映画「WANTED」を観た。
監督:TIMUR BEKMAMBETOV
配役:JAMES MCAVOV MORGAN FREEMAN ANGELINA JOLIE
派手なカーアクション 銃やナイフでの殺し合い、ガンさばきと、流れる血、、、ハリウッドの娯楽映画の典型の、最新のフィルムだ。 とてつもない規模の破壊、今回の映画も おびただしい数の車が派手なカ-チェイスの末に ぶっ壊れ 火を噴いた。車だけでなく 列車や人も沢山 崖から落ちていった。
アメリカ人がこんなにも 建物や車やバイクやヘリコプターや飛行機が火を噴いて壊れていくのを 映画で見るのが好きなのは、毎日の平凡でまじめな生活に疲れて飽き飽きしているので、せめて画面の中で 物が壊れるのを見て うさばらしをしたいのだ という心理学者の解説を読んだことがある。
本当だろか?
むしゃくしゃして 不満がつのって、そのはけ口に、大きな音でガラスを蹴破ったり、食器を床に投げつけたり、無抵抗な女をぶん殴ったりして不満をぶちまけないと気がすまない というタイプの人がいるということも、知識としては知っている。
が、本当だろうか?
私だったら、うさばらしや不満をぶちまける暇があったら、不満の原因を冷静にたどって、そちらから解決するように努力してみる。仕事がつまらなくて耐えられないほどだったら、別の仕事を探し始めるし、夫が退屈でたまらなかったら別のを探す。
破壊や流血を見るのには痛みを伴う。
それでもそういった映画が封切られるそばから観るのは それが現在 最大規模の映画産業ハリウッド文化の主流だからだ。
ハリウッドで一番女性からも男性からも人気のある女優、アンジェリーナ ジョリーが、凄腕の殺し屋で、 そのボスは モーガン フリーマン。そこに今が「旬」の ジェームス マックボイがリクルートされてくる。という俳優ぞろいだとわかれば、ちょっと映画の好きな人ならば見逃すことができない。 まあ、日常生活からは、程遠い おとなのおとぎばなしを見るという感じだ。
ジェームス マックボイ扮する ウェスリーは、全然うだつのあがらない銀行員だ。職場ではヒステリックでサドの女性上司に頭が上がらず、毎日嫌味を言われながら 過重な仕事を押し付けられている。家に帰れば 長年付き合っているガールフレンドがいるが 彼女はウェスリーの同僚と浮気をしている。それをうすうす知っていながら 慢性的金欠病の彼にはどうすることもできない。銀行貯金の残金は$14というわけだ。誰にもももんくをいえるわけでなく ただただダメ男の代表のような凡人だ。
だがある日、立ち寄ったドラッグストアで 拳銃の撃ち合いに巻き込まれる。逃げまくっている最中、目の覚めるような美しい女性の運転する車に拾われて 命拾いする。連れて行かれた 砦のようなお城で、ウェスリーは 4歳のときに死んだと聞かされていた父親が、実は 秘密結社の殺し屋で、昨日殺されたばかりだ、と言われる。そして、天才的な 狙撃手だった父親の後を継いで 狙撃手として教育訓練を受けて欲しいと要請される。夢のような話に 一度は断って自宅に戻るが、自分には何も失うものはないと 思い直して、プロの殺し屋としての訓練を受けることを決意する。文字どうり何度も瀕死の怪我を受けながらも 優秀だった父の血筋を受けているだけに、めきめきと力をつけて、様々な武器を使えるようになって、命令どうりに、敵を殺す仕事をこなしていく。 しかし、そうしているうちに、父親を殺した仇を討つつもりでいて その仇が実は 本当の父親だったという真相がわかり、、、。 というストーリー。
つまり、この秘密結社は ライバルの秘密機関にいるウィリーの父親を殺す為に、ウィリーを リクルートして 父殺しをさせる計画を立てたわけだ。殺し屋ナンバーワンを消すためには、ナンバーワンの血筋を引いた息子に ナンバーワンになってもらって、父親を消すしかなかったというわけ。そうしたことのために、沢山の車が壊され、建て物が破壊され、巻き添えにあった沢山の人の命が失われる。
アンジェリーナ ジョリーの派手なアクションと 彼女の指導によって うだつのあがらない普通の男が一人前の殺し屋になっていく過程が とっても おもしろい。
なかで、目新しいのは、ガンさばきだ。従来のプロの狙撃手にとって、大事なのは 限りなく遠くから、限りなく正確に 相手の心臓または頭を一発で打ち抜くことが究極の仕事だった。 しかし今回は 見えないターゲットを 殺すテクニックが開発される。建物の後ろに隠れている人に向かって 腕をまわし撃ちにして 流れ弾のようにして撃ち殺す。弾はまっすぐ飛ばないで 弧を描いて飛ぶ。肩を支柱に 腕を回すことによって 目の前にあるものを避けて その後ろにあるものに当たって 隠れている人を確実に殺すのだ、、、。ウェスリーは これをマスターする。
回し撃ちで 見えないターゲットを撃つ なんて、そんな馬鹿な、、、!
もうほとんど「巨人の星」の「魔球」の世界だ。「弾が き、、きえた、、。」というわけだ。
ゴルゴ13も、びっくり。 そんなテクニックをアンジェリーナ ジョリーに 手取り足取り指導されれば 本当に出来るようになってしまうかもしれない と、観客に信じさせてしまうところが この映画の醍醐味だ。
だから、これは おとなのおとぎばなしだ。この映画を観た後は、日常生活に戻って、こつこつとまじめに仕事して 嫌味な上司にも頭を下げて、飽き飽きしているパートナーにも優しくしてやって 金欠にも耐え、そうしているうちに、いつか、突然、アンジェリーナ ジョリーみたいな とびきりの人が あなたの人生に飛び込んできて 日常をぶっ壊くれるかもしれない。その日を夢みよう。