オペラ「LUCIA DI LAMMERMOOR」 作曲ドンゼッテイ 1835年作 を観た。
オペラハウス。
ストーリーは、
17世紀のスコットランド。 アッシュトン家の当主、エンリコは、宿敵レヴェンスウッド家のエドガルドが、妹ルチアと恋仲であると知って 激怒する。ルチアは母親の墓参りに行った際 エドガルドに命を救われて以来、エドガルドに夢中だ。しかし、エドガルドの父親を殺したのは ルチアの兄エンリコだった。二人は憎しみ合う二つの家の間で 許されざる恋人達だった。
そこで、エドガルドが王の使いでフランスに行っている間に エンリコは エドガルドに恋人が出来たという偽りの手紙を妹に見せて 妹に 政略結婚を強いる。そして、結婚式の当日、ルチアが結婚承諾書にサインした瞬間に、エドガルドが駆け込んでくる。事情を知らないエドガルドは ルチアの心変わりを激しく怒って ルチアをののしる。ルチアは何も言えずに気を失う。
アッシュトン家の広間で 人々が喜びうかれているところを、新郎を刺し殺してしまったルチアが 真っ赤な血で染まった姿で現れる。そして、エドガルドの名前を呼びながら狂って死んでいく。 傷心のエドガルドに、ルチアの死が告げられる。ルチアの本当の心を知らされたエドガルドは ルチアの後を追って 自害して果てる。
愛のために生き、ひとつの愛のために死ぬ、最もオペラらしいオペラ。
3幕 2時間30分
指揮: リチャード ボニンゲ
音楽: オーストラリア オペラバレエ オーケストラ
ルチア: エマ マチュー
エドガルド:エリック カトラー
エンリコ:ホセ カルボ
牧師: リチャード アンダーソン
ルチアの侍女:ローズマリー ガン
ルチアの夫:カネン ブリーン
オペラの見せ場は、第一幕のルチアとエドガルドの愛のデュエット。
それと、第2幕の 祝宴の場で、ルチア、エドガルド、兄エンリコ、牧師、ルチアの新郎、ルチアの侍女 この6人による6重奏だ。 ルチア(コロラトーラ ソプラノ)は エドガルドが 心変わりしたと思い込まされている。エドガルド(テノール)は、ルチアに裏切られたと思っている。兄のエンリコ(バリトン)は 一刻も早くエドガルドを殺して自分が仕組んだ悪巧みを隠したい。ルチアの新郎(テノール)は ルチアが自分のものになるので、浮かれている。牧師(バス)はすべての事情を知っているので ルチアとエドガルドに深く同情している。ルチアの侍女(アルト)は ルチアが可哀想でならない。この6人6様の思いを6重奏するところが圧巻。6人がそれぞれ思いのたけを歌って 3幕のクライマックスに導いていく。オペラのなかで、一番興奮するところだ。
第3幕のルチアの狂乱が、このオペラの一番の見所聴き所だ。愛のない政略結婚をさせられた新婦ルチアが 新郎を刺し殺した血染めの寝衣、裸足の姿で 踊りながら狂って歌う。無垢な小鳥のさえずりのような、コロラトーラ ソプラノだ。フルートの音にあわせて独唱する長いシーンには、超技巧的なテクニックを要し、おまけに演技も要求される。ソプラノ歌手でも、このコロラトーラが出来る人は多くはない。
永遠のオペラ プリマドンナ、マリア カラスが愛して止まなかった このオペラ。
彼女が歌うルチアを CDで何度も聴いているから いやでも舞台のルチアの声を比較してしまう。というか、初めから 期待しないで観にいった。期待して行って、ぺしゃんこにされて、丸つぶれになって帰ってくるのではたまらない。 ところが 観てみたら、とてもよかった。
何よりも、テノールのエドガルドが ものすごく良い声だった。2メートルの背の高さ、がっしりしてハンサム こんな人に命を助けられたら ルチアでなくても夢中になる。考えてみたら、オーストラリアには良いテノールがいなかった。去年見た「リゴレット」のテノールは イタリア出身オージーで、声が良かったが、太って背が低い。今年の「ラ ボエーム」では、主役テノールがオールバックヘアに4頭身の中国出身オージーのおっさんだった。「トランドット」も、「ラクーメ」も声は良いが、見栄えの良くない韓国人だった。一体オペラオーストラリアは何をやっているのか。プレミア席に$190払っている観客達は 反乱くらい起こしても良いはずだ。 人の声の中で テノールが一番美しい音だ。かつて、王族貴族達はカストラートの声を愛した。思春期前に去勢して高い美しい声を維持させられた歌手達は教会で、オペラの舞台で活躍した。現在は テノールが人々の心を掴む。エリック カトラーというテノール、声も歌も演技もとても良い。アメリカ人だそうだが、この出し物が終わっても、ここに留まって欲しいものだ。
肝心のコロラトーラ ソプラノのオージー歌手、エマ マチューだが、技巧的なソプラノをちゃんと立派に歌っていた。象のように 太って大きいルチアが両手を血で真っ赤にして、白いネグリジェに血しぶきあびてドタドタ出てきたら どうしようかと思っていたが、彼女 声も姿も美しい人だった。
総じてとても満足なオペラだった。満足以上のオペラだった。