2010年9月28日火曜日
バングルバングルを飛ぶ
北部準州ダーウィンから 500キロ走ってキャサリン渓谷を見て、また500キロ飛ばして、西オーストラリア州 キンバリー地区のクヌヌラに来てアジル湖 オルド河下りをした。
今朝は5時に クヌヌラから150キロ走って小さな飛行場に来た。ここからパーヌル国立公園、バングルバングル山脈を上空から見る。
パーヌル国立公園は 世界自然遺産に指定されている。パヌールとはサンドストーン(砂岩)という意味。バングルバングルと言う非常に珍しい奇観を誇る山脈をもつ。横縞もようの釣鐘型の山々が 23万ヘクタールという途方もない広さで広がっている。デボン期 3億6千万年前に形造られた自然奇観だ。サンドストーンと微生物に侵食された鉄を多く含んだ岩の層とが地殻変動と水と風による侵食をくりかえして 山々の横縞もようを作ってきた。
ここが発見されたのは つい25年ほど前の話だ。それまでは この山々を知っているのは 地元のアボリジニーと、近くのダイヤモンド鉱山に働く限られた人だけだった。雨期の11月から3月までは ここに至る道が閉鎖されるため 1年のうちの半分 乾期にしか入れない。乾期でも 道が険しいので4輪駆動のジープに、ガイドつきでないと入れない。一般的なのは 小型飛行機で国立公園内まで入り、そこからジープで見て回る方法だ。
5人乗りの小型飛行機で クヌヌラを発つ。ここから550キロも距離を 上空500キロから3500キロの高さで、飛ぶ。乗っているとエンジンの音が ものすごくうるさい。ごつい航空用イヤホンをつけて、狭い椅子にすっぽり入り込み、キャプテンパイロットの指示に従う。
朝日が昇ったばかり。今日も晴天。ヒョイと、飛行機は空に浮かんだ。
アジル湖の緑、オルド河の青、一面灌漑で潤された農地の緑、赤い大地、青い空。
30分たったところで 飛行機は急にガスに囲まれる。キャプテンが「今日は バングルバングルを飛ぶには雲が多すぎるよ。ダイヤモンド鉱山だけ観て帰るかい?お金は半分返すよ。」と、、。キャプテンの声は良く聞こえるが 私たち乗客の声はキャプテンには聴こえない。ジェスチャーで、「いやだ。いやだー。帰りたくないー。」「バングルバングルまで曇っていてもいいから 飛んで、飛んでー!」と必死で訴える。他の3人も 悶えんばかりに行きたい行きたい行きたいと ジェスチャーで斉唱する。その勢いに折れて、キャプテンは雲の中を飛ぶ。横を見ると 同じ頃飛び発った 他の客を乗せた小型飛行機が 雲のずっと下を飛んでいる。それならば、、、と、こちらのキャプテンも グンと機体を低くして 地上500メートルを飛んでくれた。
雲の下、バングルバングルの山々の頂上スレスレを飛んでもらって 見た山々の素晴らしいこと。ただただ見惚れる。
山々の美しい 渦巻き模様、重なる山脈の模様の色合いは 山ごとに異なって それぞれの美しさを競っている。3億6千年前から侵食を続けてきた山々の大きさ。自然の形造る芸術作品に、感動する。バングルバングルの上を何度も何度も旋回してもらう。
そのあとアーガイルダイヤモンド鉱山の上を飛んでもらって、クヌヌラに帰る。
帰り道 ガスのなかをキャプテン 後ろを見たり横を見たり キョロキョロして、私に「他の飛行機どこだろ?」を聞くのには びっくりした。え?私たちが他の飛行機がどこを飛んでいるか 探さなければならないの? ガスのなかで、突然目の前に他の飛行機が現れた時では、もう遅いのではないでしょうか。空中衝突。
ということはなく、無事に飛行場に着陸。
とても良い飛行だった。
バングルバングルは 予想以上の美しさだった。
きょうもビールが美味しいはずだ。