今後民主党が、トランプの共和党と選挙戦を互角に戦えるとしたら、副大統領候補によほど強い人を立てないと歯が立たない。
一方トランプは強力な副大統領候補を指名した。若干39歳の、VD バンス。アパラチア山脈出身、極貧家庭で育ち高卒で海軍に入隊しイラクで戦い、奨学金を得てイエール大学で法律を学んだ。かつてはトランプのことを、アメリカのヒットラーとののしっていた。以前貧しい白人票の支持で大統領になった大富豪のトランプだが、バンスは本物のヒルビリー(山から来た田舎者)であり、レッドネック(首筋が日焼けした白人労働者)であり、ホワイトトラッシュ(白いゴミ)で、ラストベルト(さびついた工業地帯)出身だ。
彼の著作「HILLBELLY ELEGY」(ヒルベリー哀歌)は、彼がアルコール中毒、家庭内暴力、シングルマザー、失業と言った破壊家庭で育った経験を描いた作品だが、2020年にベストセラーになり、映画化もされた。
アパラチア山脈は北はニューヨーク州、オハイオ州、南はアラバマ州、ジョージア州にまたがる広大な地域で、スコッツアイリッシュが住む独特な文化を持った地域だ。WASP(ホワイト、アングロサクソン、プロテスタント)ではないアメリカ人、もともと貧しかったスコッツアイリッシュが住みつき、石油、石炭、鉄など地下資源が豊富なため炭鉱夫としてアメリカの経済を支えてきた。しかし炭鉱が閉鎖されてからは、失業、貧困、家庭内暴力、薬物中毒の土地に転落した。このようなラストベルトに生活する「南部の普通の人々」は、かつての豊かだった米国を自分たちが経済を支えてきたという誇りを持っていて、過去の栄光を取り戻したいと思っている。北部や、ニューヨークなどに住むインテリには、彼らの低力がわからない。
何故貧しい人々がトランプに期待を寄せているのか、それはトランプが「銃弾を浴びても倒れなかった」強いアメリカを代表し、「民主主義」と「自由」を重んじ、停滞した経済を持ち直し、かつての「輝けるアメリカ」を実現してくれる、と人々が信じたいからだ。その78歳の男を支える、全米の中で一番貧しく失業と薬物中毒と貧困と犯罪と暴力の極悪の環境の中から躍り出た、39歳の若き天才に期待をかけるからだ。
トランプは「GOD CHOOSED ME」わたしは神に選ばれた、と高らかに宣言し銃弾を受けても拳を掲げた。
しかしトランプが政権を取れば、貧富格差はさらに広がり、人種差別や女性差別を制止するタガが外れて差別が激しくなり、LGBTIQは居場所がなくなり、国民健康保険は廃止され、病人は医療を受けられず、妊娠中絶が禁止され、レイプされた女性がその子供を育てなければならなくなり、家庭内暴力も増える。自由も民主主義も平和もない。
米国は建国以来、戦争を止めたことがない暴力国家だ。戦後はベトナムから始まって、湾岸戦争、イラク侵攻、アフガニスタン、シリア、ウクライナ、イスラエルでも米国製の武器が、毎日人々を殺戮している。トランプは核兵器も使うだろう。