2012年6月14日木曜日
イングリッシュ ナショナルバレエ公演
イングリッシュ ナショナル バレエ公演を観た。
シドニー中心からハーバーブリッジを越えた北部に住んでいるが、近所のチャッツウッドに、新しい公会堂ができた。その杮落としに、イギリスからはるばるバレエ団が呼ばれたというわけだ。500席しかない新しい劇場は、大学の階段教室みたいだが、どの席からも舞台が近くて、バレエを観るには丁度良いサイズの劇場だ。
このバレエ団はロンドンを拠点に活動しているバレエ団で、60年の歴史をもつ。現在60人あまりのダンサーを抱えていて、ストリートダンサーと共演したり、現代音楽に挑戦したり、バレエ学校を開催したり、活発に活動しているようだ。芸術監督は、ロイヤルバレエのプリンシパルだった スペイン人のタマラ ロホになったという記載があったが、今回来豪したグループの芸術監督は、ウェイン イーグリングというカナダ人だ。この人は ロイヤルバレエ団で30年あまり踊っていた人でロイヤルバレエのあと、オランダ国立バレエ団の監督を10年ほどしていた人。今回シドニーに来た踊り子は、22人。
プログラム
1)アポロ:ストラビンスキー作曲
2)マノン:マーテイン イェッ編曲
3)ブラックスワン:チャイコフスキー作曲
4)ドンキホーテ :ルドウィグ ミンクス作曲
5)スーツ エ ブランク :エドアルド ラロ作曲
プリンシパルは ダリア クリメトバ(チェコ共和国出身)と、エレノア グルデシドス(ジョージア出身)。男性プリンシパルは ドミトリ グルゾフ(ロシア)とアナオール ベルガス(キューバ)。ソロイストに バデイム ムンタギロフ(ロシア)、アナエス シャレンダート(フランス)、アデラ ラミレズ(スペイン)、ファビアン レイマール(オーストリア)、ヨナ アコスタ(キューバ)、ローレント リタルド(フランス)、マックス ウェストウェル(イギリス)、ジア ザン グ(中国)、アンジェラ ウッド(USA),ヴィッター メンデス双子の兄弟(ブラジル)、テオ ダブレル(イギリス)、これに日本人が4人、ケイ アカホシさん、センリ コウさん、シオリ カセさんとケン サルハシ君。
興味深いのは イングリッシュ ナショナルバレエ団なのに、英国人が二人しか居ないこと。監督もカナダ人だし 団員の国籍が11カ国。バレエ団全体では団員の国籍が、20カ国を越えるそうだ。監督は、メデイアのインタビューに答えて、「最高のダンサーを揃えてきたら、結果としてイギリス人だけでなく外国出身者が多くなっただけだ」と答えている。日本出身のバレエダンサーは、どこの国でも、とても活躍している。オーストラリアバレエ団にも日本人が数人レギュラーメンバーになって踊っている。
若手のバレエダンサーの登竜門といわれるローザンヌ国際バレエコンクールで 今年1位になったのも、菅井円加(まどか)さんという神奈川出身の日本人だ。クラシック部門でも、現代舞踊の部でも 抜群の音感のよさで、審査員達を感心させたという、17歳。頼もしい。
バレエを観ていると 昔のバレエと違って、テクニックが上がってきて アクロバット並みのバランスや、跳躍力を見せてくれる。それに、昔の舞台では余り要求されなかった顔の表情、物語を表現する表現力が加わって とても、パフォーマンスそのものが、難しくなってきている気がする。それだけでもプロとして、大変なのに、どの国でも政府の助成金が 充分得られず、芸術愛好家によるスポンサーシップも減ってきている。悲しいことだ。
ロイヤルバレエでも、アルバートホールの5000席がすべて お客で埋まっても、パフォーマンスにかかる費用の40%にしかならないという。60%は 政府の助成金で 辛うじて公演を続けているのだ。
プロのダンサー達が それぞれのバレエ団に所属して きちんとした給料が受け取れるようにならなければ 質の高いパフォーマンスはできない。
舞台の硬い床をカタカタ、乾いた音でトウシューズが舞うときの音が好きだ。ジャンプした踊り子が コトリと着地する時の音も好きだ。今回のダンサーたちは、みな素晴らしかった。 芸術で生きていくのは大変、、、と子供のときから沢山の人に言われながらヴァイオリンを弾いてきた。それだけに素晴らしい歌い手、夢のような美しい踊り子、立派なパフォーマーには、本当に心を込めて拍手せずにはいられない。