マイ フェア レデイー」は、劇作家、ジョージベルナルド ショーが書いた芝居「PYGMALION」をもとにして フレデリック ローイが音楽をつけてミュージカル化したものだ。初演は 1956年、ニューヨーク マークへリンガ劇場。そのミュージカルが映画化されたのは 1964年。オードリー ヘップバーンと、レックス ハリソンが主役を演じ、その年のアカデミー賞を総なめした。
ヘップバーンの愛らしさに魅了されて、この映画は永遠のヒット作になり、今でも人々から、変わらず愛されている。同じ年に、ミュージカル「サウンド オブ ミュージック」が 大ヒットしたにも関わらず、「マイ フェアレデイー」のインパクトが大きくて、そちらは、何の賞も獲得できなかった。ヘップバーンの姿が多くに人の目には焼きついているから 今さらながら これを舞台で上演するなんて、わざわざ不評を買うためにするようなものではないか。そんな勇気ある、というか考え無しのオペラを、オペラオーストラリアがやったので、観にいってきた。
舞台は、 時は1912年 所はロンドン、コベントガーデン。今しがたロイヤルオペラハウスでオぺラが終わり、紳士淑女が 出てくるところ。 貧しい花売り娘達が 紳士達に群がっていく。劇場から出てきたヒギンス教授と、ピケリング将軍は 余りに汚い下町言葉で話しかけてくる 花売り娘達を見ながら、下町なまりは教育によって変えられるものかどうか 論議している。ヒギンス教授は言語学者なので、賭けをして、半年間で目の前にいる娘を誰よりも立派な上流階級の言葉を話せるようにしてみせる、と豪語する。
翌日、チョコレートを食べさせてもらえる という餌に釣られて、イライザが 教授邸にやってくる。教授はイライザに半年間 自分の家に住み込んで その間お小使いもあげるが、言われたとおりに学習するように と娘に約束させる。娘の父親は貧しい掃除夫で 娘が花を売って得たお金で 飲んだくれてばかりいるお調子者。さっそくヒギンス邸のお金を無心にくる。 イライザの英語のレッスンは毎日毎日深夜まで 厳しく続けられるが、徐々にイライザの物腰からしぐさ、言葉にいたるまで上流階級のレベルに達する。ヒギンス教授は テストのつもりで、アスコット競馬場に イライザを連れて行くが、馬の走行に興奮したイライザは、馬に向かって下品な声援を送って大失敗をやらかす。しかし、それが若い貴族フレデイの心を捉える。
最終テストと称して、ヒギンズ教授はイライザを大使館主催の舞踏会に連れて行く。そこで、各国大使達から イライザの品のよさと美しさが絶賛され、注目の的になって、ヒギンスは、鼻高々。一介の花売り娘を上流階級の娘に育てた自分の業績に自画自賛する。そんなうぬぼれの頂点に立ったヒギンスを見て、自分はただピッケリング将軍との賭けに使われただけだったと知ったイライザは、もう自分はヒギンスにとって用無しになったと思い込んで、家出する。しかし、生まれ育った下町では、変わってしまった自分を受け入れてくれる人々はいない。貴族で自分を愛していると言うフレデイも、若すぎて頼りにならない。
一方、教授はイライザがいなくなって 初めて彼女の存在が 自分の日々の喜びであり、彼女が自分にとってなくてはならない存在になっていたことを思い知る。テープレコーダーに録音されたイライザの声を聞きながら 呆然としているヒギンス教授の背後に 帰ってきたイライザが 立っていて、、、という 余りにも有名なストーリー。
オぺラは、2幕 3時間。
演奏:オーストラリア オペラバレエ オーケストラ
指揮:ANDREW GREENE
監督:STUART MAUNDER
イライザ ドリトル:TARYN FIEBIG
ヒギンス教授: REG LIVERMORE
ピケリング将軍:RHYS MCCONNCHI
フレエデイー:MATTHEW ROBINSON
イライザの父:ROBERT GRUBB
何よりも、衣装が派手で綺麗な舞台だった。
衣装、舞台の華やかさに比べて ソプラノの声は貧しく 高音と低音がマッチしていない、など、主役にはちょっと物足りないソプラノだったが、衣装の華麗さ、帽子の美しさで 欠点をカバーしている。ヒギンス役のバリトンは、テナーともバリトンともいえない。だいたいオペラ歌手ではない。長年ミュージカルや劇で活躍してきた人。最初の出だしで、声の質がオペラにマッチしない、好きになれない声なので 一瞬 出てきてしまおうかと思ったが、大人気ないことはせず、きちんと見た結果、これはこれで良い。もとが、ミュージカルなのだから、これで立派ではないか、と思うことにした。
イライザとヒギンス、ピッケリング将軍以外にも、ヒギンスの母親、ヒギンス邸の執事、女中頭、イライザの父など、みな役柄によく合った役者達が配役されていて、重要な舞台回しをしていた。 イライザの父と飲んだくれ仲間達のよるコーラスや、花売り娘達のコーラスも良かった。 貴族達が集まるアスコット競馬場でも目にも鮮やかな 女性達の豪華な衣装と帽子は1920年代のファッションショーのようで、見ていて楽しい。それと、唯一、フレッドのテナーは、聞きごたえのある、よく延びる美しい声で、特筆に値する。
ヘップバーンが演ずる映画を観たのは、1964年、今 再びオペラで観て 中で歌われる曲 全部をよく憶えていた。それほど良くできた曲ばかりで、印象も深かったのだろう。そして最後の場面 おなじところで、昔と同じように ホロッとした。楽しいオペラだった。
このオペラを観終わった後、ロイヤル劇場で、ミュージカル「マイ フェア レデイ」が、10月10日から1ヶ月間 同じソプラノ歌手で、上演されることがわかった。ソプラノ以外は 別の歌手で見せるらしいが、オペラハウスではプレミヤ席 $190 だったのが、ロイヤル劇場では プレミヤでも $125なので、かなり得かも知れない。それだけオペラハウスでは、使用料が高いのと、オーケストラや舞台装置に お金がかかるということか。この見世物ならば、ロイヤル劇場で、ジーンズ姿で、アイスクリームをなめながら見たほうが、楽しいような気がする。