2026年11月1日日曜日

ドキュメンタリーフィルム:NAZA

ドキュメンタリーフィルム「NAZA」
監督:ユバル アブラハム
   レイチェル ショール
制作:ガーデイアンズ(英国)
2026年9月のベニス国際映画祭で審査員特別賞受賞

NAZAとはヘブライ語で、1人の敵を暗殺するときに、その家族や近くに居た人が巻き添えに会って犠牲になることを言う。NAZA10というと、1人を殺すために10人が命を落とすことになるが、イスラエルのインテリジェンスは、20人までは仕方がない、最大500人まで許容できる、と言う。

イスラエル軍は、人口220万人のガザの住民、すべての電話回線を傍受できる情報システムを持っている。この情報機関は、電話使用の多い人を、ハマス活動家と考え、次々と暗殺していった。ハマス要員と思われる人が家に帰ってくると「パパが帰ってきた」と子供たちが言いあう。それを合図に、軍は家族ごと家をドローンで空爆する。アパートだったら、その家族のいる階ごと爆破する。家族も同じ階のアパートの住民も、みなNAZAとなって命を失う。パパが帰ってきた、という合言葉が行き交って、夜の攻撃で命を落とす人が多い。1人のハマス容疑者に500人の無関係の人の命を奪ったこともある、という。

インタビュアーは、夜の暗闇の中をビルの屋上でイスラエル兵士達、24人に質問をする。「ここからテルアビブの高層アパートに住む人々の様子を見ることができるけれど、人々からは僕たちの姿は見えない。だから安心して本当のことを言ってください。」
その真っ暗な屋上からは、向かいのいくつもの高層アパートに住む人々が安心しきって夜の安息に浸っている様子が手に取るようにわかる。人々は完全に無防備だ。もう子供たちは眠っているのだろう。ある部屋ではパジャマ姿の夫婦がソファーでテレビを見ている。ある部屋では人がベッドに入るところだ。テルアビブの夜は、こんなに平和で安心しきっている。

暗闇でインタビューが続く。「小さな子供が帰宅した父親にかけ寄った瞬間に家族全員を皆殺しにするとき、どう感じましたか。」イスラエル兵士が答える。「ガザにすむパレスチナ人はみな有罪だ。2023年10月7日のハマスによる攻撃に責任がある。ドローン攻撃は、ゲームと同じでターゲットを当てるのが面白くて楽しい。これは軍のシステムで、作戦の一つなので自信をもって行なった。」
「高層ビルはドローンで一つ一つ崩壊させていって最後はガザにビルが1つも無くなるまでやった。」
「食糧配給の列に並ぶ人々を見ていて、列からはみ出る人は次々と銃で狙いうちして殺した。」
「橋を急いで渡って食料を取りに来た人も1人1人殺していった。すると橋のたもとから転げ落ちた死体が、川の横で積み重なっていくんだ。こんな風にね。」と絵に描いて見せてくれる。
女性兵士は言う。「殺したガザの住民はみんなテロリストだ。街で撃ち殺して倒れた死体は、犬が食べる。」
「何人もの人が空爆で死んだあと、怪我人が沢山死にきれずに動いていたので、もう一度同じところを攻撃して、みんなちゃんと殺した。」また別の兵士は、「ぼくがやらなくても、誰かほかの人が同じことをやる。これはそういうシステムなんだから仕方がないんだよ。」1人殺すためにたくさんのNAZAが犠牲になる。「この3年余りの間で、あなたは何人くらいのパレスチナ人を殺しましたか」の質問に、「そう、数千人かな。」と兵士は、よどみなく答える。

さいごのシーン。
建物が爆撃で崩壊し、人々が、がれきの山に埋まった。建物は小学校だったのか、沢山の子供をかかえた大家族ばかりが暮らしていたアパートだったのか。人の頭も体もコンクリートの潰されて動かない。いくつもの小さな子供たちの足だけが並んでいる。頭も体もつぶされて。
これを見て、1時間20分の間、イスラエル兵士たちのインタビューを聞きながら、ずっと我慢していた感情が抑えきれなくなって一気に悲鳴になって、わあーっと、涙が止まらない。前の席の人も肩を震わせていた。フイルムが終了し、監督や関係者の名前が出てきて、音楽が流れて、すっかり終わってしまっても、誰も立ち上がれなかった。