2025年12月13日土曜日

最低賃金法

円安が止まらない。
ニュースを聞いてドル100円が103円になり、さらに下降しているスピードが怖いほどだ。
厚生労働省の中央最低賃金審議会が、2025年の最低賃金を、全国加重平均で60%引き上げ、時給1118円とする目安を決めた。昨年の目安を50円上回り、過去最高の上げ幅を記録した、という。現在の最低賃金は全国平均で、時給1055円だが、政府は2020年代に1500円に上げる目標を掲げている。
米国で時給1500ドルを要求して、労働者が大規模デモを繰り広げたのは去年で記憶に新しい。

日本の最低賃金が問題なのは、それが政府や雇用者の「めやす」であって、義務ではないことだ。
全国共通の最低賃金法という守るべき法があって、最低賃金を守らない雇用主を、厳しく取り締まり罰則を設けなかったら、意味がない。日本のGDPが増え続けているが、格差の大きさを示すジニ係数は上昇している。ということは、全体の収入は増えているが、リッチな層の収入が増えているだけで、プアな層の収入は変わらない。パート、非正規労働者は物価高のなか、益々プアになっている。

だから最低賃金を引き上げるだけでは意味がない。リッチから取るべきものを取る「税制」を本気で変えないといけない。
正規労働者と、女性では43%が従事する非正規労働者の待遇改善、格差是正、地方と都市の賃金格差の調整、最低賃金を外国人労働者にも適用するべき、など、政府がすべきことはたくさんある。
豪州では現在、最低賃金が、時給24.95ドル(2495円)、これが義務化されている。

雇用主は、雇った人がパートであろうと、非正規労働者であろうと、留学中の学生であろうと、ワーキングホリデイの若者であろうと、フルーツピッキングなどの季節労働者であろうと、正規労働者同様、最低賃金は保証される。それを守らずピンハネする雇用主は、通報され適正賃金を払うまで、怖い怖い税務署から、重い重い重い罰金で、罰せられる。
また、雇用主は労働者に払った賃金の9-12%の金額を、それぞれの労働者の指定する年金会社に納めなければならない。稼いで、さっさと豪州から自分の国に帰っていく季節労働者や、ワーキングホリデイの若者は、その年金をもって帰国する。

また正規労働者には年に1週間の有給病気休暇があって、診断書によっては長期療養が必要な場合は病欠を伸ばすこともできる。有給休暇は、職種によって異なるが、医療従事者の私の場合は、年に6週間有給休暇が取れて、それを翌年、翌翌年に繰り越すこともできる。
さらに、10年以上同じ職場で働いてきた人には、3か月間の長期有給休暇が、ご褒美にあって、その休暇を取らずに給与に換算して受け取る人も居る。私の場合は年休も長期休暇も一挙に取らず、ちびちびと使って家族と共に過ごす時間を大切にしている。

日豪労働者事情の一番の違いは、非正規労働者への扱いかもしれない。
病欠や有給休暇のある正規労働者よりも、それがない非正規労働者の方が、時給が25%高い。非正規労働者は、時給3119ドル(3119円)で働いている。有給や病欠がない分、当然の資格だ。

日本では、人手不足を言われて久しいが、日本の公立病院の人員募集で「40歳以下の有資格者」とされているのを見て、カッと頭に血が上った。わたしは今75歳で現役フルタイムで働く医療従事者。私が女性で、日本人で、若くなく、英語もジャパグリッシュなまりだが、豪州では差別禁止法がしっかりしているので、誰一人「仕事を止めろ、とか、頼むから引退してくれ。」とか言う人は、絶対居ない。好きでやっていることだから 放っといてもらいたい。で、放っといてもらっている。

日本に必要なのは、人を人種、職業、性別、性的嗜好、出身国、言語、宗教などで差別してはいけない、という「包括的差別禁止法」、それと「最低賃金法」ではないか。
日本の深刻な人手不足に対応し、インフレ物価高に対処するには、労働者をきちんと保護すること以外に方法はない。
「埴生の宿」を歌ってみた。