ツアー9日目。 今日はショッピング デイ。京都での自由時間に、伊勢丹でオットのシャツとタイを買ったが、つま先から頭まで身に着ける素敵なものを全部、新宿伊勢丹でそろえてあげるからね、などと約束してしまったものだから、まず伊勢丹、オットの発音では イーセ トゥアンに向かう。ちなみにユニクロは ウニキューエロー、無印はミュジュルシュだ。
ホテル近くのしゃれたコーヒースタンドで、200円のサンドイッチと260円のカフェオーレで朝食を済ませて、いざ、伊勢丹メンズ館へ。地下から7階までメンズばかりをそろえているということだが、行ってみると京都伊勢丹を大きくしただけで、やっぱりブランド品を並べているだけ。だいたいウェスト78センチまでしか置いていないカンスケ ヤマモトとかヨースケなんとかって、何なの。虚弱児専用か。
だいたいオットのサイズが全然ない。キングサイズのコーナーでウェスト90センチまでしかないって、どうよ。LLサイズのシャツも、着られるが、ハラのボタンが閉まらない。
オットは自分サイズが見つからないので、腹立ち紛れに、イーセ トアンには休むソファもないの、と聞く。 そういえば、新宿に来た日、ビッグカメラに行く途中、小田急デパートの婦人服売り場を通り過ぎた時、フロアのコーナーに立派なソファがあって、二人の男が あっちとこっちで口を開けて眠っていたのだ。奥方が服を選んでいる間 待ちくたびれて眠ってしまったのか、何かわからないが、オットはすごく感動していた。競争社会のなかで、特に男社会は厳しいから公共の場で口を開けて眠るなどと言うことは ちょっとシドニーではあり得ないからだ。
何も買わず、前にビデオカメラを買ったビッグカメラまでタクシーで戻って、時計売り場で オットの腕時計を見る。ジャケットが買えなかったので、その程度の値段のスポーツウォッチを買った。係りの人が頼みもしないのに、手際よくきっちり時間を合わせて、時計のベルトも腕に調節してくれて、オットの腕につけてくれる。感動。やっぱり、日本の売り子のサービスの良さは世界一だ。すごいなー。何も言わないのにやってくれるなんて、日本だけだ。
嘘だと思うなら、シドニーのマクドナルドで品物を4つ、注文してみると良い。4つ違うものを頼んで、ちゃんと受け取れたことが無い。チーズバーガーとオレンジジュースMサイズとチョコレートサンデーLサイズとアップルパイを頼んだら、必ずひとつは抜けている。保障しても良い。注文を受けた人が頭が悪い訳ではない。注意力が足りない。客のためにきちんとしたサービスをして、客に喜んでもらおうなどと、ハナから思っていないのだ。注文してもやってくれない国と、何も言わないのにやってくれる国とでは、買い物の満足度が全然ちがう。
ビッグカメラから小田急デパートに下りてきて、背広の下に着られるニットのベストを買う。早稲田色、というか海老茶色。父がいたら、「おう、いい色だなあ。」と言ったはず。
小田急のとなりに大きなユニクロがあったので、オットを店内の椅子に座らせて、自分に合うものを見ようか、と思って探し始めたが、振り返ると、小さな椅子で悄然とひとり待つオットの姿が、哀愁漂わせ、ヒトリキリ、ヒトリキリ、といっているので放って置けず、仕方が無いので昼食に連れ出す。 オットはたった一人、自分をわかってくれる人が居たら サッサと他の友達や人との関係を切ってしまう人だった。それに気がついたときは もう遅かった。結婚してオットに友達と言えるような人がほとんどなく 徹底して非社交的であるのにびっくりした。
西オーストラリアを二人でツアーに加わって旅行したとき、他のカップルはそれぞれが、自然と別のカップルと友達になって食事のときなど勝手にいろんな人と食べていたので、私も一つだけ空いていた席で若いカップルと食べようとしたら、オットは後ろでずっと立っている。ああ そういう人だった、と思い出してあわててオットと二人の席を探した。自分を理解してくれる人以外と関係を持とうとしない。物静かで偏屈。
食べるものも、偏屈で、日本料理は何でも好きです と社交辞令で言うが好きではない。スープもソースのかかったものも、パスタも大嫌い。肉と野菜はコショウで食べ、魚と野菜はレモンで食べる。シチューなど決して食べないし、ソースのかかった肉もダメ、パスタは勿論マカロニが入ったサラダも食べられない。
だから、よしながふみの漫画「きのう何食べた?」に出てくる弁護士、シロさんに招待されても「きのことツナとかぶの葉のパスタ」、「ミネストローネ」「かぶのサラダわさび味」を出されたら、何も食べられないし、「トン汁」、「あじの干物」、「コーンのバターしょうゆ炒め」、「オクラのせピリ辛やっこ」を出されたら食べられるのはアジの干物だけだ。
ルミネの食堂街でオットに食べたいものを選ばせたら、またビールとバーガーだ。ハワイアン何だかの店で、またバーガーを食べる。すっかり重くなったオットを支えて よろよろ歩かせてホテルに帰り、寝かせる。朝から買い物でよく歩いたので、午後はしっかり寝てくれるはず。日本に来て、9日間たっているのに 買い物できたのはオットのものだけ。あと一日しか残っていないのであせる。
一人になると、ほとんど走るような早足で ホテルから東口へ。GAPで自分の服とマゴの子供服、ユニクロで自分と娘達のシャツ、無印でマゴの子供服、大型薬屋で湿布薬や化粧品など、デパ地下で日持ちするお菓子など、デパートで化粧品とマゴの本と玩具、ミニチュアのこいのぼりなど、などを買う。限られた時間しかないのでビュンビュン飛びまわって、良いと思ったら迷わずに買う。買い物袋を持ちきれず、ゼイゼイ息を切らせて、サンタクロースのように大袋をもらって背負い、郵便局に駆け込む。箱を貰って、買ったものをドカドカ入れて、二人の娘あてに送る。一箱に一万円ずつ郵送料がかかるが、仕方が無い。オットを連れて 重いスーツケースを運ぶことが出来ない。とにかく、買いたいと思っていたものを買って、郵送できたので、ほっと安心して、ホテルに戻る。
トドのように、ハラを出して眠っていたオットがちょうど起きてくれた。
夕食は私が食べたいウナギでも、長崎ちゃんぽんでも、皿うどんでも、寿司でも、天丼でも、あんかけうどんでも、天そばでも、ラーメンでもタンメンでもなくて、オットが食べたいというドイツ料理屋に入って、オットはソーセージの盛り合わせ、私はコロッケで乾杯をする。
今日もビールがことさら美味しい。