2009年11月8日日曜日

映画「ドクター パルナサスの鏡」



映画「THE IMAGINATION OF DR PARNASSUS」邦題「ドクター パルナサスの鏡」を観た。

これが本当に本当のヒース レジャーの最後の映画。この映画を撮影中だった昨年1月に、彼はたった28歳で亡くなってしまった。役柄に熱中するあまり頭が冴えてしまって そんなにも眠れない日々が続いていたのか。ヒースは眠る為に 睡眠薬と鎮静剤と鎮痛薬を服用したために、呼吸が抑制されて 深い眠りに落ちたまま彼は死んでしまった。役者として大輪の花が開花する間際だったのに。本当に突然の事故死が惜しまれる。
死後、「バットマン ダークナイト」のジョーカーの役でアカデミー助演男優賞を授与された。遅すぎた受賞。どうして「ブロークバック マウンテン」でアカデミー賞をあげなかったのだろう。

ヒースの死後、主役のいなくなった この映画を完成させるために ヒースの親友だった3人の俳優が彼の代役を演じてヒースの念願だった映画を完成させた。その3人の親友の名を聞いて 驚かない人はいないだろう。ジョニー デップと、ジュード ロウと、コリン フェレルの3人。なんという 潔い男気。なんと気持ちの良い男の友情だろう。ヒースよりも、知名度の高い、ヒースよりも年長で 映画経験の長い 多忙を極めている役者達が ヒースの代役を演じて映画を完成させた。
映画は今年のカンヌ映画祭で好評を得たそうだ。 それだけでも、監督は喜ばなければならないだろう。

イギリス映画。2時間20分。
監督:テリー ギリアム
出演
トニー:ヒース レジャー
    ジョニー デップ
    ジュード ロウ
    コリン フェレル
パルマサス博士:クリストファー パルマー
バレンシア:リリー コール

監督は、もとモンテイ パイソンというコメデイーシリーズで、名をあげた人だ。この監督、一時「ハリーポッター」の監督候補だったそうだが、ワーナーブラザーズが 大金をかけた大作を監督させるには 危険すぎる、彼がやれば大成功か世紀の大失敗に分かれるだろう という理由で下されたという。もともとアナーキーなユーモアをみせる過激派監督なのだ。

この映画の設定は 現在のロンドンで、繰り広げられる空想上のお話だ。不死身のパルナサス博士は1000歳。ロンドンの街を芝居小屋で見世物をしながら旅をしている。美しい15歳の娘バレンシア(リリー コール)と、役者アントンと 小人のパーシーの4人の一行だ。アントンが古代ローマ兵の姿で観客を集めて回る。移動舞台の中央には巨大な鏡がある。魔法のマジックミラーだ。パルナサス博士が 半覚醒状態になると お金を払って この鏡を通ったお客は その人が一番夢見ていた世界に入ることが出来る。パルナサス博士は魔法の力があるので 人の夢を読んで その夢をマジックミラーのなかで体験させてあげることが出来るのだ。
うさんくさいが 商売はまずまず。

ある夜 一行は橋のしたで首をつって殺された男を その縄を引き上げて救命する。生き返った男の名は トニー(ヒース レジャー)。15歳の美少女、パルナサス博士の娘は 1000歳の父、アントンと小人のパーシーとの狭い小屋での窮屈な生活に飽き飽きしていたから すぐにハンサムなトニーに興味を示す。
トニーは 子供のための募金事業家だと言っているが 実は募金をだまし取る詐欺師だった。行き場のないトニーは 命を助けてくれた博士たちを手伝うことになる。弁舌巧みに、仮面を被って 沢山の女客を獲得してはマジックミラーのなかに、送り出していく。  

パルナサス博士は 実は娘が生まれる前に、悪魔と賭けをした。女というものは欲望の塊だ。もし5人の女から欲望を取り去って無欲にさせることができたら 賭けは博士の勝ち。しかし、できなかったら娘が16歳になったときに 悪魔にくれてやる、という賭けだ。もうじき16歳の誕生日を迎える娘を 引き止めておくために、博士は必死で女客をマジックミラーに送り込んでいた。

トニーは有閑マダムを鏡のなかに送り込んで 自分も請われて同行する。すると顔が変わってしまって、ジョニー デップになっている。有閑マダムはマジックミラーの中で トニーと素晴らしい体験をして無欲になって帰ってくる。

次に博士の娘バレンシアを鑑の送り込んだトニーは 今度ジュード ロウの顔になっている。鏡の中で トニーとバレンシアは恋に陥り 美しい湖畔のボートで愛し合う。

その次にトニーは自分を殺そうとした男達に会って追われマジックミラーの中に 入っていく。ここで彼はコリン フェレルになっている。何度も男達から逃れたと思っていたが 結局は捉えられて再び首を吊られて死んでしまう。

悪魔が 16歳になったバレンシアを 迎えに来る。しかし彼女はすでに処女ではないので 悪魔には手がつけられないのだった。
時がたち、娘もアントンもパーシーも去り、一人寂しくパルナサス博士は街をさすらい歩いている。石畳をさっそうと歩いていく娘バレンシアをみかけた博士は必死で後をつけていく。娘が入っていった家でバレンシアが夫と子供の囲まれて幸せそうにしている姿を 窓越しに見て 博士は うっとりし合わせな気持ちに浸るのだった。
というお話。なんだかよくわからないが、解釈はどうぞご自由に というわけだ。人気のファッションモデル リリー コールがバレンシアを演じていて、彼女がものすごく美しい。

ヒースの親友が友情出演して、ヒースが望んだだろう映画の完成が果たせたというだけで、胸があつくなる。映画の出来は クエスチョンマークだが、ヒースの最後の仕事が見られて 良かった。
これで彼の出演した映画はみんな見たことになる。
そして、この先はもう何もない。本当に、本当に これが最後の映画だったんだ。なんか かなしくなる。