2013年5月19日日曜日

映画 「アイアンマン 3」


             

もう戦争は、敵対する双方が血を流しながら戦うものではなくなってきたらしい。それは、人類が賢くなって、血を流さずとも、互いに外交の力で話し合って、協調する社会がようやく来た と言いたいところだが、全然違う。人はいつまでも賢くはならず、誤りは繰り返し、徐々に悪質になってきただけだ。
米国防総省は、無人偵察機プレデターを、2001年9,11以降、アフガニスタンで使ってきたが、この無人機が、今では1万1千機も活動している。2011年9月、イエメンでアメリカ国籍のアルカイダ幹部、アンワル アル アウラキが 16歳の息子と共に殺害されたのは、無人機によるものだった。外国の土地で、何の法的手続きもなく米国国籍をもったものが、米国のオフィスのPCボタンを押す者によって、葬り去られている。 ニュースウィークによると、米軍アルファドッグという犬型ロボットは、戦場で人が45キロの荷物しか運べないところを、180キロの装備を運んでいる。中国、ロシア、韓国、インド、パキスタン、ドイツなど、50か国余りの国々が無人機を必要としている。
中国人民解放軍サイバー部隊61398舞台は 米国の20以上の主要産業企業、141社のシステムに侵入して産業スパイの代行をさせている。また米国とイスラエルは コンピューターウィルス スタックネットでイランの遠心分離機を壊し、核開発を妨害しているという。サイバー戦争の悪いところは、法的裏付けのない、証拠を残さない 悪質な戦争で、実際の人々が死んでいく ということだ。
人は、ここまで来てしまった。嘆いても仕方がない。 アイアンマンが、現実になってきただけだ。

映画「アイアンマン」は、2008年に マーベルコミックのヒーローを、当時43歳のロバート ダウニージュニアが演じて、大ヒットした。監督、ジョン ファブローは、「アイアンマン1」と「アイアンマン2」を監督して、アイアンマンのガードマン兼、運転手のハッピー ホーガンの役を映画の中で演じているが、監督が シェーン ブラックに変わった、「アイアンマン3」でも、変わらず、ハッピー役を演じていた。自分の映画にちょい役で出演する、って ヒッチコックのようだが、本人がとても嬉しそうに役を演じていて微笑ましい。

アイアンマンこと、トニー スタークは、スターク財閥の御曹司で、天才的な物理学者の発明家だ。武器を生産して莫大な利益を得ていたが、自分が開発したクラスター型ミサイルを、米軍に売り込もうとしてアフガニスタンで、ゲリラに誘拐される。このときミサイルの誤爆でクラスターの破片が トニーの心臓に刺さり、死ぬところだったが、自分と同じように誘拐されていた医師によって、バッテリーで心臓に電磁石で破片を引き留めておかれて命を救われる。この時以来、トニーは熱プラズマ反応炉、アークリアクターを心臓に埋め込んで、生き延びてきた。誘拐され、犠牲者を出しながら生還できた経験から、自分の作った武器が戦争に使われ、人々が死ぬことを 深く反省し、今後は人の為になる生き方をする決意をする。
自分の体内に埋め込んだ生命維持装置、アークリアクターと同様のエネルギーを使ったアイアンスーツを開発して、トニーは、今まで人にできなかったパワーを駆使して弱者を守る正義のヒーローへと変わっていく。

「アイアンマン2」では、大活躍して悪者をやっつけてくれるヒーローのアイアンマンが、トニー スタークであることを、メデイアに発表してしまって、依然からのプレイボーイぶりに拍車がかかる。独身、大資産家、天才的な発明家、無敵のアイアンマン、、、これが、もてはやされないわけがない。ハメを外して、秘書のペッパー(グイネス パルトロウ)に叱咤され、結局 トニーは、社長業をペッパーに譲り、自分はアイアンマンの開発と研究に集中することにする。そこまでが、アイアンマン1と2のお話で、その次からは、映画「アベンジャーズ」で、マーベリックコミックのヒーローが全員集合して、米国を襲ってきたエイリアンと戦うというお話に引き継がれていった。

「アイアンマン3」のスト―リーは、
トニー スタークは、エイリアンの襲撃を、「マイテイーソウ」や「ハルク」や、「キャプテンアメリカ」や「ブラックウィドー」と一体なって、戦い、米国を守ることができたが、またいつ、どんな敵が襲ってくるのか、、、トニーは、不安になると、急に呼吸ができなくなるパニックアタックに陥るようになった。おまけに米国防省は、アイアンマンパワースーツの秘密を国に提出するように命令するが、トニーに拒否されてからは、国の安全をアイアンマンに任せる訳にはいかない と、トニーとは距離を置くようになった。トニーは 仕方なく、アイアンマンパワースーツの開発に没頭する。彼は、離れていても、スーツの着脱ができるように、腕にセンサーを埋め込んで、遠隔操作ができるパワースーツを開発していた。研究室では、パワースーツももう42体を数えるようになった。

そんなある日、突然、謎のロケット砲撃を受けて、トニーは、自分の豪邸も研究室もすべて破壊されてしまった。犯人は、聞いたこともない敵「マンダリン」という組織だという。主犯は、13年前に、遺伝子操作で不死身の体をもった人間を作る技術をトニーに売り込んだが、鼻で笑われて以来、アイアンマンを破壊する計画に着手していたアルドリッチ キリアン博士だった。博士は自分が障害者だったが この再生医療の技術で不死身の体となった。大統領を誘拐して、国を自分の思う通りのスーパーパワーをもった不死身人間が乗っ取ろうとしていた。それに対抗して国を守ろうとするアイアンマンは、、、、というお話。

アイアンマン2で、トニーがパワースーツを 空中でも装着できるようになって、あっと言わせてくれたが、アイアンマン3では 腕に埋め込んだセンサーで、パワースーツが遠くにいても、トニーのもとに飛んできてくれる。でもまだ開発中だから、中途半端で、やきもきさせられるところが、おもしろい。トニーが拘束されて不死身人間にやられて、もう傷だらけ、、というときに、遠く離れた他の州で、メカに強い少年が修理してくれたアイアンマンパワースーツが 部分ごとに飛んでくる。カシャリと 片足に装着、パワーアップした足で、敵の攻撃を避けているうちに バキューンとマスクが飛んできて頭を防衛してくれて、なんとかしている間に、やっと完全なアイアンマン姿になって、攻防したり、しかし何と言っても開発中だから スーツがトニーに向かって飛んできたと思ったら、互いにぶつかって合体できなくて、ただの「鉄くず」になってしまって、あわてたり とにかくこの遠隔操作がおもしろい。

「アイアンマン」の面白さは、「バットマン」のような悲壮感がなくて、全くノーテンキに明るいところだ。苦労人ロバート ダウニージュニアの人柄でもあるのだろう。大財閥の御曹司で独身プレイボーイで発明家の役を、43歳でやって大成功させ、48歳で最後のアイアンマンを みごとに演じた役者魂も、すごい。
「バットマン」は、幼いときに自分のために両親が暴漢にあって殺されてしまった原罪意識と、自分の閉所恐怖症から逃れられずに苦しむ。「スパイダーマン」も、両親は謎の失踪中、育ててくれた尊敬する叔父さんを自分の過失で殺されてしまう。正義の味方のバットマンもスパイダーマンも 人として、悩みをもっているから ストーリーに深みが出ている。しかし「アイアンマン」には そうした悩みがない。「アベンジャー」のヒーローたち全員で戦わないと、エイリアンに勝てなかったことで、ちょっと落ち込むが、メカ好きの少年に励まされれば、たちまちオッケーだ。そんな陽気でネアカで単純なヒーローも これで最終回だと思うと、寂しい。思い返してみると画面では「アイアンマン3」が 3D画像も、メカも豪華で素晴らしいが、「アイアンマン1」が印象深い。初めてスーツの制作にとりかかり、パワーバランスが悪くて高所から落下したり、PCで3Dの図面を見ながら設計するところなど、今までにないSF満載で、面白かった。PC狂いの男の子など 垂涎ものだったろう。秘書ペッパーとの、間を置いたクールな関係も良かった。

今回の悪者の親分マンダリン(ベン キングスレー)が、実は雇われた役者だった というのには笑った。さすが、ガンジーを演じてアカデミー主演賞をとった役者の演技で、こんな軽い役でも実によく演じている。本物の悪役キリアン博士を演じた ガイ ピアースも怖いほど悪い奴になっていて良かった。

最後、アイアンマンは、自分の渾身の作品アイアンパワースーツを、ペッパーのために全部破壊して、「夜空の星」または「、打ち上げ花火」にしてしまって、自分の動力源アーク リアクターまで投げ捨てて、「アイアンマンパワースーツがアイアンマンではなくて、ぼくがアイアンマンなんだ。」というせりふで終わる。パワースーツがなくても自分は自分という自信を持って、秘書ペッパーと一緒に生きていく、ということだろうが、これでいいのか?ペッパーの望み通り、トニーは、ただの男に戻って、仲良く二人で暮らしましたとさ、、。これでは、おとぎ話の終わり方ではないか。42体のアイアンマンパワースーツよりも、米国の安全保障よりも、ペッパーが大事ということか。犠牲が大きすぎないか。
だいたいアークリアクターがなくなっても、トニーの心臓は大丈夫なのか。おまけに キリアン博士によって遺伝子組み換えでスーパーパワーをもってしまった秘書ペッパーは、もう死ねない不死身体のはず、そんな二人が幸せに暮らしていけるのか???というような細かいプロットの矛盾については、言及しないのが、賢いSFアクション映画を観るときの「お約束」だ。
見ていて、とにかく楽しい。
大型娯楽作品は、まず観て、そして楽しまなければ損だ。

監督:シェーン ブラック
キャスト
トニー スターク :ロバート ダウニー ジュニア
ペッパー ポッツ :グイネス パルトロウ
マンダリン     :ベン キングススレー
キリアン博士   :ガイ ピアース
ジェームス ローズ中佐  :ドン チーデル
ハッピー ホーガン運転手:ジョン ファブロー