原題:「DELICACY」
原作:デビッド フォーンキノス
キャスト
ナタリー:オードリー タウトウ
マルコス:フランシス ダミアンズ
テーマソング:エミル サイモン「フランキーナイト」
ストーリーは
パリで出会い、愛し合い結婚したばかりのナタリーは、幸せの絶頂にいたときに、その愛する夫を交通事故で失くす。それ以降、ナタリーは まわりの人々に心を閉ざしたまま、仕事に熱中して時を過ごしている。職場では 皆から仕事の鬼と呼ばれ、嫌がられている。上司はこのときとばかり、妻子がありながら,ナタリーを誘ってものにしようと口説くが、ナタリーの防護壁は厚く 全く歯が立たない。ナタリーは仕事がすべて、、、それで、何年かが過ぎていった。
そんなナタリーが何とスキャンダラスなことに 突然職場で部下にあたるスウェーデン人の全く冴えないマルコスという男に、自分から近付いていって、激しいキスをした。マルコスも、前からあこがれていたナタリーに突然キスされて、嬉しくて嬉しくて有頂天。職場では、噂が噂を呼んで 大騒ぎになってしまう。ところが、当人ナタリーは、自分が他人にキスをしたことも、マルコスとのやりとりも何も記憶にない。マルコスに問い詰められて、
「私がもし、あなたにキスをしたならば、謝罪します。それは適切な行為ではありませんでした。」と、まったく素っ気無い。納得できないのはマルコスだ。彼はナタリーにすっかり恋をしてしまったのだ。しかし、この冴えない 禿げかかってくたびれた独身男、、、果たして、ナタリーの心を摑むことができるのだろうか、、、。
というお話。
オードリー タウトウが主演でなければ、全く観るに値しない映画だったろう。タウトウの、いつまでも大人になりきれないような、か細い首、少女のような体つき、いつも真剣な眼差し、大きな目、頼りない仕草、、、。独特の雰囲気を持っていて、他の女優に真似できない。映画「アメリー」で、大ブレイクした女優だが、何年たっても彼女は、アメリーのままだ。アメリーがタウトウで、タウトウがアメリーのよう、どちらが本物かわからない。
ここち良い音楽と、美しいパリの情景ばかり。夫を失くした女の心の情景が映し出される。何事も起きない。大した会話もない。ストーリーもドラマも起きない。ただ、美しい景色を背景に、タウトウが歩いたり、運転したり、立ち止まったりするだけだ。それだけで絵になっている。いかにもフランス映画だ。
ストーリーやドラマを求めている人には物足りないし、何を言いたいのか よくわからない映画だった、ということになる。
雨上がりのパリの夜。歩道に街の光が照らされて、二人して歩いてくる恋人たちがいる。突然、男がひざまずいて、女の薬指にリングを差し入れて、「結婚しよう」と言う。そのリングは 男の住むアパートのキーホルダーのリングなのだけれど、、。大写しになる オードリー タウトウの驚いて、男を真剣に見つめる顔、、、。このシーンが とても切なくて美しくて忘れられない。
フランステイストの、トリュフォーの映画みたい。 観ていてとても 心地よい。