2010年3月22日月曜日

映画 「カールじいさんの空飛ぶ家」


PIXAR製作の長編アニメーション映画「カールじいさんの空飛ぶ家」、原題「UP」を観た。今年のアカデミー賞受賞作。
監督:ピート ドクター 
声優:カールじいさん:エドワード アスナー
   少年ラッセル:ジョーダン ナガイ
   妻エリ   :ジェレミー リーレイ

ストーリーは、
内気で病気がちな 少年カールにとって、冒険家チャールズ ムンズ氏は あこがれの英雄だ。しかしこの人は ある日飛行船にのって南米に探検旅行に発ったまま行方知らずになってしまった。
夢みがちな少年カールは ある日 とびぬけて元気で活発な 同じ年頃の少女エリと出会う。少女エリも冒険が大好き。二人でいつか、チャールズ ムンズのように、南米に探検に行って、幻の滝 パラダイス滝を見つけに行こうと約束する。エリは、「冒険ノート」を 大切に持っていて、冒険旅行に行くまでの準備を二人で話し合いながら ノートを埋めていくのだった。

月日がたち ふたりは大人になって 結婚する。こどもがないまま、二人は 仲良く年をとり、いつか、二人で南米を旅行したいと願っているが、家が壊れかけたり、車を買い換えなければならなかったり、転んで怪我をしたり、しているうちに、南米行きはチャンスを逃したままだった。やっとカールが南米行きのエアチケットを手にいれたときは すでにエリは病気になっていて あっけなく亡くなってしまった。

独りきりになったカールは 人付き合いのできない、いこじで頑固な年寄りになった。ボーイスカウトのラッセルが お年寄りのために何か役に立ちたい と、申し出てきても すげなく追い返してしまう。カールじいさんは妻との思い出に生きているだけで、幸せだった。
しかしカールがエリとで建てた家も古くなり まわりは新しい高層アパートが林立するようになった。家の立ち退きの催促にも、カールはエリとの思い出の詰まった 家を手放す気になれない。
しかし、78歳のカールが遂に 立ち退いて老人ホームに入居しなければならない日が来た。

その日、カールじいさんは 1万個の風船を家にくくりつけて 空へと旅発った。エリとの約束を果たしに、南米のパラダイス滝に向かって。
しかし 上空で、予想外のことが起きた。年寄りの役に立ちたいといっていた ラッセル少年が家にしがみついていたのだ。やむを得ず、カールじいさんはラッセルを家に招き入れる。暴風雨や雷を経験しながら 二人の冒険は続く。
ラッセルは 根からの陽気で天真爛漫の少年だ。お母さんと暮らしているが、出て行ったお父さんが恋しくてたまらない。小さかった頃、お父さんは 何でもできて、キャンプにも 冒険にも、どこにでも連れて行ってくれる英雄だった。そんなお父さんが居なくなったことに、傷ついているが、頑固なカールじいさんとの冒険には、驚きがいっぱいで、興奮し放しだ。あと一歩で 夢にまでみたパラダイス滝というところで、風船がしぼんできて、地上に降りたふたりは、浮かんでいる家をロープで引っ張って行かなければならなくなった。

ジャングルの中でカールとラッセルには 人なつこい極楽鳥と 言葉を話す不思議な犬の仲間ができた。ところが 彼らの動きをジャングルで監視している男がいた。何十年も前に冒険旅行にでたまま行方不明になったチャールズ ムンズだった。彼は密林の中に ハイテクの基地を持っていて、言葉を話す犬を沢山 手下に持ち、極楽鳥を生け捕りにしようとしていた。遂に極楽鳥が捕らえられ、それを助けに行ったラッセルが捕まってしまった。

カールじいさんが 空の旅をしたのは、それがエリとの約束だったからだ。子供の時から書き溜めてきた「冒険ノート」をエリのために完結させることが目的だった。 それがかなった今、カールじいさんは レインボー滝のよこに、思い出の家を据え付けて 静かに思い出の中で生きること それが望みだった。
カールじいさんは 再びエリの「冒険ノート」を、レインボー滝の横で開く。そこには、カールとの結婚、カールとのピクニック、カールと二人で見た美しい景色、カールと一緒に年をとってゆり椅子に揺れる二人の幸せな写真がはってあった。これがエリの冒険だったのだ。二人して生き生きとした日々を送り そして年老いて行く旅 これがエリにとっての冒険旅行だったのだ。そして、最後にエリの字で、「これからはカール、あなたの冒険の番よ。」と書いてあった。それを読んで、カールは初めて 自分が冒険ノートを続けていくために何を しなければならないのかに気が付く。

ただちに家中の家具を捨て、家を軽くして 再び空に飛び発ってラッセル少年と、極楽鳥を救出に行くのだった。
大活躍のカールじいさんのおかげで 鳥は助けられて野生のジャングルに戻っていった。そして、ラッセル少年と もと暮らしていた場所に戻ってきた。それからは、ふたりの友情は 本当のおじいさんと孫のように、ずっと、ずっと、後々まで末永く続きました とさ。
というお話。

心あたたまる 誰もが観て良かった と思うような映画だ。画像が美しい。ストーリーも アニメーションも とても良くできている。1万個の風船のきれいなこと、、。

人は年をとる。年をとるということは 醜くなるということだ。
心が偏狭になり、きらいなものが増え、過去の良かったことだけに しがみつきたくなる。
カールじいさんの一生は エリとの冒険旅行だった。その冒険を完結させるのは二人で住んだ古い家を守り、思い出を守ることだけで良かったはずだ。それを 家を捨て、老人ホームに入るくらいなら と、南米旅行に向かった彼は そこで家を捨てることで 本当にもっと大きなものを手に入れた。かけがいのない少年ラッセルという心の通じる 孫とも言える「友達」だ。生きる希望と喜びをもたらせてくれる存在。
人はいくつになっても 希望と喜びがなかければ 生きていけない。冒険を通して それを手に入れたカールじいさんを思って 心が あたたかくなる。