2010年3月15日月曜日
スコセッシの映画 「シャッターアイランド」
マーチン スコセッシ監督は 1976年に「ラスト ワルツ」を撮った。(完成は1978年)
カナダ出身のカントリーロック 「ザ バンド」の解散コンサートの模様と、メンバーへのインタビューを編集した映像だ。スコセッシ自身が インタビューをして、ザ バンドの生い立ちから解散に至るまでの歴史が、それぞれのメンバー一人一人によって語られる。
その後、メンバーだったリチャード マニュエルは自殺、ロビー ロバートソンは方向変換する。
映像が素晴らしい出来栄えなのは、当時の超一流のカメラマンの映像をもとに、編集した成果だ。ラズロ コバックス、ビルモス ジグモンド、マイケル チャップマンなどがカメラをまわしている。
また、70年代のオールスターが 一同 舞台に出演している。ボブ、デイラン、エリック クラプトン、ヴァン モリソン、二ール ヤング、ジョニー ミッチェル、ポール バターフィールド、二ール ダイヤモンド。そして、最後に 全員そろってで高らかに歌ったのが、「アイ シャル ビーリリースト」(いつの日か自由に)。
この時代の熱が凝縮している。「ラスト ワルツ」永遠の名作だ。
彼らの歌を聴きながら 連日デモに向かった世代。ボブ デイランを口ずさみながら シコシコしょぼい火炎ビンなど作ったり、ベトナム戦争を止めさせる運動のなかで 自分が世界の若者達とつながっている幻想で 熱に浮かされていた。
マーチン スコセッシは他に「タクシードライバー」、「レイジングブル」、「カジノ」、「ギャング オブ ニューヨーク」、「アヴィエーター」、「デイパーテッド」、などを監督している。
彼の最新作「シャッターアイランド」を観た。原作「SHUTTER ISLAND」。
監督:マーチン スコセッシ
原作:デニス ルへイン
キャスト
連邦捜査官テデイ:レオナルド デイカプリオ
相棒 チャック :マーク ラファエロ
病院 医長 :ベン キングスレー
ストーリーは言えない。
言ってしまうと 見る価値がなくなる。その意味は見た人だけが わかる。
だけど、さわりだけを紹介してみると
ボストンから船で数時間、小さな孤島は 島ごと犯罪を犯した精神病患者のための収容所になっている。断崖絶壁に囲まれた島には 唯一開かれた小さな波止場があり、厳重な警備下にある。
1954年 連邦捜査官テデイは、相棒チャックとともに、この島に送り込まれる。逃亡不可能な島の収容所で 殺人犯のレイチェルという女囚が 失踪したというのだ。テデイとチャックは ただちに島に上陸、捜査を開始することになる。
大きな嵐が向かっている。豪雨のなか 到着したテデイとチャックを 完全武装の警備員達が取り囲む。島には島のルールがあるので 銃を持ち込むことは違反になるといわれ、無理やりテデイらは 銃を取りげられてしまう。患者たちは 足に鎖を取り付けられて、二人の捜査官らに、秘密めいたサインを送ってくる。病院長と医長は、島の中央にある古い城に住んでいる。二人の医師とも、テデイら連邦捜査官に協力的な態度を示さない。
失踪中のレイチェルの主治医 ドクター シーハンは、テデイらが来るのと 入れ違いに休暇に出てしまったという。電話もつながらない。激怒するテデイとチャック。
レイチェルの部屋には 靴が残されている。彼女は素足で 豪雨の中を逃亡したらしい。床板の隙間から、テデイは 意味不明の数が書かれた紙切れを見つける。難航する捜査。
テデイは連邦捜査官になる前、第ニ次世界大戦では連邦軍としてポーランドに派遣されていた。そこで見たものは るいるいと並び重ねられた強制収容所のユダヤ人の死体だった。このときの記憶がトラウマになって 彼を苦しめている。そのうえ、戦後 妻を火災で失っている。言葉少なに 過去を語るテデイに、チャックは深く同情するのだった。そして、、、。
というおはなし。
どでんがえしがすごい。
スコセッシ みごと、というしかない。
初めは、あまりこの映画に期待していなかった。クリント イーストウッドの「アルカンタス」、古くは「大脱走」、脱走サバイバルの冒険物。まあ、ちょっと ドキドキハラハラの スコセッシ版アルカンタス を見るつもりでいたが、全然ちがった。けど、ドキドキハラハラだ。とってもおもしろい。
すぐ感情的になるし、いつまでも子供みたいな可愛い男 レオナルド デイカプリオと 大人っぽいマーク ラファロのコンビネーションがとても適役だ。それと、ナイトの称号をもつシェイクスピア俳優のイギリス人べン キングズレーが もったいぶった医師役で、とても生きている。この人 昔映画「ガンジー」をやった。とても良い役者だ。
忘れられない 美しいシーンがある。テデイが昔焼死した 妻を抱いている。愛を囁いているうちに、妻の背中が真っ赤に焼け始める。序序に体全体に火が回って テデイが嘆くうち、全身が灰になって崩れ落ちる。どんなに妻を愛していたか 哀しくやるせないシーンだ。彼のイマジネーションだが、その長いシーンがマッチした音楽とともに、美しい。
映像と音楽の良さ。さすがスコセッシだなーと思う。みごとだ。