2010年6月23日水曜日

映画「瞳の奥の秘密」



アルゼンチン映画 原題「EL SECRETO DE SUS OJOS 」、英題「SECRET IN THEIR EYES」を観た。
監督:ジュアン ホセ カンパネラ
キャスト:リカルド ダリン、ソレダー ヴィリャミル、パブロ ラゴ。
第82回アカデミー賞 外国映画賞受賞作。
カテゴリーはサスペンス。133分。

ストーリーは
ブエノスアイレスの郊外、1970年代。結婚したばかりの若く美しい女性が乱暴され 残忍な殺され方をして発見された。同じ時間にアパートに、改築工事に来ていた二人の外国移民が逮捕された。
裁判所刑事ベンジャミンと、相棒パブロは 早速逮捕された犯人たちに会いに行く。犯人とされた彼らが 警察の自白強要によって犯人に仕立て上げられたことが明らかだった。しかし、警察が突き出した 移民たちを助ける為には 真犯人を逮捕しなければならない。警察は協力をしない。裁判所刑事達の捜査は行き詰まる。
ベンジャミンの上司、アイリーンは警察から出された証拠をもとに 判決を下し、事件を一件落着せざるを得なかった。

納得のいかないベンジャミンとパブロ、そして殺された被害者の夫、リカルドは必死で真犯人を捜し求める。
妻は殺される前に、アパートのドアを自分で開けた。犯人は知り合いだったに違いない。過去の写真や記録を洗い流し、3人は真犯人が 妻の昔の幼馴染 ゴメスをいう名の男だったことを突き止める。すでに 判決が下りてしまった事件の捜査は困難をきわめる。真犯人を捕らえるために、夫リカルドは仕事を辞めて 毎日駅に張り込みを続ける。その真剣な姿を見て ベンジャミンとパブロは 執念で、何度も上司、アイリーンに再審査を要求する。そして、彼らは、遂に真犯人の逮捕に成功した。裁判の再審を経て、犯人は刑務所に送られる。

喜びもつかの間、テレビニュースを見ていたベンジャミンは、実刑となり刑期を務めているはずの 殺人犯ゴメスが、ブエノスアイレスで、要人の護衛をしている姿を見て驚愕する。こともあろうに この殺人犯は銃を与えられて ガードマンとして雇われているのだった。警察上部の職務特権で決められたことなので、地方都市にいるベンジャミンたちには どうすることもできない。妻を殺されたリカルドとともに、歯噛みをするしかないのだった。
パブロが 耐え切れず酔って ブエノスアイレス警察と争いを起こした。その夜パブロはベンジャミンに間違われて プロの殺し屋に殺される。身の安全のために、ベンジャミンは仕事を辞めて、地方に逃れるしかなかった。そのためベンジャミンは 上司のアイリーンに恋心を持ったまま去っていった。

25年たった。
ベンジャミンは 25年前のこの未解決事件について 書き溜めたものを 本にまとめようと心に決めて、もとの職場にもどってくる。美しい上司アイリーンは 今は裁判長だ。会えば 昔の恋心が よみがえる。
ベンジャミンは すでに辺鄙な田舎に引っ越しているという被害者の夫リカルドに会いに行く。リカルドは荒れ果てた田舎屋にひとり住んでいた。その後、再婚することも無く、居間には若くして亡くなった 25年前の妻の写真だけが飾ってある。
リカルドの不審な様子、、、そして ベンジャミンはリカルドの秘密を知ってしまう。リカルドは、毎日一回だけ、水とパンのかけらを持って 離れの小屋に、行く。その先には、変わり果てた殺人犯が、、、。
というお話。

ベンジャミンを演じているのは、アルゼンチンで一番人気のある俳優、日本で言えば高倉健みたいな、または、渡辺謙、または浅野忠信のような人。とくにハンサムではないが、存在感がある。

133分と、長い割りには 内容が詰まっているわけではない。冗漫だ。ベンジャミンとアイリーン、25年前 互いに抱いていた恋心、かなわなかった恋が人生の終盤で再燃する。25年前の駅での別れのシーン、列車が動き出し、走り去る列車を追う女、、、。情景がセンチメンタルすぎて この同じシーンを繰り返されると もう、ベンジャミンが 笠智衆の顔に見えてくる。
カメラテクニック、自然描写、物語の流れの編集テクニックなど、すべてについて キレがない。全く持って、洗練されていなくてダサい。これが、アルゼンチン映画か。
無駄なシーンなど ひとつとしてないクリント イーストウッド監督の作品などに比べて そんな無駄ばかりのアルゼンチン映画がかえって ローカルなところが評価されて 外国映画賞を受賞したのかもしれない。

しかし、罪と罰という人間社会の永遠のテーマに触れている。
25年前の未解決事件を、どう自分なりに解決にもっていくか、ベンジャミンは事実を書き残すことによって 自分なりの結論を出したいと思った。 アイリーンは25年間待って いま やっとベンジャミンをとりもどした。
そして被害者の夫リカルドは 法で罰することが出来なかった殺人犯を自分で捕らえ罰することで、復讐を果たした。3人3様の これが 25年間の生き方だった。罪を問われなかった殺人犯を罰することが出来るのは 被害者を失って嘆く身内だけだ。リカルドは、生かさず殺さず 加害者を苦しめることで、きっぱり落とし前をつけた。

しょせん、人生は自己満足だ。自分が満足できる生き方をするしかない。他人がどう言おうが 法がどのように裁こうか、社会がどう判断しようか、自分が裁き、判断して生きることが 幸せなことにちがいない。
殺された妻は 夫に復讐して欲しいと願いながら 死んでいったかもしれない。でも、25年間 復讐し続けることを 望んだだろうか。案外、1年たったら、忘れて、夫に別の人生を歩んでいってもらいたい と思うのではないだろうか。夫を愛する妻として。