2010年9月30日木曜日

エル クエスト 滝つぼで遊ぶ




キンバリー7日目の旅。
エル クエストに着く。エル クエストはとても素敵なところなので、特別な思いが残っている。
規模の大きさも そこにいたる道のりの遠さも、ぜんぜん違うが、エル クエストは 戦前の開発前の 上高地のようなところではないだろうか。戦前の上高地といっても 私はまだ生まれてないけれど。母から聞いた上高地のイメージにぴったりなのだ。
母は 大正生まれのモガ(モダンガール)だった。結婚前はベレー帽にカーリーヘアで、スカート姿でスキーをしたり、オープンカーで銀ぶらをしたり、軽井沢でテニスをしたり、2人の兄たちと上高地を散策したりしていた。私が穂高から下山してきた と言ったら 普段は無口なのに、珍しく目を輝かせて、昔の上高地の様子を話し出したので びっくりしたことがある。そんな母の思い出の詰まった上高地は きっとエル クエストのように輝いていたのだろう。

エル クエストは四方 高い岩山に囲まれて 渓谷があり、泉があり、滝がある。植物層も豊かで 鳥も多い。
テントに2泊した。夜でも猛禽類だろうか、鳥の声がする。朝には様々な鳥たちの声で にぎやかでとても寝坊していられない。テントには、簡単なバスルームも水洗トイレも ついているが、シャワールームに カエルが居た。うすい茶色の5センチくらいのカエルで とてもフレンドリー というか 中に入って シャワーを浴びても逃げようとしない。カエルと一緒に水浴びをしたのは、初めてだ。
テントから出て、バンガローに食事に行く。朝から強い太陽が激しく照り付けているが、山から吹き降ろす風が心地よい。バオバブの大きな木の根元に 地下水を引いている水場がある。水筒の水を一杯にする。

テントから岩山を歩くこと2キロ。
ガイドの後をついて、大きな岩をつかんでやっこらさ と登るような急な山道だ。情け容赦ない太陽に焼かれながら、岩を登って たどり着いたところは エマ渓谷の滝つぼ。エメラルドグリーンの素晴らしいプールがあった。まわりは数百メートルの岩で囲まれた自然のプールに いくつかの滝が流れ込んでいる。岩から沢山のツルが下がっていて 映画ターザンの出てくるみたい。競技用のプールを2つ合わせたくらいの大きさだ。うっそうと緑のコケや植物が生い茂る岩壁の美しさ。文字通りのエメラルドグリーンの水。ガイドについて ここまで来た10人くらいの人々はさっそく岩場に隠れて水着にかえて、ジャポーン。岩に囲まれた滝つぼ、、、さぞ水は冷たい、と恐る恐る水に入ってみると20度くらいに 水は温まっていた。岩がコケでぬめるが足が立つところだけで、バシャバシャやって、とても満足。滝の真下までは 泳いでいく勇気がない。帰りは大満足で きつい岩下りも鼻歌まじり。

エル クエストは ここ20年ほどで開発された休養地だ。もとは アボリジニーの人しか住んでいなかった。深い山林を切り開いてテント村が作られて 一般の人が滞在できるようになっている。このエル クエスト全部の、山奥の広大な土地を所有するのは たった一人の人。その所有者の家は 厳しい警備と山林で囲まれていて 山道からは 屋根がちょっと見えるだけだ。所有者とそのゲストはヘリコプターでアクセスする。インターンネットで予約すると 所有者とそのゲストが使わない時は 一般人も宿泊できるそうだが、1泊$1700もするそうだ。

翌日エル クエストのチェンバーライン渓谷を観にいく。
50人乗りのグラスファイバーボートに乗って、渓谷を見て回る。赤い切り立った岩山が両側にそびえる。深い緑色の水の上をボートが走る。操縦士も説明する人もアボリジニーだ。
河の中ほどに来た時、船が止められて、みんなに魚のエサが配られた。エサを指でつまんで水にかざして エサを落とすまねをしてごらん と言われる。やってみると、びっくり、寄ってきた魚が次々と 口から水をピューと、勢いよく飛ばすので 水にかざしていた手が びっしょり濡れる。あちこちから 驚きと嬉しい悲鳴。口の中から勢いよく水を飛ばして 飛んでいた虫を落として食べる魚、アーチャーズフィッシュという魚だそうだ。ヒゲをもったキャッツフィッシュも出てくる。

魚が水を飛ばす騒動が治まると、操縦士が今度は勢い良くシャンパンの栓を抜いて、グラスが配られる。おまけに新鮮なメロン、パパイヤ、スターアップル、スイカ、マンゴスチンなどの果物まで。サービス満点だ。趣のあるアボリジニーの語り手で案内されたボートで、緑の水、赤い岩山、青い空、シャンパンに 甘みのある果物、、、他に何が要るだろう。ぜいたくな水あそびの午後、、、。
今夜もビールが美味しいだろう。