2011年1月5日水曜日

映画 「ラブ & ドラッグ」




映画「LOVE & OTHER DRUGS」、邦題「ラブ&ドラッグ」を観た。新作アメリカ映画。

監督:エドワード ズウィック
キヤスト
マギー:アン ハースウェイ
ジェイミー:ジェイク ギーレンホール

http://www.loveandotherdrugsthemovie.com/

ストーリーは
ジェレミーは 製薬会社のセールスマンで口が立つ。口八丁手八丁で 売り込みの為ならば 顧客とベッドを共にするくらい お手の物。プレイボーイで甘い顔立ちだから、まず相手を惹き付けてから強引に売りつける。セールスに マナーも倫理も道理もない。薬の副作用で自殺者が出たり 症状が悪化する人が出てきても そんなこと かまっていられない。とにかく売って売って売りまくる。売り上げを記録して 自分が住んでいる街からシカゴに栄転できることが望みだ。

ある日 クリニックで 受診してきた美しい患者マギーに出会う。互いに良い印象を持ったあと、偶然 二度目にカフェで会った時、マギーは 「欲しいものは すぐに手に入れなければ、、」とジェレミーに言い、二人は迷うことなくそのままベッドに一直線。二人の波長はぴったり合って、そのまま二人は恋人になってしまう。
マギーは ウェイトレスや老人ホームの世話係をしながら、写真を撮っていた。絵を描き 写真を編集するマギーに魅かれながら ジェレミーの セールスマンとしての 過酷な競争が続く。

マギーは若年性パーキンソン氏病に罹患していたのだった。手先が震え 写真の編集や細かい手先の仕事ができなくなっていく。あせって苦しむマギーを かまってやる余裕がジェレミーにはない。 そうしているうちに、ジェレミーの会社が バイアグラを開発して これがヒットした。ジェレミーはこれを売りに売り、セールスの成績を上げる。
一方、マギーはパーキンソン氏病の患者の会に足を運んで パーキンソンで苦しむのは自分だけではないとことを知って、勇気をもつ。しかしジェレミーは 同じ会で、重症のパーキンソン氏病患者を妻に持つ男から 日々顔の表情が変わっていって、顔の表情が失われ、笑うこともなくなった妻を介護する苦労話を聞かされて、ショックを受ける。マギーにそんな状態になって欲しくない。居ても発ってもいられなくなって ジェレミーはマギーを連れて パーキンソン氏病の専門医を求めて脳神経科病院を訪ね歩く。

しかしマギーを治療できる病院はない。いきり立つジェレミーに向かって マギーは 一方的に別れを告げる。ジェレミーの 何故別れるのか と問うジェレミーに向かって マギーはただ沈黙を守るだけ。
ジェレミーの長年の夢だった シカゴへの転勤が決まった。引越しのための荷物を片付けているうちに、ジェレミーがマギーと幸せだった頃のヴィデオが出てくる。ヴィデオでマギーは 二人が出会ったときと同じ事を言っていた。「今欲しいのなら 今手に入れないと手に入らない。」
それを見て ジェレミーは 進行性の病気を抱えたマギーの絶望と、心の苦しみを知る。また、自分の病気のために ジェレミーを苦しめないように 別れたマギーの愛情の深さを知る。ジェレミーは 狂ったようにマギーを追いかけていって、、、。
というお話。

ジェイク ギレンホールもアン ハースウェイも全裸シーンがたくさん出てきて ベッドシーンの てんこ盛りの映画だ。
お姫様役とか知的な女性の役ばかりだったアン ハースウェイの女優としての新しい役柄だが、これがとても良い。何をしても品があって、可愛い。
この映画、笑いあり ベッドシーンあり、楽しくてコミカル ロマンチック映画と思ったら これは違う。製薬会社と医師たちとの癒着。製薬会社の卑劣な売り込み、汚職と収賄の汚い面を映し出す社会派映画ということも出来るし、若年性パーキンソン氏病という進行性の病気を持った女性の純愛物語ということもできる。
なかなか見ごたえのある映画だ。

この映画、「男の世話になりたくないから 愛するゆえに身を引く」という日本では成立する美談、、、そんなの 絶対通じないアメリカで 成立させた意味は大きい。ジェレミーの「人のことなんて この年になるまで考えたことがなかった。本当に人のことを思いやるっていことを 君から教わったよ。」と最後に語るジェレミーの言葉に嘘はない。
自己主張ばかり強い個人が育つ 個人主義の国アメリカ。自分が大声を張り上げて主張することなしに、仕事もパートナーも何も 得られない競争社会。年一度のクリスマスデイナーで 両親を中心にテーブルを囲む席でさえ、兄弟が感情をむき出しにして怒鳴り合い 主張しわめきたてるジェイミーの家庭。一人前のセールスマンになるための文字通り血を吐くような訓練。バイアグラの出現に湧く製薬会社に群がる男たちの滑稽さ。
病んだアメリカ社会で生存競争を走り続ける男 ジェレミーと 回復することのない病をもったマギーとのコンビネーションが「いま」をよく映し出していて良い。

パーキンソン氏病に完全治癒はない。日々進行していき、日常生活に支障をきたし、次第に稼動範囲が狭くなっていく。食事も排泄も自分ひとりでは できなくなる。にも関わらず 脳は正常だから自分の陥っている状況が自分でわかる。つらい。
癌は進行して最終的には脳に転移して自分のことがわからなくなったり、痛みを止めるモルヒネなどの効果で 意識は混沌となる。肝硬変も脳の細胞が侵されて自分の状況がわからなくなる。年寄りの認知症やアルツハイマーも 脳の萎縮によって 自分の陥っている状況が よくわからなくなる。
それらに比べて、パーキンソン氏病は体が動けなくなっても脳が正常であるから その悲しさは 想像を超える。
マギーがジェレミーに別れを告げる思いやりにも、それに答えるジェレミーにも涙を誘われた。かるーい映画ではない。
でも 楽しくて笑えるシーンも たくさんある。