2026年2月23日月曜日

カダフイ大佐の夢の終焉

2026年2月3日のこと
サイフアル イスラムカダフイが殺された。リビアのムアンマル カダフイ大佐の息子だ。
自宅で4人の覆面男シークレットエイジェントの放つ銃弾に倒れた。彼の「リビア統一国家の復活」の夢は、米国、仏国、英国の差し向けた暗殺団によって葬り去られた。

子供の時からリビアのカダフイ大佐が大好きだった。小学生から新聞の海外ニュースを読んでいた。毎日血気盛んな早大政経学部の学生たちが、子供の私が作った半崩れの中に何も入っていないおにぎりにむしゃぶりつきながら唾を飛ばして政治談議しているような家で育った。父は、叔父の力で政経学部の教壇に立って、教養課程の1年生に英語を教える職に就いていたが、政治学も経済学も財政学にもまったく興味も関心もない人だった。お金がなく食べるにも飲むにも困っている学生たちを連れ帰っては世話していた。
「先生見ててください、天下を取って見せます。」とか「俺はニッポンを乗っ取るぞー。」とか豪語する学生たちを、いつも笑いながら見て居て、彼らが卒業して遠い地方の地元で立候補して落選を伝える新聞を見ては、ため息をついていた。

リビアのカダフイ大佐は、弱冠27歳で王制を倒して政権奪取して、47年間直接民主主義でアフリカ唯一の安定した国家を作った。〈1942-2011)彼は絶大な権力を握っていたが、大統領と呼ばれることも首相に座につくことも嫌ったので、人々は彼の最終的な役職だった軍の大佐で名前を呼ぶしかなかった。権力者にして謙虚。彼の夢は大きかった。
リビアの国土は90%砂漠だが、大規模なダムを造り灌漑、治水事業によって砂漠式農業の基礎を作った。砂漠を緑化させ、自国の国民食料を安価で自給できるようにした。
カダフイ大佐は教育を奨励し、男女とも文盲率をゼロちかくまで下げ、無料の教育を提供することで識字率を上げた。国民の25%が、大学の学位を持つ誇り高い人々の国を作った。
また医療、教育を無料化し、すべての国民に福祉が行き渡るようにした。アフリカで1番幼児死亡率が低く、平均寿命は高い国家を建設した。
カダフイ大佐はアフリカ最大の石油と天然ガス埋蔵量を誇るリビアで、リビアデイナールを「金」に裏付けされた価値を持たせ、米国を中心としたドルに支配されない、ドル決済をしないアフリカ独自の経済体制を構築しようとしていた。国債を持たず、政府は数千億ドルの資産をもっていた。リビアデイナールでアフリカ全体の経済体制を統一しようとしていた。アフリカの統一が彼の夢だったのだ。
だから欧米の国々は、その力が大きくなる前に、カダフイ大佐をつぶすことだけを考えていた。
カダフイのアフリカ統一ナショナリズムが、強権的で反対勢力を粛正する血まみれの独裁政権だったと、批評することは簡単だ。イラクのサダムフセイン、シリアのアサド、ベネズエラのマドーロ、キューバのカストロも、、。言わせておけばよい。経済基盤が脆弱で、政治体制が不安定な政権には強い指導力が要る。それは独裁ではない。歴史を振り返った時、その指導者が何を残したのかを見れば、独裁とは紙一重の民主政治では不可能だった、立派な業績を見ることができる。
2,011年10月、カダフイ大佐が酷い拷問と、性的凌辱をうけたあと惨殺されたとき、息子のサイフアル イスラムは民兵に捉えられて、6年間投獄された。死刑判決を下されたが、2017年恩赦されたあと潜伏していた。そして、2021年の大統領選挙に立候補して、父、カダフイ大佐の夢を引き継ぐ者として政治的名誉回復されるか否か、というときに暗殺された。
リビアのカダフイ大佐の死後15年、そして父の夢を再度実現しようとした息子のサイフアル イスラムの死は、重ね重ねのリビアの死だ。米国、仏国、英国による介入で、いまやリビアは救いようのない無法者たちの巣窟になった。
カダフイ大佐の夢を語るものはもう居ない。