸ばして、「党内極右」が闊歩している。

米国はもともと人種差別の国で、バラクオバマ大統領でさえ自分の戸籍謄本を議会に見せなければ国民だということを、議員たちに納得させられなかった。移民排斥、メキシコ国境に壁を作り、ICEが市民を平気で殺してる。白人でプロテスタント以外の国民は、グリーンカードを持っていてさえ身の安全が保障されない差別国家だ。
英国でも労働党政権の閣僚がエプスタインのお友達で刑事事件となり、元王子も追及されて労働党への信頼は地に落ちた。右派の台頭を待つばかりだ。

豪州での問題はインフレと住宅難だ。住宅供給が人口増加に後れを取っていて、若い夫婦が買う家がない。借家の申し込み1件に対して50件の家族が殺到する。大急ぎで建設中だが人材も資材も間に合わない。 戦争の影響で、ガソリン代が上がり、インフレと相まって将来が不安だ。この際、移民受け入れをやめて、小さな政府と緊縮財政で、国の経済を立て直してもらいたい、という意見はそれなりに理解できる。
しかし良識を持った人々が過去の人種差別の歴史を反省し、多文化社会、多民族社会の実現を体現させてきた何十年もの努力を、わずかな不満のために覆されてはならない。右極化を許してはならない。

写真:ポーリンハンセンは、ムスリムのブルカを着て議会に出て騒然とさせた。


2026年5月27日水曜日

映画「テイファニーで朝食を」

「テイファニーで朝食を」
宝石店テイファニーは、1837年にチャールスルイス テイファニーによってニューヨークで創業された。彼はフランス革命の時、飢えた人民から斧をもって追われ命からがら財産を投げうってフランスから脱出を試みた貴族たちから、極上で希少な宝石を安く買い付けて富を築いた。このとき革命まで飽食と贅沢の限りを尽くした貴族たちは、階級制度とともにフランスから完全に放逐された。
1878年、南アフリカから世界最大で、最高級最高品質のファンシーイエローダイヤモンドを手に入れたテイファニーはその後、12.8カラットの「リボンロゼット」という装飾品を作って映画「テイファニーで朝食を」の宣伝用ポスターでオードリーヘップバーンに身につけさせた。

この映画はニューヨークマンハッタンのアパートで、女優になる夢をもって裕福な事業家達のエスコートをやっている娼婦と、いつか作家になる夢を持った青年との恋の物語だ。事業家たちは夜はオードリーを必要とするが、朝になったらホテルから放り出すから彼女はテイファニーのデイスプレイを見ながら、パンをかじってアパートに帰る。作家の卵も金持ちの人妻とベッドを共にして、お小使いをもらっている。このへんは、原作者トルーマンカポテイのシニカルなアイロニーが効いている。原作はロマンチックコメデイではない。
ヘップバーンは「ローマの休日」の気品に満ちた若く初々しい女王役や、「シャレード」の健気な未亡人役から一転して、はすっぱな娼婦の役を演じている。彼女が故郷を思い出しながらギターを持って歌う「ムーンリバー」は、その年のアカデミー賞を受賞した。

残念ながらこの1960年代に造られた映画は、実に差別的だ。まず、彼女の住んでいるアパートには、ほかの若者たちと同じように将来認められて立派なカメラマンになりたいという夢を抱いている日本人が住んでいる。ヘップバーンがいつも鍵を忘れてきてアパートに入れないと、彼を無理やり起こしてドアを開けさせる。すると彼は立腹し、怒鳴りながらドアを開けてやるのだ。その彼が日本人だと誰の目にもわかるのは、「ハゲ」で「デブ」で「釣り目」で、「眼鏡」で、「出っ歯」で、なぜがいつも「カメラ」を首から下げているからだ。そして下手でアクセントの強い英語でヘップバーンを罵倒するけれど、彼女は意に介さないシーンに、映画を見ている観衆は腹を抱えて爆笑する。こういうシーンが繰り返される。
映画製作者は、マンハッタンは若い文化人のキャピタルだ、でもそれは白人だけのものという否定しようのない人種差別が常識だった時代に沿って映画を作った。製作当時1960年代初めには、このような人種を笑う、外見を笑う、皮膚の色を笑う、下手な英語のアクセントを笑うことが、平気で行われていた。

1960年代初頭は、マルコムXや、キング牧師などによる黒人公民権運動の広がりの中で、やっと人種差別が社会悪として、捉えられるようになったばかりのころだ。それが後の反ベトナム戦争につながっていくが、米国では徴兵制があり反戦運動をすれば、国辱者として禁固刑をうけるのが当然の時代だった。
米国では1870年に南北戦争ののち黒人の人権が約束されたにも関わらず、黒人の「投票権法」が制定されたのは、1965年のことだ。米国はとんでもない野蛮な差別国家だった。

もう一つこの映画で私が嫌いなところは、ヘップバーンがいったん作家の卵を振り切ってアパートを出ていくときに、飼っていた猫を、豪雨に中で外に捨てていくところだ。こんな非常識なことをされたらたまらない。結局、彼女は戻って来て若者と一緒になることに決めて、一度捨てた猫を拾い上げてハッピーエンドになるわけだけれども、一体命ある猫を何だと思っているんだ、と激しく怒るわけで、「よかったね」と若いカップルの恋物語を見ても、全く、100%、幸せな気持ちになんか絶対、全然ならない私なのであった。


2026年5月21日木曜日

ベングウィルの縛り首ケーキ

この5月、イタマルベングウィル、イスラエル国家安全保障担当大臣は、自分の50歳の誕生日を、パレスチナ人を絞首刑にする法の成立を喜び、「縛り首ケーキ」で盛大に祝った。

イスラエルでは、今年2月3日に「テロリストに対する死刑」法で、有罪判決を受けたパレスチナ人に絞首刑を義務付けることが決まった。判決後90日以内に刑は執行されなければならず、上訴権は認められない。これほど法とは言えない人種差別と暴力是認の法は他にはない。もちろん国際法違反であり、常識からかけ離れた法だ。法律に、パレスチナ人、ユダヤ人といった人種をふるいにかけるような異常な法など、あり得ない。

この男は10代のころから右翼思想に染まり、人種差別による犯罪を繰り返し、何度も警察に拘束され、大学で法を学んだが、イスラエル弁護協会から弁護士資格認定を拒否された過去を持つ。
2023年10月8日が起こると、「5万丁の銃」をヨルダン川西岸パレスチナ入植地に住む入植者らに配った。このシーンをアルダジエラが報道していた。男たちが並んで、玩具を受け取る幼児のように嬉しそうに目をぎらぎらさせて、銃を受け取っては「敵」を探し回っていた。ユダヤ人入植者にとっては銃の登録とか、扱い方の訓練など必要なかったらしい。銃の発射練習は毎日でもできただろう。ベングウィルはこの件だけでも重大な犯罪者だ。

わたしは医療現場でナースをしている。
よく切れるメスで人のおなかを割ってみると、内臓は綺麗なピンク色。ユダヤ人もアメリカ人もロシア人もインド人もスーダン人もイラク人も、肌が黒くても白くても茶褐色でも、内臓はみんなみんなビロードのようなつやつやした同じピンク色だ。
鋭利な針で静脈を刺すと、人の血液は赤い色。ウクライナ人もキリギス人もカタール人もラオス人もリヒテンシュタイン人もガーナ人も、目が黒くても青くても緑色でも、みんなみんな血はおんなじ赤い色だ。
人はみんな年を取る。脳が委縮して、いずれ食事も尿排便も自分でコントロールできなくなる。ウクライナ人もタジキスタン人もシェラレオーネ人も韓国人も日本人も、みんなみんな年を取ればひとりで生きていけなくて他の人の支えがいる。みんなみんな脳の萎縮を止められない。
みんなみんな、人は美しいピンク色の内臓を持ち、赤い血を持ち、委縮する脳をもって生まれてくる。憎み合う理由はない。

イスラエル軍によって殺された
パレスチナガザでの死者:76,000人
パレスチナヨルダン川西岸での死者:2000人
レバノンでの死者:3000人
ベングウィルは50歳の誕生日にパレスチナ人を絞首刑にできることが嬉しくて、「縛り首ケーキ」にかぶりついた。
しかし彼も年を取る。彼が自分で銃を持てなくなって、パレスチナ人とユダヤ人を見分けられなくなって、エホバの教えも思い出せなくなるまで、わたしたちは待たなければならないのだろうか。


2026年5月19日火曜日

ユーロビジョン2026

ユーロビジョンが今年で70周年を迎えた。
ヨーロッパで、毎年行われてきた世界最大の歌唱コンテストだが、今年はイスラエルによるガザでのパレスチナ人へのジェノサイトに抗議してスペイン、オランダ、アイルランド、アイスランド、スロベニアが参加を拒否した。
ヨーロッパ各国が代表する歌手が歌い、舞台を見ている10万人の聴衆と、テレビを通してみている1億人と思われる人々が携帯電話で投票して優勝国を決め、その優勝国が翌年の開催国となる。かつてアバやセリーヌデイオンなどを輩出してきた音楽祭だ。

ユーロビジョンは70年の長い歴史の中で、文化に抑制をかけてきた「東ヨーロッパ」の国々の間では、かつては、これを見ることができず、人々は自分たちでアンテナを手に入れて秘密警察から隠れて見ていた。隠しアンテナを持つことがレジスタンスでもあった。ユーロビジョンで歌われた曲を歌い、若者の間で共有することが抵抗運動でもあったのだ。

今年はオーストリアのウイーンで開催された。昨年の優勝者の男性歌手はボーイソプラノよりも高いハイソプラノの声で力強い歌唱力を見せる圧巻のパフォーマンスを見せた。2014年には、同じくオーストリアが優勝し、LGBTQで女性の姿でありながら、もと男性の濃いヒゲを残したコンチータ ヴルストが、声量のあるドラマチックな舞台を演出した。モーツアルトやシュトラウスが活躍したウイーンは、やっぱり文化が革新的で刺激的だ。

総じて女性シンガーのパフォーマンスは,元気いっぱい、激しいリズムのヒップでホップなボーカルと、ブレイクなダンスで舞台を圧倒したが、男性歌手は失恋や母親を恋い慕う歌とか、湿っぽい歌が多い様に思えた。昔は男性は涙を見せない強い男が良かった時代から、女性の支えがないとダメ男ばっかり、という本音を見せるようになった、ということか。
興味深いのは、投票をする人々が自国を投票できない仕組みなので、自分の国の近所の国に投票することだ。仮に少し前まで戦争をしていたボスニア、セルビア、アルバニアといった国々、英国とアイルランド、ギリシャとキプロス、といった決して仲の良くない敵対していた国が、自分たちと文化、言語が共通だったり、似通っていたりしている隣近所の国々の心情を共有していると思われる点は、興味深い。

ウイーンから16,000キロも離れた南半球の豪州は、何年も何年もユーロビジョンに参加したいと、団体に申し出てきた甲斐あって参加が許されて、今年はデルタゴッドラムが出場し、第4位に選ばれた。彼女の歌唱力とベテランパフォーマーとしての自信に満ちたピアノを弾きながらの舞台は立派だった。彼女は若くして人気絶頂だった時に死の病、ホジキン病になり苦しい化学療法の末サバイバルした人だ。
優勝国を選ぶ投票の開票を待つ間、セダーサムソンの語り弾きや、ビリージョエルの語りや、過去の受賞作を若い人達が歌ったりして、なかなかよくできた音楽祭だった。ただ舞台を派手に絢爛豪華にレイザーをふんだんに使って目まぐるしい舞台が続いて、10万人の観衆は目がチカチカして全員が、吐いたのではないか、、また出演者たちもキレキレの激しいダンスで、脳震盪を起こしたのではないか、と医療従事者としては心配したのであった。
写真は優勝したブルガリアのバンガランガ



2026年5月16日土曜日

プラダを着た悪魔2

差別を見過ごさない
「プラダを着た悪魔」20年前にそれなりヒットした同名のハリウッド映画の続編が再び映画化されて市場に出ている。アカデミー主演女優賞を重ねて取ったメリルストリープとアンハサウェイとエミリーブラントと、それらを支えるイタリアの名優スタンレイドゥッチの4人が、20年の年月を感じさせないで、まったく同じような顔と体形で姿を現したのは驚くべきことだ。4人とも好きな役者だ。メリルの「ソフィの選択」が忘れられない。ここまで女性の悲哀を表情一つで表現できる、彼女の役者ぶりには驚いた。

映画では華美で激しい競争を強いられるファッションの世界で、それぞれが、だまし合ったり、出し抜いたり足を引っ張りあったりもがきながら、商売に血眼で頑張る女たちを描いている。10分ごとに長身で、見栄えのあるアンハサウェイが、次々とブランド服をつっかえとっかえ着て出てくる姿は、それなり愉快で、レデイガガが、ショーで歌うシーンも良かった。なによりも、本場ミラノでショーが開かれ、そこがミラノ大聖堂で、ダヴィンチの「最後の晩餐」が見られたのもおどろきだ。

ただ
チャオという中国人らしい女性が新人として会社に採用されてくる。おきまりの「人種差別と偏見で笑いと取る」レイシストビューだ。背が低く、目が吊り上がって、眼鏡をかけて、ダサい服を着た女。映画の中でちょっとした笑いを取るための演出は、私がアジア人であるかどうかにかかわりなく不愉快。人の見た目で笑いを取る、ということをしてはいけない。教養はそのためにあり、片足の人の歩く姿を、指さして笑わないだけの良識をわたしたちは持っていたのではないか。
人は生まれつき成長ホルモンのいたずらで背の伸びない小人症の人も居れば反対の人も、指が4本で生まれてくる人も居る。ナースとして、山火事が起きボランテイアで人々を守ろうとして顔に火傷を負った患者をたくさん見てきた。山火事で消火に当たる人はまず顔から火傷を負うから、ケロイドでフランケンシュタインみたいな顔になる人が多くいる。彼らの姿は異様でも、やってきたことは、誰よりも崇高で美しい。癌で顔半分を手術でなくした人や、声帯のない人や、片目になっても社会復帰している人も沢山居る。外見の違いや障害があっても彼らの社会への貢献は何よりも貴重だ。人は見た目で笑うような幼稚で無教養な社会で生きてはいけない。人種を笑う、異形を笑う、障害を笑う、ような人は、自分が病気や事故で同じ目に遭わないと、笑うことを止めないのだろうか。

人は生まれたときサルと同じ、というか、生まれたときにすぐに立ち上がれないという意味で動物にも劣る。
それを立派な人にするかどうかは教育の力による。サルに劣ったまま大人になるか、教養を身に着け人類に貢献する人になるかは教育にかかっている。だから差別をしないという教育が大事だ。中国人らしい女性が映画に出てくるシーンは、ほんの10分、しかしそのたった10分の差別的な笑いが、暴力に通じるだけに、社会は許してはならないのだ。一方的に笑われることは笑う方が意図しているかどうかにかかわりなく傷を受ける。そうした暴力を見過ごしてはならない。
そう思い当たって、この映画を見続けていると、物質主義のアメリカファッションの世界が、マイアミの豪邸にふんぞり返るトランプに共通するアメリカ文化の、華麗でなく「貧相」、文化的でなく「低俗」、品格でなく「軽薄」に感じられて、このうえなくむなしくなるのであった。


2026年5月12日火曜日

ハンタバイルス アウトブレイク

ハンタバイルスが世界を震撼させている。

豪華クルーズ船MUホンデウス号には150人近くの、23か国から来た旅行者が乗っていた。大西洋を航海中アルゼンチンからカポベルデ沖に達し、スペインのカナリア島に到着するまでに3人の死亡者と2人の重症感染者を出した。今後感染者も死者も増えるだろう。
カナリア島政府と住民が、船の入港と乗船者の上陸を拒否したため、各国政府は23か国、150人をそれぞれの政府が用意したチャーター機で母国に帰国させた。日本人乗客は英国機で英国に飛び、そこで隔離された。
豪州政府は、5人の乗客と、1人のニュージーランド乗客のために特別機を出して、西豪州パースに飛んで、そこから数キロのところに新たに作られた隔離病院に収容する。ここは、2020年コビッドパンデミックのとき、患者収容先に困った政府が大急ぎで作った隔離施設で500床のベッド数があるが、一度も使われることなくコビッド感染は収束した。ニュースで見ると、500床の個室は、ホテルのようだ。

ハンタバイルスは、ネズミ、蝙蝠、爬虫類や魚類が感染源になるバイルスで、発症した生物や人から呼吸器を通して感染する。細菌バクテリアよりも細胞が小さいため抗生物質が効かないし、治療法はない。致死率40%といわれるが、まだよくわかっていないバイルスで、昔からあったが潜伏期間が1日ー24日、コビッドは2週間の隔離で擬陽性者が済んだのに対して、はるかに長い期間隔離されなければならない。
クルーズ船内で亡くなったのは、69歳と70歳の夫婦と、もう1人の3人で、アルゼンチンでバードウォッチングしたことが感染の契機になったかもしれないと言われている。年寄りは肺炎で亡くなるものだが、リタイヤして老後を楽しんでいた仲良し夫婦が一緒に亡くなったのは悲しいことだ。

注目すべきは、英国政府の対応だ。
1人のハンタバイルス感染者が、クルーズ船から降りてセントヘレナ島のその先にある、トリスタンデクンバ島という小さな南太平洋の島に戻った。セントヘレナ島は、アフリカと南米との間にある島で、アフリカ大陸から1840キロ離れ、ナポレオン皇帝が島流しにあって、1821年に、51歳で亡くなった島だ。
パリ観光をした人は、パリの立派なナポレオン墓を訪れるだろう。これはあまりにセントヘレナ島の墓が母国から離れていることに同情した政府によって、遺体を掘り起こしてパリに運んだものだ。セントヘレナ島に行くには、小型機か船だと南アフリカケープタウンから5日間船に乗らなければならない。
で、、、
さらに、そこから飛行機で着陸できる空港がないため、2,400㎞の距離を船で5日間船旅をしなければトリスタンデクンバ島にたどり着けない。そんな島に、疑感染者のクルーズ乗客が帰ったのだ。
英国政府は、島中の住民の感染を予防、治療の対応をするために、昨日、6人のパラメデイックと2人のドクターをパラシュートで島に落下させた。南大西洋の小さな島、ケープタウンから5日間でセントヘレナ島、そこからさらに6日間の船旅でたどり着ける英国植民地、トリスタンデクンバ島の住民のために、これだけのことをする。英国政府。
パラシュートでピューンと島に降りていくドクターたちの姿に、医療関係者であるわたしは心から感動したのであった。
地図の一番下にある赤丸がトリスタンデクンバ島、真ん中がセントヘレナ。一番上の白いのが英国。



2026年5月9日土曜日

母の日に

母の日に
娘たちに
あなたがたは幼いうちに故郷を失い
友達を失い
父親をなくし
母国語を失い
愛犬を失い、愛猫を亡くした
それでも
新しい場所になじみ
新しい言葉で
たったひとりで問題を解決し
愛する小さな命たちの墓を建て
失くしたものよりももっとたくさんのものを獲得してきた
しっかり足を地につけ
生きてきてくれた
それが一番の私の誇り
ありがとう ありがとう
母の日に贈られた
花を飾り
チョコレートをかじり
ゴリラでも1週間で食べきれないほどの果物籠を前に
むしゃむしゃ むしゃむしゃ むしゃむしゃ
食べているよ
ありがとう