2007年10月2日火曜日

映画 「ラッシュアワー」


終末医療に従事している私の仕事に希望はない。1日をベッドで過ごす患者達に笑いはない。今日、一日、なにか生きていることが嬉しくなるような喜びが見出せるように、、、きょうは特別 風が生暖かいとか、空が一段と高くなったようだとか、出回り始めたぶどうがおいしいとか、赤ちゃんの声でさえずっていたヒナの声が大人になってきたとか、窓から蝶がとびこんできたとか、そんなつまらないことでも患者と一緒に笑えるように接している。笑いは 人になくてはならないものだ。

人を笑わせるために作られた映画「ラッシュアワー3」を観た。各ホイッツ映画館で上映中。ブルースウィルスの「ダイハード4」でも54歳の活躍ぶりに感心したが ジャッキーチェンの若さにも吃驚。ジャッキーチェンと、クリスタッカーのコンビ 3作目。 

彼の映画に筋立てと言った筋もないのだけれど。 中国大使のボデイーガードとしてジャッキーチェンはロスにやってきた。弟分のクリス タッカーとは4年ぶりの再会。中国を根城にした国際犯罪組織について、大使が国際会議で重大発表をしようとした矢先 大使は狙撃され銃弾に倒れる。美しい大使の娘に頼まれてジャッキーとクリスは、この犯罪組織を解明し、事件を解決することになる。追うジャッキーとクリスのアクション。ここまでやるか?と思う派手な追いつ追われつが、本当はものすごく危険なアクションとわかっていて、笑わずにはいられない。

逃げ遅れたギャングの一人を捕まえて 組織のボスの名前を白状させるんだけど、相手はフランス語しか話さない。急遽 来てもらった通訳はフランス人修道女。ジャッキーの方もギャングのほうも 汚い言葉の応酬と罵りあいばかりで、通訳に四苦八苦する。ここがすごく笑える。笑いすぎておなかの皮が痛くなること請け合い。

悪の本拠がパリとわかり、二人してパリに向かうが、着いたとたん出迎えるパリ警察庁署長が、あの、映画監督のロマン ポランスキー(ROMAN POLANSKI)。ここで、また、知ってる人は 大笑い。本当の彼は、未成年の子と関係を持った疑いで告訴されており、華々しい監督としてのキャリアを捨ててアメリカから逃亡中。 組織のボスが パリのキャバレーの踊り子とわかり、舞台で歌い踊りながらギャングとの たちまわり、狙撃を回避するためのカムフラージュなのに、キャバレのお客たちは大はしゃぎで、笑いっぱなし。

日本人俳優のサナダヒロユキ(どういう漢字かわからない)と、工藤という(下の名が思い出せない)女優の立ち回りもすごい。刀や短刀を持っての早い立ち回りは ゆっくりやってフイルムを早く回しているのだろうか、それにしても、すごい迫力。家具が50個くらい壊れて、ガラス窓が100枚くらい割れる。何人ものギャングをぶちのめして 戦う相手がみな延びているのを見て 人質の大使の娘がエッフェル塔からつるされているのも忘れて、思わず踊りだしてしまうクリスにも、笑い。アメリカ人嫌いのパリタクシーの運転手も、いかにも こんな人いそうですごくおかしい。

もっと、すごいのは、エッフェル塔でのたちまわり。夜空にそびえるエッフェル塔で、刀をもっての決闘シーンは すごく怖くて すごく笑える。よくフランス政府がこんな危険なシーンの撮影を許可したと、感心。見下ろせば人が豆粒ほどの大きさにしか見えない高さで 幅50センチほどの鉄筋を滑り降りたり、バランスをとりながら日本刀で切りあうシーンなど、カメラの特殊効果もあるだろうが、全部、ジャッキーはスタントマンなしで演じたそうだ。こんなこと、他の俳優がやったら、何人死人がでるかわからない。それでいて、笑わせるサービス精神を忘れない。2時間弱のこの映画で、5分おきには笑っていた。ときとして怖くておかしくて、悲鳴をあげながら笑ってたと思う。

ジャッキーチェン、本当にすごい人だ。徹底した役者。いくつ命があっても足りない。映画を、単なるエンタテイメントとして捉ええるならば、ここまでお金をかけて人を本当に笑わせ楽しませて本望だろう。