2010年12月28日火曜日

映画 「ツーリスト」のアンジェリーナとジョニー デップ



映画「THE TOURIST」、邦題「ツーリスト」を観た。
アンジェリーナ ジョリーとジョニー デップ共演のハリウッド映画。
近年の娯楽映画としては 最高の出来だ。

監督製作:ドイツ人 フロリアン ヘンケル ヴァン ドネルマルク
カメラワーク:オージーのジョン シール。
原作は2005年のフランス映画「ANTHONY ZIMMER」。
ソフィー マルソーが演じた エリーズ役を アンジェリーナ ジョリーが、その相手イアン アタルが演じた役を ジョニー デップが演じている。
http://www.youtube.com/watch?v=l5ZGiuoBuGg

ストーリーは
ロシア マフィアから 多額のマネーロンダリングのための隠し金を騙し取った男の名は アレクサンダー ピアス。ロシア マフィアとしてはこの男、殺しても殺し足りない。見つけ次第八つ裂きにしてやりたい。そんなロシア マフィアの面々は勿論のこと その騙し取った金を 隠し場所に使われたロンドン銀行も 預けられた金の利子を求めて訴訟をおこしている。世界をまたに賭けた金融知能犯罪に、インターポールも 必死でこの男を追っている。

しかしアレクサンダー ピアスの顔を知るものは 誰も居ない。彼の行く先を追うただ一つの鍵は、アレクサンダー ピアスの愛人エリーズ(アンジェリーナ ジョリー)だけだ。だから ロシア マフィアもロンドン警視庁もインターポールも エリーズから目を離せない。彼女の行く先々を 黒服のマフィアが追い、覆面パトカーが追いかける。それを もう2年も続けているのだ。アレクサンダー ピアスはこの2年 動きがない。

そして ある日 エリーズが 突然動き出した。
棲家だったパリを出て、長距離電車に乗るエリーズのあとを 男たちが追う。エリーズは 列車の中で、自分の隠れ蓑に利用するために、男を物色する。声をかけたのは アメリカ人、平凡な旅行者。誠実そうで世慣れない感じで ちょっと冴えない数学教師だ。エリーズは このフランク(ジョニー デップ)と車内で親しくする。
インターポールは すぐにこの男が何物であるかを突き止める。平凡なアメリカ市民。犯罪暦なし。3年前に事故で妻を失くした数学教師だ。エリーズが単に列車のなかで偶然出会っただけの男だと承知している。しかし、インターポール内の ロシアスパイが この男こそアレクサンダー ピアスだと思いこんで 誤った情報を ロシア マフィアに送ってしまう。ロシア マフィアは フランクを拉致しようと計画する。
場所を ヴェネチアに移して エリーズと フランクと アレクサンダー ピアスと思われる男と ロシア マフィアと インターポールとの追いつ追われつの ハラハラドキドキが展開される。
これから先は ミステリー仕立てなので、筋は言えない。

アンジェリーナ ジョリーが とてもとても美しい。これほど美しく映像に納められた彼女の姿は 久しぶり。「ソルト」では 変なかつらをかぶって、アクションは良かったけれど、美しくなかった。今回の映画では これでもか これでもかと 豪華で贅沢な衣装に身をまとい カメラワークも 完璧に彼女美しさを際立たせていた。
カンボジア、エチオピア、ベトナム人孤児を養子にしたうえ 女の子と男女の双子のお母さん。ブラッド ピットの奥さんをやりながら 国連難民高等弁務官事務所の親善大使。2010年2月のハイチ大地震では、ブラッド ピットとともに 100万ドルを国境なき医師団に寄付した。こんな ことをする人が 美しいと嬉しい。

ジョニー デップも とても良い。何が何だかわからないうちに、ギャングから追われ、命からがら逃げ回る数学教師の役が とても似合っている。
何と言っても 舞台が あのヴェネチアだ。
ホテルからゴンドラで 正装して舞踏会の会場に向かうアンジェリーナ、、、ホテル ダニエラのスイートルームのベッドで眠るアンジェリーナ、、ウォータータクシーで手錠をかけられたまま 運河に落ちるのデップ、、、パジャマ姿でセントマルコ広場のマーケットに屋根から飛び降りるデップ。
ゴンドラでまわった 数々の歴史ある建物や風景が よみがえって来る。
ヴェネチアを訪れたことのある人にとっては 嬉しい光景ばかりだ。

撮影のほとんどが ヴェネチアで行われたそうだ。
サンタ ルチア駅、セント マルコ広場、グランドカナル(大運河)、モトスカーフィ(ウォータータクシー)、ヴァポレット(乗り合いタクシー)、サンタ マルコ寺院、パラッツオ ドオモ(元首の館)、ため息の橋、リアルト橋、ホテルダニエラ、ムラノグラス ファクトリー、、。
ヴェネチアは 100数十の島々からなり、これをつなぐ4百数十の橋で構成される街だ。すべての建物は数百年たっている。過去の栄光と繁栄を物語る 古い商人貴族の館。暗くて狭い小道。ホテルがそっくりそのまま博物館で美術館であるようなホテル ダニエラ。そのスイートルームの 調度品の数々などを画面で観ると美しすぎて 哀しくなるのは どうしてだろう。
この街が日々、沈んでいっており いずれは街そのものが なくなっていくからではないだろうか。水の都 ヴェネチアは滅びゆく貴族の哀切の想いがする。

ナポレオンは このサンマルコ広場を「世界で最も美しい客間」と表現した。ゲーテ、スタンダール、ヘミングウェイ みなヴェネチアを 特別に愛した。ヴェネチアは そんな特別なところだ。
シェイクスピアの「ヴェニスの商人」で有名だが、世界で初めて ユダヤ人ゲットーができた街でもある。
映画「旅情」では キュサリン ヘップバーンが ヴェネチアの運河に落ちて 男に会い 失恋をしてアメリカに帰っていった。 
トーマス マンは「ヴェニスに死す」で、美少年に恋をする老作家を描いた。これも素晴らしい 忘れがたい映画になった。ペストがはびこるヴェネチアが 悲劇を予感させていた。
ルキーノ ヴィスコンテイは 自身がシチリアの没落貴族出身だから 映画「山猫」で滅びゆく貴族を描いた。この映画は 洗練されたイタリア貴族文化の華麗や退廃を 世界遺産に復元するかのように描いた一大叙事詩だ。バートラン カスターとアラン ドロン、クラウデア カルデイナーレの名優たちによってイタリアの 滅び行く栄光の歴史が描かれていた。

ヴェネチアは特別な風格と香りを持った街だ。一度訪れただけで いつまでも恋しいと思う。
そんなヴェネチアを舞台にした スリラーアクション映画「ツーリスト」。
とても良かった。日本では3月11日公開。
見る価値ありだ。

2010年12月19日日曜日

アガパンサスの花




いまころのシドニーは ジャカランダの花が終わり、アガパンサスが花ざかりです。
背が高くて 頭の重い 青や白の大きな花が アパートの塀のわきや 入り口から玄関にいたる道の両側に咲きそろい みごとです。葉のある地面から1メートルも高いところに 大輪の花をつけるので、なかなか貫禄があります。日本でも球根を植えておくと 簡単に増えて育つので庭に植える人も多くなってきたそうですが、私はこちらに来て 初めて出会いました。

白、青、紫と花の色がありますが、青が シドニーの初夏の空の青さに似て とてもきれいです。南アフリカが原産地だそうですが、花の名前は ギリシャ語の「アガペ」すなわち愛 と、「アンサス」花という意味との合成語からきています。「愛の花」という訳です。でも 別名「ナイルの百合」のほうが この花のイメージに合っています。

「だておとこ」とか「プレイボーイ」のことを、花(鼻)の下が長い「チューリップ」と、別称で呼びますが、アガパンサスは、花の下が1メートル、、、チューリップどころではありません。

写真は「アガパンサスの花」と、「うちの愛猫クロエとフリージャ」

2010年12月16日木曜日

異国の地に暮らして


多感な頃の二人の娘たちを連れて家族で フィリピンに10年暮らした。いろんなことがあったが、忘れられないことのひとつ。
マニラの片側4車線の大きなエドサ通り沿いにあるガソリンスタンドで、私の乗った車のドライバーが、給油しようとしたら 車寄せの給油スペースに 全裸の少年が倒れていた。数人の男たちが 笑ってタバコをふかしながら、うつぶせになった少年の体を蹴飛ばしたり、足でひっくり返そうとしたりしている。皆、笑っていたので、私のドライバーは 「昨夜飲んだくれた 酔っ払いでしょう。」と言って、そこでの給油をあきらめて、そのまま走り去った。フィリピン人にしては 色の白い、髪の短いほっそりした少年だったが、それを取り囲む男たちの 野卑な顔つきが とても嫌な感じだった。その日は それで、あったことをすっかり忘れていた。
翌日 ドライバーから、それが 20歳の女性で 輪姦された末 絞め殺された遺体だったことを知った。朝早く、新鮮な野菜や魚を買いに行く途中だったから、死後4-5時間は 経っていたのだろう。こともなげに、「あ、あれね、、女だったよ。」と言うドライバーの言葉に、平静を装ってはいても、胸の中で ドッと血が流れ 涙があふれるのを止めることができなかった。
どうしてあの時、何があったのか男たちに聞いて 酔った少年ではなく殺された少女だったと知って、シーツなり毛布なりを掛けてやらなかったのだろう、どうしてか、、と。陵辱されて殺されて なお死体をもて遊ばれていた少女を見て ただ通り過ぎてきた自分を責めた。
フィリピンでは いくつも死体を見た。見て 通り過ぎた。余りに死が身近だった。

それから数年して、娘達とシドニーで暮らすようになった。
ある朝、出勤する人々が忙しく交差するテーラードスクエア。オックスフォード ストリートを歩いて、向こう側に渡る時 道路わきに酔っ払いが寝ていた。若いが金色のもつれた髪、汚れた服、強いアルコールの匂い。そのあたりでは 夜でも昼でも路上生活者がいるし、酔っ払いなどいつも居る。ただ、操り人形の糸が切れたような ひしゃげたように、不自然な形で転がっている。怪我でもしているのかもしれない と思ったが 男の足をまたいで 反対側に渡ってバスを待った。見ることもなく見ていると、スーツ姿のハイヒール 書類鞄を持った いかにもビジネスウーマンと言った感じの女性が 足を止め 膝を折って男の横にかがみこんで 男が息をしているかどうか確かめて、それから安心したように歩み去っていった。一髪の乱れも無く装った出勤途中の若い女性と飲んだくれの 意外な取り合わせにびっくりした。すると、その後にもまた、別の若い女性が 男の横にかがみこんで 胸に手をやり 呼吸しているかどうか確認してから、通り過ぎた。驚くことに バスがくるまでの間に3人もの人が 転がっている酔っ払いの生死を確認していったのだ。衝撃だった。

マニラで殺された少女の全裸死体にシーツをかけてやらなかった自分を責めた自分は シドニーで酔って不自然な様子で転がっている少年を 触ることも近付くことも避けて通り過ぎている。生きているかどうかも確認しなかった。
こんなふうにして、いろんな国で 異国者としてただ、通行人として、余り人々と関わらずに生きて来た と思う。
倒れていたのが日本人だったら、通り過ぎることはしなかったはず。

オーストラリアに暮らして15年たった。
オージーのオットと暮らした年数の方が 日本人の最初の夫と過ごした年数よりも長くなったのに、いつまでもオットは他人で、死んだ夫は身内。

人は人種、宗教、文化、信条によって差別されてはならない と信じるが 自分自身の人種差別意識をいつまでも 消すことができない。
そんな自分を肯定も否定もできずに 異国の地で もう長いこと生きて来た と思う。こんなことを考えるって、ホームシックだろうか、、、。
あぶない、あぶない。

2010年12月7日火曜日

映画 「フェア ゲーム」、ウィキリークは正しい




映画「FAIR GAME」、「フェア ゲーム」を観た。分類からいうと、バイオグラフィーということになっている。誰の伝記かというと、まだ若い 実在のCIA秘密工作員ヴァレリー プラムのことだ。

監督:ドング リーマン(DOUG LIMAN)
キャスト
ヴァレリー プラム:ナオミ ワッツ
夫 ジョー    :ショーン ペン

お話は
ヴァレリー プラムは優秀な成績で大学を出ると 自らの愛国心からCIAに志願して局員となる。2001年当時は 彼女は中堅の捜査官だった。
もと外交官の夫 ジョーとの間に双子の子供を抱え 多忙ながら幸せな家庭生活をワシントンで営んでいた。
ジョージ Wブッシュ政権下、米国イラク間の関係が険悪になるのつれ、イラク担当の彼女の仕事も多忙になる。

2001年当時 サダム フセインはウラン濃縮作業をしているという情報が信じられていた。元はと言えば、対イラク対策として、米国の援助によって推進された原子力開発だった。黙して サダム フセインに原子力大量破壊兵器を作らせるわけにはいかない。イラクの原油に狙いを定めていた米国にとって イラクを米国に敵対する軍事大国にすることだけは許すことができなかった。

CIAはイラク担当の秘密情報員ヴァレリー プラムの夫を 以前彼が外交官として赴任していたナイジェリアに送り イラクがウラン濃縮作業を兵器開発のために 行っているかどうか偵察するように依頼する。チームも 各国に情報員を送り 事実確認を急いでいた。妻のヴァレリーは エジプトのカイロ、マレーシアのクアラルンプール、イラク各地に 情報提供者を送り込み 情報を収集していた。
結果はNO。サダム フセインのイラクは 原子力開発も化学兵器も作る予算も持っていなかった。フセインは いちど取り掛かった原子力開発を IAEAの勧告に従っていっさい放棄していた。ヴァレリーのCIAチームは イラクは原子力大量破壊兵器をもっていないと結論して ワシントンに報告した。

しかしその結論が出た日、ジョージ Wブッシュは、「サダム フセインが大量化学兵器を持っていて世界の安全を脅かしている」 という理由のもとに、バグダッド空爆を始めた。そこには副大統領が死の商人兵器会社と密接に利害関係にあったことや、当時下降していた大統領支持率を 開戦によって一挙に上げなければならないブッシュ政権の思惑があった。
開戦のニュースに肩を落として帰宅する妻を見て、夫ジョーは サダム フセインが大量化学兵器を持っている根拠はない という意見を新聞の投稿する。これを見た副大統領は ジョーの発言を潰す為に お抱えのワシントンポストの記者に、ジョーとジョーの妻ヴァレリーを実名で攻撃する記事を書かせる。

CIAの秘密捜査官であることを 新聞で暴露されてしまったヴァレリーに もはや仕事を続けることはできない。ヴァレリーは CIAの仲間達とコンタクトをとることもできなくなり完全に孤立する。開戦による報道管制のいけにえにされたのだ。マスコミは ヴァレリーを3流のCIAのごろつきで サダムが大量化学兵器をもっていない などという夢を見ている反愛国者だと決め付けた。彼女が 仕事で情報収集のために カイロやカラチやバグダッドに送り込んでいた情報員たちも 米国のバックアップを失って命を失うことになる。身の危険にさらされるヴァレリー。死の恫喝の嵐、、、。

ジョージ ブッシュへの抵抗をやめようとしない夫との関係も ぎくしゃくしてくる。身の置き場のなくなったヴァレリーは 二人の子供を連れて実家にもどり、そして ホワイトハウスの公聴会に出頭して 自分のやってきたこと 自分の信念を 嘘偽りなく述べる。しかし、彼女を待っていたのは 2年半に渡る懲役刑だった。
という事実に基ついたお話。

根拠のない情報は情報としての価値はない。正確な情報をもとに事実を把握して現状分析する。これは政治政策にとって なくてはならないものだ。事実確認なくして 大量化学兵器をもつフセイン政権を倒す という理由で開戦に踏み切って たくさんのイラク市民を犠牲にしたジョージ ブッシュは戦犯として国際法で裁くべきだ。直接 兵器の売買、死の商人として戦争の利権に関わっていた当時の閣僚達も同様だ。

たったひとりになっても 事実を事実だと言い続ける勇気。自分の仕事と自分の信念に誇りを持ち続ける勇気。
映画の最後に 実際のヴァレリーが、ホワイトハウス公聴会で証言する様子のフィルムが回る。冷静沈着に証言を述べる彼女の姿に心がふるえる。
実際にあったことを 数年後に映画化する監督の 迅速な撮影と編集作業にも驚かされる。

イラク戦争は過去の話でなく 今 血が流れている現在進行形のできごとだ。いまだイラク戦争で米国兵は撤退できず、バグダッドでは自爆テロが毎日のように起こり、シーア派アラブ人、スンニ派アラブ人 クルド人とが争い合っている。米国のパペット人形 ハミル カザイは自分の利益を肥やすことしか考えていない。
すこしでもイラク戦争の事実を知ること。これが一番大切なことだ。
ウィキリーク がんばれ!!! 

2010年12月6日月曜日

情報は誰のものか ウィキリークは正しい


1972年、ウォーターゲート事件で 民主党を盗聴させていた共和党のニクソン大統領は 事実が発覚されて、辞任に追い込まれた。これを情報収集し公開して 事件の契機を作ったのはワシントンポストのボブ ウッドワードら二人の記者だ。彼らは ヴェトナム戦争の主役だったニクソンを辞任させ 英雄となり 政府の機密情報を公にした罪には問われなかった。
田中角栄元首相の金権政治とその体質を報道した立花隆や、朝日新聞の筑紫哲也は 人々から支持されこそすれ 罪に問われなかった。人々は事実を後から知る。権力を持った者が隠している人々が知るべき事実を いちはやく報道 公開する人は 勇気ある人だ。

デモクラシーはアメリカの国是。
民主主義国家では 全ての情報が自由に与えられ、討議され、決定されなければならない。ひとりの偽政者が都合の良い情報だけを国民に与えて世論操作して 私腹を肥やしていた時代は過ぎたはずだ。天皇や キングや ツアーや 軍人が 愚民化政策で国民に目隠しをして やりたい放題やっていた時代は過ぎ去ったはずだ。嘘の切っ掛けを作って 戦争を始める時代も終わったはずだ。

いま私たちは たくさんの情報をネットを通して得ることが出来る。インターネットは 情報を中央から下ってくるのではなく、横に広げ 個人の家に持ち込むことを可能にした。だから 中国で民主活動家達や作家やクリスチャンや少数民族の人々が弾圧され、情報を政府にコントロールされたまま ゴーグルが権力の脅しによって撤退せざるを得なかったことを、残念だと思う。

偽政者が自己保身のために 都合の悪いことを隠蔽するならば、それをハッカーして公にすることは罪ではない。ハッカーは 情報を公開することで 何の利益も得ていないからだ。情報を売るのではなく無料で知りたい人に公開しているからだ。
今、私たちは ウィキリークによって、「イラクに民主主義国家を建設するために」アメリカがやってきたイラク戦争で アメリカ兵がゲームを楽しむように イラク市民を殺すシーンを見ることが出来る。アメリカの横暴なパワーが 国連で はるかに勝っている姿を知ることが出来る。サウジアラビアから莫大な資金を得ながら、影でテロリスト呼ばわりしていた クリントンの姿を見ることが出来る。ケビン ラッドが中国語で語り 中国との外交を重要視するそぶりを見せながら、クリントンには イザと言う時は中国への軍事行動を提案していたことも知ることができる。
サダム フセインは大量殺戮兵器を持っていなかった。これが 今なら、明確な事実だが、これを当時発言したCIA職員は 懲役刑に処せられていた。

事実は 私たちのものだ。情報はあなたのものであり、私のものでなければならない。得た情報を どう使うかはその人次第だが、知るべき事実を公開する勇気ある動きを 止めてさせてはならない。ウィキリークは正しいことをしている。

人の評判を落としたい時 一番卑怯で効果的なのは その人を性的に貶めることだ。いつの時代も 拷問では性暴力が 最も効果的に行われてきた。性暴力は人を文字通り ボロボロにする。人にとって 最もセンシテイッヴな部分だからだ。
マレーシアのマハテイール元大統領は 優れた独裁権力者で 反対勢力を許さなかった。大統領選挙前に出馬した 副大統領だったアンワー サダットを 同性愛行為強要の容疑で逮捕して、彼の選挙活動を封じ込めた。眼科医の妻と おしどり夫婦で民主化運動をしてきたアンワー サダットの政治家としての死は 同性愛を毛虫より嫌うモスリム文化の中で、実に巧みに演出された。
ウィキリークのファウンダー ジュリア アッサンジに、レイプ容疑がかかった。作り話だ。各国政府は 秘密を暴露されることで政権の安泰が脅かされ戦々恐々としている。何とかして ウィキリークの口を封じたい。
しかし、ジュリア アッサンジが何をしたというのだ。政府の隠したい情報を公にしただけではないか。もともと情報とは誰のものなのか。
情報とは私たちのものだ。それを公開して私たちの手にして 何が悪い。
ウィキリークは正しいことをしている。

2010年12月4日土曜日

2010年 観た映画のベストテン




今年 劇場で観た新作映画は 全部で50本。それに加えて数本のビデオを観た。
どの作品も それぞれの良さをもっていて、忘れがたい。5月に 2010年上半期に観た映画のベストテンを書いたので、一年を通して観た映画のベストテンをあげてみる。
ベストテンのそれぞれに 映画評を書いた月日を記した。ふりかえって それを見れば 作品の製作者や ストーリーや キャストなど映画の詳細がわかる。

http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1496597511&owner_id=5059993

第1位:「終着駅トルストイ謎の死」:マイケル ホフマン監督
    3月29日 映画評
第2位:「剣岳 点の記」:木村大介監督
    4月24日 映画評
第3位:「アバター」:ジェームス キャメロン監督
    12月26日(2009) 映画評
第4位:「インセプション」:クリストファー ノーラン
    8月1日 映画評
第5位:「シャッターアイランド」:マーチン スコセッシ
    3月15日 映画評
第6位:「ゴーストライター」:ロマン ポランスキー
    8月17日 映画評
第7位:「ソーシャルネットワーク」:デヴィッド フィンチャー
    11月16日 映画評
第8位:「リミット」:ロドリゴ コルデス
    10月14日 映画評
第9位:「インヴィクタス負けざる者たち:クリント イーストウッド
    2月12日 映画評
第10位:「ドン ジョバンニ」:カルロス サウラ
    6月7日 映画評

第1位の「トルストイ死の謎」で、ヘレン ミレンがトルストイの妻を演じて今年のアカデミー主演女優賞を受賞した。彼女は トルストイ役のクリストファー プラマーとともに、素晴らしい夫婦を演じてくれた。死を迎えようとするトルストイと 世界3大悪妻の一人と言われる妻の愛憎のすさまじさと、彼を慕ってやってきた若いカップルの愛のはかなさの対比が 良かった。一年近く前に観た映画なのに、観た時の感動がそのまま残っていて、忘れられない。

第2位の「剣岳 点の記」は、この山が好きなので、山の映像が出てくるたびに、心が躍った。ヴィバルデイの「四季」が、春夏秋冬の剣岳の姿にぴったりマッチして、本当に良かった。

第3位の「アバター」は、技術面で、新しい映画の時代を切り開いた。映像革命といって良い。とても楽しめる映画だ。

第4位の「インセプション」では、夢の中で人の深層心理を操作する というヒトの脳にとって新しいテーマを扱っていて、興味深い。映画の作り方が凝っていて、一度観ただけでは見落としていることが多く、2度3度みるごとに新しい発見がある。映画として とてもよく出来ていて完成した作品になっている。

第5位の「シャッターアイランド」は「インセプション」と同様、ヒトの深層心理に迫る課題で 難解でおまけに どでんがえしもあって、おもしろい。どちらもレオナルド デカプリオ主演で 彼が永遠の少年のような甲高い声で 懸命になればなる程 ストーリーが複雑に絡み合い スリルに満ちている。

第6位の「ゴーストライター」では、トニー ブレアが好きな人も好きでない人もこの映画を見たら、ブレアを含めてすべての政治家が 嫌いになるかもしれない。大企業のスポンサーから資金を集めて政治家になり、一国の頂点に立って権力を手にしたと思ったら 何のことはない、自分よりもう一回り大きな頂点の繰り人形にすぎなかった と知らされる。むなしい現実。現状への告発、アイロニーと毒に満ちた作品。ズシン とこたえる。

第7位 「ソーシャルネットワーク」フェイスブックが マーク ザッカーベルグの思いつきでできたものではなく、はじめはハーバード大学の紳士録を発想して作られたものだった。そして また大学の仲間どうしの力によって 組織化されたものだったことがわかる。ザッカーベルグだけが 億万長者になろうがなるまいが、このネット社会では 新しいネットワークが生まれるのは必然だった。実名登録 ごまかしのないネットワークが 世界中5億人もの人たちによって支えられているという事実に、価値がある。ニックネーム登録によるMIXIが盛んな日本、外交してソーシャライズすることが世界一下手な日本人にこそ MIXIではなく フェイスブックが必要なのではないだろうか。

第8位、「リミット」は、映画史上 最低予算で作られた 最高に価値の高い反戦映画だ。メッセージがしっかり伝わった。とても良い映画だ。光が限られた棺桶の中で撮影するカメラワークも上手で 役者も良い。限られた予算、限られた舞台に登場人物一人きり という極限への挑戦と言う意味で全く新しい映画だ。

第9位、「インヴィクタス」、ネルソン マンデラは20世紀の希望の星だ。この人の人柄に魅せられない人はいないだろう。映画では アパルトヘイトからの解放が 白人側からも黒人側からも語られている。またマンデラの公的な顔だけでなく 私人としての顔もよく表現されている。洗練されたフイルムワーク。イーストウッドのような監督でなければ、ネルソン マンデラを映画化することはできなかっただろう。

第10位、「ドン ジョヴァンニ」イタリア映画。ドン ジョバンニ、モーツアルト、コンスタンチン、サリエリ、ロレンソ ダ ポンテなど実在した魅力ある人々が、イルミナリテイが跋扈する時代のヴェニスとウィーンを舞台に生きている。当時の人々の有り様が とてもよくわかる。モーツアルトが生き生きしていて 思わず胸があつくなる。こういう映画を簡単に作ってしまうイタリアの文化って すごいと思う。

この1年、良い映画がたくさんあった。内容がつまらなくても ワンシーンだけが 涙が出るほど美しくて忘れられなかったり、しゃれた台詞に感動したり、どんな映画もそれなりの良さがある。映像と音楽と演技の総合芸術としての映画も、技術の発達とともに益々洗練された作品が 増えてきた。
映画が与えてくれる享楽に実を浸し、娯楽を楽しみ、沢山の人とそれを分かち合えることが嬉しい。それらがすべて敵であるように考える学者の家で育った反動かもしれない。
何にも捕らわれず、美しい音楽に涙し、美しい映像に心を奪われ、美しい物語に心ゆすぶられる。芸術に触れ、5感を通じて心から感動できることが 嬉しい。その喜びに出会うため 今後もたくさんの映画を観ていきたいと思う。

2010年12月2日木曜日

2010年 読んだ漫画のベストテン




今年の5月に 2010年上半期に読んだ 「漫画のベスト10」を書いた。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1493916928&owner_id=5059993

今年も、もうお仕舞いに近付いたので、今年読んだ漫画190冊余りのうちの ベストテンをあげてみたい。
ちばてつやの「明日のジョー」で育った。日本を離れて長いので、日本の本が なかなか手に入らない。しばらく漫画から遠のいていたが、「デスノート」と「20世紀少年」、「モンスター」で、漫画の世界に戻ってきた。人間が描かれている。日本の漫画は世界に誇る文化だと思う。

第1位:バガボンド 1-33巻 継続中 井上雄彦
第2位:リアル   1-4巻 継続中  井上雄彦
第3位:聖おにいさん1-5巻 継続中  中村光
第4位:竹光侍   1-8巻 完結  松本大洋
第5位:宇宙兄弟  1-11巻 継続中 小山宙哉
第6位:神の雫  1-25巻 継続中 オキモトシュウ
第7位:ちはやふる1-10巻 継続中 末次由紀
第8位:リアルクローズ1-10巻 槙村さとる
第9位:きのう何食べた 1-3巻 継続中よしながふみ
第10位:海猿 1-12巻 完結 佐藤秀峰

第1位:バガボンドと 第2位:リアル
何が何でも 漫画では井上雄彦の絵が好きだ。「スラムダンク」、「BUZZER BEATER」のあと、 「バガボンド」を読んできたが、絵の美しさ、線のシャープな鋭さ、会話の間の取り方のうまさ、ストーリーの展開の広げ方、そして内容、すべてが好きだ。
宮本武蔵をとりまく人々まで、ひとりひとりが人間として描かれていて、いとしくなる。登場人物すべてが 正しい道を探し求めて生きる 求道者のような 真摯な態度が心を打つ。技術や小手先で 絵を描いていない。全身全霊をこめて描いている井上の姿が 作品を通して見えてくる。本当に得がたい作者だと思う。

第3位:中村光の「聖おにいさん」は おかしさで秀逸。仏教開祖のゴーダマシッダルタと、キリスト教のイエスとが 下界に降誕して日本文化の中で共同生活するから、やることなすことが すべて笑えて仕方がない。その笑いに 皮肉や悪意が全くない。邪気もない毒もない、無邪気な笑いだけがあって、それが心地良い。今までにない とてもすぐれた漫画だ。

第4位:松本大洋の「竹光侍」は 竹ペンで描かれたそうだが、線がシャープで美しい。他の松本大洋の作品のような ペシミズムもニヒリズムも痛みもなくて、安心して楽しめる。ストーリーも好きだ。

第5位:小山宙哉の「宇宙兄弟」は 優秀な弟をもった おちこぼれ兄が いろんな事を考えながら 試練にたち向かっていくところが良い。兄は 間違いなくヒーローではないから 読者は自分自身を投影して見ることができるし 共感しながら読める。多少、日本人的センチメンタリズムに陥りすぎて、浪花節お涙頂戴が 目につき始めた。アメリカのNASAでは通じないと思う。これからはもっとドライに話を進めてもらいたい。

第6位:「神の雫」では、神咲雫の性格が好きだ。心が真っ直ぐで 親に死なれ 家を失い 仕事で苦労しても 心が折れない。子供の時にしっかり 豊かな愛情をもって育てられた子供は 大人になって多少試練にあっても真っ直ぐ前を歩んでいくことが出来る ということを実証しているようだ。ひとつのことに夢中になれることの 素晴らしさを教えてくれる。ワインのひとつひとつの味わいの表現が 多様でおもしろい。新しい味覚の発見をした。同じワインを飲んでみても、全然 神咲雫の表現に共感できなかったのが 残念なのだけれども。

第7位:末次由紀の「ちはやふる」では、綾瀬千早の かるたへの熱中ぶりが可愛い。小学校6年で会った初恋の 綿矢新に言われた「かるたで日本一になるということは世界一になることだ」という言葉に誘われて かるた一筋に前に進んでいく。一生懸命の姿が 美しい。

第8位:「リアルクローズ」では デパートマンの仕事ぶり、服を売るということの 知らなかった世界ばかりを見せてくれて とてもおもしろかった。物を買い付けて 付加価値をつけて売るという社会のしくみに、自分がいかに無知だったか 思い知らされた。
「つまらないものを着ていると つまらない一生になるわよ。」とか、「中身が見た目ににじみ出ちゃうの。だから人は見た目でわかるの。」とか、「洋服は本来オーダーメイドのものです。レデイーメイドの服とはつまり誰にもフィットしない服です。」などという台詞で 天野絹江と一緒に 服について学ぶことが多かった。

第9位:よしながふみの「きのう何食べた」は、二人の男の関係の優しさと、料理の多様さがおもしろい。お母さんが作ると当たり前の きんぴらごぼうや胡麻和えが イケメンの弁護士が、背広にエプロンかけて料理する意外性がうまい。

第10位:佐藤秀峰の「海猿」は海上保安庁という 全然知らない世界を見せてくれた。巡視船での救命活動、マラッカ海峡での海賊退治、飛行機の海上着陸 60メートルの海底探索などなど。ストーリーがおもしろいが この人の描く絵が 大嫌いだ。この漫画が人気になって、映画化されたが、映画のほうが100倍も良かった。

今年も漫画をたくさん読んだ。
今年のベストテンに、浦沢直樹の漫画が出てこない。去年と一昨年は「マスターキートン」、「20世紀少年」で、感心して、「モンスター」で 心を奪われた。それで、彼の作品を全部読んでみたくなって、集めた。「ハッピー」全12巻、「YAWARA」残29巻、「プルート」も、読んだが やはり、彼の作品では 去年読んだ「モンスター」が 一番好きだ。それに勝るものがない。なので、今年のベストテンに彼の漫画がない。

2010年の漫画大賞を受賞した「テルマエ ロマエ」が とびぬけておもしろかったので 上半期のベストテンの第3位にしたが、2巻は おもしろくなかった。残念だ。

大畑健の「BAKUMAN」を読んだ。漫画が大好きで高校生のうちから漫画家をめざす二人の男の子のお話だ。しかし、ストーリーのおもしろさよりも、こんなに若い人たちが 競って 漫画界でしのぎを削っていることに 目が行ってしまった。人生経験の浅い若い人が 小手先の技術と、ちょっとしたセンスで漫画を描いて売る姿は 健康的ではない。

それと若い女性の漫画家が テレビタレントのように人気ランク化されていることも初めて知って驚いた。漫画家の外見やタレント性よりも、作品が大事だと思うが。
「リアルクローズ」や、「働きマン」で、女性が なりふりかまわず社会で活躍する漫画が増えてきた。にも拘らず、女性の活躍する様子に現実感がない。女性首相、女性州知事、女性市長の組織の中で当たり前に生活していると、日本の女性は まだ立ち遅れていると感じる。
可愛いぶる女には もう飽き飽きしている。日本でも 漫画より現実の方が、先を行っているのかもしれない。もっと現実の競争社会で働いて 生き抜いてきた女性のタフネスと優しさを描いた漫画が 出てきても良いころではないだろうか。