2012年4月14日土曜日
初めてオットが訪れる京都
「初めて外国人が訪れる日本」ツアーの4日目。
今日は、世界遺産になっている二条城と、金閣寺と、京都御所を巡る日だ。
烏丸通りに面したホテルは見た目が冴えないが、朝食が1100円と、安くで豪華なのが嬉しい。オットは、いつもの通り、シリアルとトースト2枚、果物とジュース。毎日家で食べているものを 日本のホテルで食べて どうして嬉しがっているのだろう。不思議な人だ。私は勿論 白い炊き立ての御飯と味噌汁、のり、漬物各種、玉子焼き、塩鮭の切り身、ゆばと高野豆腐と蕗のたき物、ひじきと油揚げの煮物、おからと鶏肉和え、それと、アサリの佃煮が美味しい。朝食なのにデザートは果物だけでなく、イチゴのババロア、コーヒーゼリー、桃の入ったピンク色のロールケーキまである。全部、味を試してみなければ気が済まない。素晴らしい。このままホテルの食堂で日本の新聞を読みながら ゆっくりまったりして一日過ごしたい。食堂から動きたくない。
でも今日は、快晴で暖かい。食堂の窓から すでに迎えのバスが来ていて、にこやかなガイドに、呼び入れられる。初めての女のガイドさん。ところがツアーが始まってみると、彼女の英語が何を言っているのかわからない。今までのガイドが、とても優秀な方々だったので、その落差が激しい。バスに乗って、いろいろ日本の歴史を説明してくれるのだが、完全なジャパニーズイングリッシュ。ひとつひとつの言葉に 抑揚がなくアクセントの強弱がついていないので、お経をよんでいるようなもの。日本語でもお経を読むように話し掛けられたら、何を言われたか、わからないのと同じだ。イントネーションがない。とたんに、となりのアメリカ人女性が「サッチ ア プア イングリッシュ!!!」(ひどい英語)と、大声で文句を言っていた。勉強してガイドになっただけの人なのだろう。外国人ともっと話をして、会話する楽しさを知ってガイドをやらないと仕事も楽しくないだろう。
しかし、解説なしでも二条城の庭は美しい。二条城は、徳川家康が京都に上ったときに宿所とするために築城されて、後には大政奉還が行われたお城だ。二の丸御殿障壁画を見る為に、靴を脱ぐ。金色に輝く壁に、松や鳥や花々が描かれている。オットは、しかし、愛用のRMウィリアムズ製ブーツを脱ぐのに大騒ぎをしている。小学校にあるような下駄箱に靴を脱いで入れなければならないが、手ごろな椅子がないのであせっている。座らないと脱げない大きな靴をオットの足から引き剥がす為に、二人がかりで脱がせる。私達、かなり、みっともない。
歩けばキュッキュと鳴る鴬張りの廊下の冷たいこと。サウスアフリカで建設技師だったというおじいさんが、ガイド相手に、廊下の下にもぐって、どういう構造で音が鳴るのか、手で触って確かめていた。一緒に廊下にもぐって、見てみたかったが、今度はオットがブーツを履くのを手伝ってやらなければならなくて時間切れ。情けない。
金閣寺は、いつ見ても美しい。
京都御所の桜も見ることが出来た。御所のまわりは玉砂利が敷き詰めてあって歩くのが大変だが、何とかオットは自力で歩いてツアーに付いていく事が出来た。重いカメラを私に持ってもらって、アップアップしながら だけれど。ツアーの後半は、かっこうが良いか悪いかなどに構っていられない。生き延びて ツアーに付いて行く気丈さだけでやっている。
でもこうしてみると、二条城も、金閣も規模が小さい。城の主と関係者が収容できるだけの大きさだ。当時の権力者が権力者のために作ったもの。インドから中国を経て日本に伝わってきた学問としての仏教が、選ばれた者だけのために大切にされ、数々の芸術品で飾られて、宝として伝えられてきた。たった一人の火の不始末で簡単に燃えて消失してしまうような、木造の規模の小さい日本の寺や城というものが 当時の普通の人々にとっては一体何だったのだろうか、と思う。
ヨーロッパの国々を巡ると 各地にある その教会の規模の大きさ、内部の装飾の贅沢さに驚かされる。何百人、何千人が同時にミサを受けられる大規模な教会は石作りで頑丈だ。
壊れやすく、小さくて、精巧な芸術品を守り通してきた日本の芸術性と、ローマや各地に10万人収容できるコロシアムを大理石で作ってしまうヨーロッパ人の芸術性との違いをい改めて認識する。
オットは建築物よりも、美しい庭に興味を示した。数百年も生きて、庭師によって美しい形を保ってきた松などを熱心に眺めていた。木々の成長を止めて、ミニチュアを作る盆栽の技術も、日本独特の美意識の表れだろう。五葉松、山紅葉、楓、梅などの盆栽は、専門家が毎日毎日手入れをして、それを何年も何世代も続けてきた結果だ。生きた芸術を育てることの価値は 掛買いの無いものだろう。
ツアーのバスから京都の街並みを見物するのも楽しい。まだ古い家々が沢山残っている。道を行く角ごとにファミリーマートとローソンがあるのにも驚いた。ツアーが終わって、ホテルの前でバスを降りたら、みんながホテルに入らないで、当たり前にように慣れた足でコンビニに入っていくのには驚いた。一人で旅行している退職したアメリカ人女性は、サンドイッチと安いカルフォルニアワインをつかみ、中年ドイツ人カップルは、ホカホカ肉まんと缶ジュースを抱えて、ホテルに帰っていった。知らない国の知らないレストランでメニュー見て、どんなものが出てくるかドキドキしながら待って食べて、支払いでハラハラするよりは、コンビニ弁当のほうが確かに安心だ。なるほど、、と感心していると、いつの間にか気がつくとオットがもう、サンドイッチと缶ビールを握っていて離さない。ホテルの横に見つけたトンカツ屋で、味噌カツというものを食べてみたかったのに、予定変更。
自分には、おでんも、から揚げもポテトサラダにも未練があったが、冷やしそばと焼き鳥に決断。ホテルで、テレビを見ながらささやかな夕食。チャンネルをCNNにしたのに、アメリカ人のアナウンサーが吹き替えの日本語を話しているのに仰天するオットを大いに笑う。
長い一日だった。今夜も、冷えたビールが美味しい。