2008年8月25日月曜日

映画 「96時間」(「TAKEN)」



新作映画 「TAKEN 」(邦題「96時間」)を観た。92分。
監督:LUK BESSON
主演:ブライアン:ライアン ネーソン
        キム:マギー グレイス
ハリウッド アクションスリラー映画。
暴力満載。
ストーリーは、
カルフォル二アでは18歳以下の子供が海外旅行するためには、両親の承諾書が要る。キム(MAGGIE GRACE)は高校を卒業して18歳になったばかりだが、親友と二人でパリを始発点にヨーロッパ旅行を計画している。母親も、再婚した大富豪の養父も キムには やりたいことは何でもさせてやりたいと思っている。 しかし本当の父親、ブライトン(LIAN NEESON)が、なかなか承諾書にサインしてくれない。彼は 警備会社で働いている。元は、CIAのエイジェントだった。テロ対策専門のエイジェントで、テロ予防のために特殊技術を使っていたため、敵もいる。娘の海外旅行が心配で 気安く娘の旅行に行っておいで とは言えないでいる。そんなブライトンに元妻もキムも怒っている。しかし、娘の度重なる懇願に 頑固なブライトンも とうとう折れて 携帯電話を娘に渡して 必ず毎晩電話をするように約束させて、送り出してやる。

キムと親友は 両親の許可がおりて おおはしゃぎでパリに向かう。パリの滞在先は親友の親戚の家のはずだが、その親戚は休暇旅行中で、二人だけで勝手気ままに使えるアパートだ。親友は両親から首尾よく離れられてパリで思い切り羽を伸ばして遊びたいと思っている。空港に着いて タクシーを待つ間、ハンサムな青年に タクシー代を倹約する為に相乗りしないかと誘われて 二人とも勿論OKだ。 娘からの電話を待っているブライトンは 待ちくたびれて 深夜娘に電話をする。その娘と話している最中 4人の男達が親友を連れ去っていく。父親はうろたえる娘の事態を 即座に飲み込んで、キムにベットの下に隠れるよう指示し、仮に賊に連れて行かれても携帯電話を身から離さないように、、また 必ず見つけ出して助けに行くから、と約束する。しかし、賊は キムをベッドの下から引きずり出し 携帯電話を踏み潰して彼女を誘拐していく。

このグループは 若い女性旅行者を誘拐して性奴隷として人身売買するアラブの犯罪組織だった。娘が売り飛ばされて中東に送られるまで3日しかない。ブライアンは ただちにパリに向かい、娘達が連れ去られたアパートに忍び込み 娘達の足跡を追って、、、。 という おはなし。 56歳のライアン ネーソンが、たった一人で 大きな犯罪組織と戦う。もとCIAエージェントでなければ 絶対不可能な頭脳戦と 肉体的にも激しい暴力戦の連続。「ダイハード4」のブルース ウィルスも娘を人質にとられて奪いかえす ものすごい暴力と、戦車、ヘリコプター、戦闘機まで動員してのオンパレードだったけれど、彼はまがりなりにも警察官、、、やりすぎても警察の後ろ盾があった。しかし、こんどのブライアンはただの市民であり パリという外国で 誰一人頼れる人のない中での孤独な戦いだ。ブライアンの役は、「シンドラーのリスト」「バットマン ビギンズ」などの役者。一種 虚無的な顔が とてもこの役にはまっている。笑い顔や平和なシーンにこの人ほど似合わない人は いないのではないか。

パリ郊外の巨大な建築現場で、急ごしらえのテントのアパートを造った売春宿で 誘拐され、麻薬を打たれ続けて抵抗も逃亡もできなくなった年若い娘達が売春させられている。また秘密カジノで 一人一人裸の娘達がバイヤーのオークションにかけられて、2千万円とか3千万円とかで取引されている様子は 衝撃的だが、かなり本当の話だろう。 世界中から 旅行してきて、憧れのパリに着いたとたんに 誘拐された若い女の子達がただただ哀れだ。 高級ブテイックで試着室の床が羽目板になっていて、服の試着に入った若くて綺麗な子は、羽目板で地下に落とされて 中東に連れて行かれてハーレムに売られるらしい、、、という冗談のような話も聴いたことがある。

この映画を見た人は 親の反対を押し切って友達同士で旅行するなんて、、、だから、いわんこっちゃない、と言いそう。では、しっかりしていれば こういう羽目に陥らずに済むだろうか? どんな時代にも どんなところにも 性犯罪は起きてきたし、これからも起き続けるだろう。しっかりしていれば大丈夫ということは、絶対にない。若くて美しい女は(男も)いつの時代にも、どんなところでも性犯罪の犠牲になりうる。もちろん、充分被害にあわないように注意を怠らないことは大切だ。しかし、仮に被害にあってしまった場合は 生き延びるために どんなことでもすること。そして、生き延びることができたら、自尊心を取り戻すために、最大の努力を払うべきだ。大切なことは、自分をとりもどし、希望を失わないこと。

犯罪の中で、最も卑劣な犯罪はぺデファイルと呼ばれる小児性愛だが、物言えぬ状況の中で力によるレイプも根は同じだ。犯罪は同じ加害者によって幾度でもくり返される。

つい先週、東南アジアでは有名なぺデファイル、ギャリー グルッター(GARY GRITTER)が、タイの刑務所で5年間の刑期を終えて出所した。イギリス人で、もと歌手だ。出所後、ベトナム入国を希望したが、入管局に拒否され、タイ、シンガポール、フィリピンに入国を打診したが、拒否された。いやおうなく イギリスに帰国していったが この男による 未成年の性犯罪被害者は、何百人にも上ると言われている。イギリスで、パスポートを取り上げられたというが、当たり前だ。

オーストラリアでは 繰り返し性犯罪を起こした人には出所後でも 電子バンドをつけさせて、いつもどこにいるか警察が確認できるようにしている。しかしこんなことに膨大な資金を使っても、本人が電子バンドを外して逃亡してしまえば 再犯を防止することはできない。性犯罪を繰り返す者には、刑務所で再教育を期待したり、出所後に監視をしたりすることよりも、去勢手術をすべきではないか。自分でコントロールできない 暴力的な性犯罪者には、手術でその元を絶つべきではないか。そうなれば、性犯罪の再犯予防のために、膨大な税金を使って 刑務所で再教育をしたり、出所後 監視をしたりしないで済むばかりか、まじめに一人前に働いて労働者として 社会に貢献することもできる。地元の子供たちも安全だ。人権に反するというならば、物言えず性犯罪の犠牲になった弱い者達の人権と、加害者のどちらの人権を優先させるのか。被害者が ともすると 深い傷ゆえに、口をとざしてしまう性犯罪。 加害者の刑罰については、もっと活発に討議されて良い。 ライアン ネーソンの絶望的で孤独な戦いを見ていて そんなことを考えた。