2007年9月26日水曜日

映画 「ディセバー ボーイ」



ハリーポッターを演じているデビッド ラドクリフ(DAVID RADCLIFFE)が主演した オーストラリア映画、ということで、沢山のオージーが見るに違いない新作。各 ホイッツ映画館で上映中。監督ロッドハーデイー(ROD HARDY)。地理的事情により世界の文化の主流からは隔絶されたラリアでも、さらに、限られた予算ながらも、良い映画はちゃんと作られているという証。とても良い映画だ。

南オーストラリアのカンガルー島で撮影されたそうだが、本当にラリアの自然の大きさと美しさが堪能できる。 荒々しい野生馬が、走り抜ける草原、終日 ボートから釣り糸をたらしている老人は 湾に住み着いた巨大魚に名前をつけて可愛がっている。巨大な日没と日の出。海岸線を爆音で走りまわるバイクの青年、波打ち際で魚を取って食べる野生馬。どれも、切り取って絵になる。自然描写のカメラワークが素晴らしい。

1960年代、カトリック修道院付属の孤児院で育ってきた、12月生まれの少年達4人は、誕生日のプレゼントとして、1ヶ月海辺に住む老夫婦のところで 夏休みを過ごすことになる。ラリアなので、クリスマスの12月は真夏で夏休みだ。これは 内陸地の砂漠地帯にあった孤児院で育った少年達にとって、初めて海辺で過ごす体験。敬虔なクリスチャンの養父養母。遊びまくる少年達。毎日が新しい発見で 毎日が冒険。

隣の家の旦那さんとの出会いが良い。遠くからバイクの音がする。少年達が耳を澄ます。しばらくして海岸線の小さな点が徐々に大きくなり、夢のような素敵なバイクが見えてくる。爆音をたてて疾走してくるバイクにまたがった男を目で捉えるときの少年達の、気も狂わんばかりの熱狂。バイク乗りの 隣の旦那さんは、もう少年達のヒーローだ。そんな男の中の男、あこがれのヒーローが 子供を欲しがっていて、孤児を養子にしたいというのだ。もう、その日から、夢のヒーローは、僕の夢のお父さんだ。

家族のない4人の少年達にとって4人の結束は家族より強い。そこに、4人のうちの一人を養子にしたいという 隣の若夫婦が出現して、4人の結束は一挙に崩れ、ライバル意識と、嫉妬、競争の嵐に巻き込まれていく。

4人のうち最年長、16歳の ダニエル ラドクリフは、きっと、養子には選ばれないだろうという絶望感に浸っているが、失意を癒すように美少女に出会い、恋をする。初恋、そして、裏切りの 苦い体験。

少年達の一月が過ぎ、また孤児院に帰るときが来た。赤土の砂漠と青い空、どこまでも続く大きな自然が 少年達の喜びの涙も、苦い涙も、のみこんでいく。 とっても、心にしみる映画だ。

16歳のこの少年を演じたダニエル ラドクリフは実際は18歳。まだ、少年の体つきで声も高い。難しいテイーンの役をよく演じていた。ハリーポッターの第6作目の 作品の撮影に入ったそうだが、最終回第7作目のフィルムまで、役者として、どれだけ成長していくだろうか、楽しみだ。

2007年9月22日土曜日

ドルフィンを食べないで!

在外日本人にとって 一番困ったことは 日本が世界中の反対を押し切って 調査捕鯨という名の商業捕鯨を続け、平気で鯨を食べていることだ。GNP世界2位 世界中の美食を集め、飽食の限りを尽くしている国民が どうして他に優れた蛋白源が溢れているのに 鯨を食べ続けているのか? 教養も品格もない、醜悪だ。海外に住む私達が、日本人とわかったとたんに侮蔑の目で、「おまえら、いい加減 鯨を食うなよ!」と、罵声を浴びて、身の縮む思いの身になってもらいたい。

私は日本人が食べているのは 鯨だけだと思っていた。まさか、、、ドルフィンを食べたりしてないよね!と。 

2007年9月4日の 「THE JAPAN TIMES」によると、和歌山県太地町では近海に生息する2万頭のイルカに対して、年間約2300頭のイルカを捕獲、肉の一部は海外に輸出、主に100グラム170円程度でスーパーマーケットで販売され食べられている。太地町は人口3500人、捕鯨は400年前からの伝統で地元の人にとっては 鯨もイルカも食べなれた伝統料理だ。水産庁から捕獲業者に与えられている捕獲量は スジバンドウイルカ:990頭、アラリイルカ:470頭、ハナゴンドウ:550頭、マゴンドウ:300頭、オキゴンドウ:40頭、カマイルカ:170頭など。去年1年で、地元の幼稚園、小中学校の給食として150キロが消費された。ここで、捕鯨に関わっている漁師は現在26人。
しかし、町長は3億3千万円かけて新しい鯨屠場を建設予定。そのうち、1億6千万円が補助金として税金から出る計画だそうだ。これが出来ると、イルカ鯨肉の保存ができ、全国の学校給食に提供できるようになり町の経済向上に貢献できる、としている。しかし、町の人々は鯨がなくても、生活でき、多数の人が屠殺場建設に賛成しているわけではない。

日本で、2300頭ものイルカが 浜辺で撲殺され、食卓に載っていたなんて!!!全然知らなかった。 IWC (国際捕鯨委員会)ではマッコウクジラなど大型鯨類を管轄しており、小型鯨類は管轄外、その中でもイルカ類は、国内管理の問題として イルカ殺生についてIWCが 立ち入ることが出来ない。 また、IWCでは、日本の調査捕鯨について、批判はできても、規制する力をもっていない。

温血動物である鯨やイルカが 体内に蓄えている分厚い脂肪層に重金属、有機化学物質が蓄積していることは、1990年あたりから、指摘されてきた。シャチから最高脂肪1グラムに対して400MGの水銀が検出され、犬などの陸上動物の4000倍の汚染濃度が報告されている。

今回、太地町の幼稚園、小中学校の学校給食に、地元のコビレゴンドウイルカの肉がでて、同じ肉を調査してみたら厚生労働省の規制の16倍の水銀が検出されて、問題になった。 これは、食の嗜好の問題ではない。学校給食は、教育の一環として給食は、きちんとも残さずに食べることが、ほぼ強制される場で 水銀入りの肉を子供達に食べさせたということは 立派な社会的犯罪と言える。そんななかで、町長の音頭のもとに、新しいイルカ鯨屠殺場ができ、全国の学校給食にこういった肉が供給されて良いのだろうか?

水銀汚染された肉だから 給食にふさわしくないのではない。イルカの肉だから、子供達の給食にふさわしくないのだ。

イルカや鯨は 近年になって彼らの高い知能や、コミュニケーションの様相が 徐々にわかってきたが、まだ、解明されていないことの方が多い。シャチにいたっては 社会構造、運動範囲、子育てなど、全く未知と言って良い。そういった、私達と同じ、あたたかい血が流れている 海に住む大型動物を、乱獲したり 調査 学術目的といって、捕獲して、まして食肉として市場に出してはならない。

鯨もイルカも 野生状態で、自然の中で、研究されるべきだ。

やめろ!鯨を殺すな。やめろ、イルカを殺すな。

2007年9月12日水曜日

映画 「THE BOURNE ULTIMATUM」


パトカーを含めて100台ほどの車、ついでに飛行機にヘリコプター数台、戦車も出てきて それらがみんな燃え上がるのを観た。次々と人が銃殺され、蹴り殺され、踏み殺され、首を捻じ曲げられて音をたてて殺されるのを見た。火曜日に 新作映画 マット デモンの「BOURNE ULTIMATUM」と、遅まきながらの「ダイハード4」の二本を見たからだ。どちらも、各地ホイッツで上映中。

ダイハード4は面白かった。今まで躊躇していたのは、52になったブルース ウィルスの衰えた姿を見たくなかったからだ。でも彼、老いを全然感じさせなくて良かった。役柄はロスの冴えない警官、妻には去られ、娘からは疎まれて わびしい一人暮らし、、、という設定だが とても、うらぶれた様子に見えない。こんな男を女が放っておくわけがない。いつもながら、人質をとられて「近付くな、人質を殺すぞ。」と言われようが、自分が満身創痍であろうが ひるまず、どんどん悪者に迫って行く姿、やられてもやられても 全然懲りない姿、、、これがダイハードだ。見ているほうはあっけにとられながらも痛快。悪者は本当に卑劣だし、ブルース ウィルスは絶対死なないから、安心してみていられる。

「BOURNE ULTIMATUM」は、ポール グリーングラス監督。主演マット デモン。題名は、ギリギリの最終提案とか、最後通告とかいう意味。 CIAは正義のためにあるのではなく、常に揺れ動く世界情勢の中で、目の前にある利害のために その場しのぎの対策を講じて生き延びてきた。2001年9月11日のテロもCIAは後になって、危険は事前に予知しており、大統領に報告していたと、発表して大統領追い落としにかけたが、成功しなかった。1月にソマリアを攻撃し、テロを事前に食い止めるためと言ったが 事実に反しており、無実の数百の市民を殺した。CIAのなかでも、今の大統領に忠実な派閥と すでに次に予想される大統領のために働く派閥の動きがあり、その中でも細かい派閥争いがたくさんあるのも、周知のことだ。

今回の映画もテロ対策のためにCIAで特別の訓練された殺人マシーンのマット、デモンが自分に殺人依頼をしたのは誰か、自分のアイデンティティーを探し出すというお話。結論はおきまりの、CIAナンバーワンのボスが不正を行っていて、CIAナンバーツーに告発される。たくさんたくさん殺し、たくさんたくさん壊したけれど、敵はアラブでもロシアでも中国でもなく 身内だったという今ではもう、使い古されたストーリー。

でもアクションのありえないような激しい動きを捉えるカメラワークの良さ、効果的な音楽は、さすがアクション映画のハリウッドだ。「これだから全く たまんねーよなー!」とボヤきながら 最後まで人々を引き込んで見せてしまうだけのパワーを持っている。マット デモンは、今、映画界で世界一 収入をもたらせている俳優だそうだが、彼の演技は感情を殺した殺人マシーンにぴったり。感情や状況に流されない 悲しみも怒りもない、まじめ青年。

今回の映画をみていて面白いと思ったのは、CIAが 沢山抱えている 殺人請負人たち、、、携帯電話で指令が届き、殺すべき人の顔が携帯電話に映し出されると ただちに行動に移り、追跡、完全に殺すまで追い続ける一匹狼の殺し屋軍団が みんなアラブ系の顔をしていたことだ。これは、おもしろい!アルカイダとか ヒズボラとか ハマスとか CIAはジャンジャン捕まえて、世界各地のアメリカ基地で拷問したり好き放題しているが、当然、寝返り合戦で、アルカイダのために戦っていた戦士を CIAのためにアルカイダと戦わせたりしているはずだ。

優秀なテロリストの取り合い合戦なわけだ。何のために戦うか 誰のために戦うかは、二の次というわけ。そんな感じのめっぽう強いCIAエージェントのアラブ人が別のセクトのCIAエージェントのマット デモンを痛みつける姿が、ブラックユーモア。アメリカの姿を正直に表していた。

2007年9月7日金曜日

映画 「酔いどれ詩人になる前に」


チャールズ ブコウスキーが再び日本で、ブームになっているようだ。1994年に 彼が白血病で死んでから10年もたつのに 日本でも根強いファンが人気をずっと支えていることは特筆に値する。2002年に、映画「ブコウスキー:オールドパンク」という彼のドキュメンタリーが発表されている。

彼がどんな作風か、、、作品集「勃起、射精、露出、日常の狂気にまつわるもろもろの物語」の中の、「狂った生きもの」の、最初の出だしだ。訳は青野聡。 

 「 失業して、部屋をおいだされ、そして(たぶん)正気からもつきはなされていた当時、私は飲んでばかりいた。その日、裏どうりで寝て過ごしたあとで、朝日のなかでゲロをはいた。それから五分おいて、コートのポケットにあったワインの残りを飲んで、町のなかを歩き出した。いくあてなどなかった。でも歩いていると、なんだか目的をもって行動しているかのような気がしてきた。もちろん錯覚である。裏通りにいたってしょうがなかっただけだ。  どうにか意識を保って、しばらく歩いた。私は飢え死の魅力に、なんとなくとりつかれていた。横になって待っていられる場所がありさえすればよかった。社会にたいする恨みは微塵もなかった。そもそも社会に属していなかった。そんなことはずっと前からわかっていた。」

彼の生き方を映画にした「FACTOTUM」邦題「酔いどれ詩人になる前に」。新しい映画なのに ビデオで観た。日本では公開されているが、ラリアでは劇場公開されなかった。原題が「FACTOTUM」というのを知らなかった。ご自身も詩人でギターをもって歌っておられるマイミクのFUNKAさんに教わって ビデオを探してみつけた。 ノルウェー人のベント ハマー監督、ブコウスキー役に、マット デイロン、相手役というか女優に、リリーテイラー。

テーマソングを クリスチャン アズビョンセンという人が歌っている。この歌の詩がブコウスキーの「ドリームランドとスローデイ」。この歌が ものすごい。阿片巣窟の奥底の底の底から聞こえてくるような、破壊的で ダダみたいな曲だ。

タイトルのFACTOTUMは何でも屋、便利屋とでもいう意味、食べるために 郵便局員、タクシー運転手、運送屋、機械工、缶詰め工場の荷詰め、ギャンブル、使い走りなど、何でもやった彼の半生を揶揄したことば。

ありとあらゆる職種で食いつなぎながら、書くことを決して止めなかった詩人の姿に、深く心うたれた。生きることに不器用な もの書きの姿が悲しみに満ちている。汚い言葉をたたきつけるように書きなぐる暴力性、にも関わらず繊細で柔らかな心、恥ずかしがりやのつっぱり、おおきな駄々っ子。

マット デイロンが、とても良い。実際のブコウスキーは こんなだったんだろうな、と思える表情、しぐさが とっても自然でよかった。彼は、アカデミーをとった映画「クラッシュ」でライアン巡査をやった俳優。この映画では、いやな奴の憎まれ役を全く憎く憎しく演じていた。 相手役のリリーテイラーが、また、とても良かった。ハイヒールを若いときから履いていた人独特の曲がった足指、O脚にゆがんだ足、労働者階級出身を示す筋肉質の体型、美人でないのに、タバコとアルコールがないと生きられない女のからっぽな脳みそと、かわいいしぐさには、男でなくとも、グッとくる。

男が あてにしていた三流紙からの原稿料を待って、疲れきって足が痛む女に、自分のくつを履かせて歩かせるシーンがとっても良い。女のサンダルを持ち、自分は くつしたで、女の手を取って歩いていくとき、男のやわらかい足の裏が、私にも感じられるような 心にしみるシーンだ。

映画の中にこんな台詞がある。SOME PEOPLE NEVER GO CRAZY.WHAT TRULY HORRIBLE LIVES THEY MUST LIVE.決して狂わない人たちがいる、それでも生きていかなければならないなんて、、、。自分のことを、言っているのだ。ブコウスキーは きっと、どんなに飲んでも、醒めていたんだろう。

2007年9月5日水曜日

APEC 首脳会議に反対する

ジョージブッシュ米大統領が来豪する9月4日の朝、ヘアカットのために 彼の泊まるインターコンチネンタルホテル前を通り、いつもの店で髪を切りメッシュにカラーを入れてもらって帰ってきた。世界一悪い奴、懸賞金つきのお尋ね者が 到着する日なので通行止めになっているかと思ったが、通常どうりの街の様子で、ちょっとびっくりした。でも夜10時到着といっていたから、夕方からはそのあたり、警備で一変したことだろう。

APEC会議のために9月5日から9日まで、ラリアの経済活動は停止する。7日金曜は学校も職場も休み、各国首脳が会議するオペラハウスと、彼らが宿泊するホテルのあるラリアの経済活動の中心マルチンプレイスあたりは封閉鎖されて 市民が立ち入ることは出来ない。デモで大量の逮捕者が出ることが予想されるが市の中心部にデモ隊は一切入れない。

ジョンハワード首相は今回のAPEC会議のテーマは 1、地球温暖化対策、2、貿易自由化、3、地域の安全対策 の3つになると発表した。ジョンハワードが10月以降に予想されている選挙で退陣し、新しくケビン ラッド労働党党首が首相に任命される可能性が強いが この、ケビンがAPECでのジョンの対応を絶賛して、僕が首相になっても、ジョンと全くおんなじことをしますよ、と確約?したのには いまさらながら あきれた。ラリアでは自由党と労働党とは対立する政党ながら、酷似する双子のようなものだ。労働党というから労組を基盤にした世界の労働者の味方かとおもったら、とんでもない、ラリアの労働者のために、移民労働者を認めず、地下資源で核兵器のもとになるウラニウムを外国に売るのも大賛成、人権も、世界平和も、環境問題も、へったくれもない。ラリアにタカとハトはなく、タカとワシだ。

アメリカではアフリカから奴隷を連れてきて アメリカ経済の土台に利用するために奴隷を殺さなかったが、ラリアでは先住民族アボリジニーを奴隷として使うには怠惰すぎるという理由で、「害畜」として、カンガルー同様に撃ち殺した。クイーンズランドやタスマニアではアボリジニー人口が零になるまで絶滅させた国だ。こんな血まみれの歴史を持った国は他にはない。

APECに先だって、中国のフージンタオ主席が いち早く西ラリアに来て次々と商談をまとめた。日本より一足でも早く 一銭でも安く日本に買占められないうちに石炭、鉄鋼、鉱石を買い付けたわけだ。これで、日本にはどうしても必要な ラリアのエネルギー石炭、LPGガス、アルミニウム、原油などは先手中国に持っていかれてしまって、アベが来た時には残るのは 日本の農産物自由化への圧力だけだ。アベはブッシュとハワードの圧力に耐えられるのか? ラリアから安い米、小麦、砂糖、乳製品、牛肉が関税なしに入ってきたら、日本の農業、牧畜は全滅だ。

このようにAPECは、先進国の中でも最も豊かな国同士がもっと豊かになるための取り合いごっこだ。だから、私はAPEC そのものに反対する。地球には200カ国ちかい国があり、63億人の人が住んでいる。先進国が勝手に富を分配してはいけない。

世界の最富裕国が世界のGDPの88%を占めるような 世界経済構造はまちがっている。グローバリズムは 世界の経済発展を促進したが、逆に最貧国を最富裕国との経済格差は広がる一方だ。
少数者による世界支配を許してはならない。APEC首脳会議に反対する