FIFAウィメンズワールドカップが終了し、スペインが優勝した。チーム総勢が優勝カップを受け取る授賞式前に、ルイス ルピアレスFIFAスペイン会長が、試合で1点を入れたチームキャプテン、ジェニー エルモソの口にキスをしたことで、チームが怒っている。チームだけでなく、怒りは瞬く間に世界中に広がり、女たちは怒り心頭に達して、会長辞任を要求する動きになった。会長はチームから非難されても、「俺は悪くない。キスは同意の上だ。絶対辞任しない。」と言い張っている。キスされたエルモソは、同意などしていない。キスされたことは不愉快なことだった、と言っている。
このようなスキャンダルが起きたのに、FIFAは情けないことに会長をやめさせる規定も権威もない。怒ったチームは、全員がナショナルチームから脱退する、今後、予定されている試合も全部放棄する、と声明を出し、男子FIFAナショナルチームも同様の声明を発表した。米国、スウェーデン、スイスなどEUのチームも共感して、会長の辞任を要求している。ルピアレス会長の母親は、息子が沢山の人によって公正に扱われていないと、抗議して教会でハンガーストライキに入った。50過ぎた息子のために、親馬鹿もいい加減にしてもらいたい。
スポーツにABUSE(権力乱用、虐待)とSEXUAL ASSAULT(性的強襲)は、あってはならない。女性をリスペクト(尊重)する気持ちがあれば、同意なしに、相手が望んでいないのに人の体を触ったり、抱いたりキスしたりして良い訳がない。スポーツでぶつかり合ったりスクラムを組んだり、チームを励ますために肩をたたいたりすることと、スポーツ以外の場で他人の体に触れる事とは全く別のことだ。夫でも息子でも恋人でもない、赤の他人に同意なしにキスをしたことは、相手の尊重する気がないから起きたことで、ABUSE 以外の何物でもない。日本でも刑法改正で、同意のない性的行為を犯罪として訴えることができるようになったことは正しい。
満員電車で他人の体を押し付けたり押されたりすることに驚かない日本の習慣は、他国では通用しない。親子で一緒の風呂に入るなど、とんでもない。話をしていて同意を求めて平気で相手の肩をたたいたり、冗談ついでに相手の腕に触れたり、ゆすったりする人がいるが、インドで既婚女性にそれをやったら石投げ私刑に会うし、アメリカでは撃ち殺される。普通、子供がテイーンになれば男の子も女の子も、親はそれぞれのプライバシーを尊重して体に触れたりしないし、離れて成長を見守る。1個の個人として尊重し、礼儀を守るという社会的規範を守る。
シドニーで医療通訳として登録しているので、夜間でも救急病院に日本人が担ぎ込まれると呼び出されることがある。若い日本人が3人のマオリのガードマンに暴行され瀕死の状態で横たわっていたことがある。バーで酔って、踊り終わったストリッパーに触ったことで、ガードマンに殴る蹴るの暴行を受けた。ガードマンが悪いだろうか?否、ストリッパーならいいだろう、と無遠慮に女性を玩具のように触った日本人が、踊り子を侮辱した刑法にふれたのだ。高校生であろうと、ストリッパーであろうと、娼婦であろうと、相手が望んでいないのに体に触ったり、性的な言葉で中傷したり、何らかの性的行動に出たら、それは性的虐待であり犯罪になるのだ。
リスペクトされなかった女は怒る。
大学では、ペン1本で世界中を駆け巡るジャーナリストになりたくてマスコミュニケーション学科で学んだ。就職先の業界紙で書かせてもらって嬉しがっていたら、気が付いたら連れ込み宿に居て当たり前のように前に社長が座っていた。当時の私は、女はナースか幼稚園の保母か娼婦しか職業の選択肢がないのか、と怒って叫びまわっていた。日本の女には戦前、選挙権さえなかった。戦後進駐軍による配慮で初めて女性に参政権が与えられたのだ。
リスペクトされない女は怒る。
今でも男女不平等で、職業上意思決定権が少なくて世界146カ国中、日本は116位。わずかな国会議員数。同じ職業に就いているのに年平均収入が男の70%しかないのは、どういうからくりなのか。
女は怒る。
オーストラリアでは今年になってから、81000人の女性がパートナーによって殺された。1週間に1人以上。男の言うことを聞かない女は殺されて当たり前か? 暴力によってしか女性を納得させることができないオツムの軽い卑怯者に殺された女性の口惜しさ。
勝ち抜いて世界一になったFIFAスペインチームは、チームリーダーがルビアレス氏に、ABUSE されたことで世界中の女性の怒りを一身に浴びている。彼がどんなに意地を張っても、法的手段にでても、いつまでも今の地位に踏みとどまっていることを許してはならない。
レオナルド コーヘンの「ハレルヤ」を歌ってみた。
I am singing [ HALLELUJAH ] by LEONARD COHEN.