2013年5月28日火曜日

映画 「ザ コール」

                          
                                 
  


http://www.imdb.com/title/tt1911644/

アメリカ映画 原題:「THE CALL」   
監督: ブラッド アンダーソン’
キャスト
ジョーダン: ハル ベリー
ケイシー :アゲイル ブレスリン
マイケル : マイケル エクルンド

数年前に 勤務を公立病院心臓外科病棟からエイジ ケア施設に移った。務めているところには、救急蘇生設備がないから 時々、電話で、000番(日本の119番と110番)をかけて救急車を呼ばなければならない。相手のオペレーターは よく訓練されていて 電話をかけてきた声の様子で どれくらい緊急か、わかるらしくて心停止患者の心臓マッサージをしながら 電話をかけた時は、何も質問せずに、すぐ救急車を回してくれた。が、それほど急がないけれど出血が止まらないから 1時間以内には病院に連れて行ってほしいというようなときは、傷の深さとか、薬はどんなものを使っているかとか、家族の様子とか、いろいろ質問した末、冷やして止血してからまた電話して、などとグダグダ言われて時間を無駄にすることもあった。まあ、救急車をタクシー代わりに使う ふとどき者もいるし、予算の制限もあるから 仕方ないんだけれど。

日本では警察と救急車は110と、119番。オーストラリアでは000、アメリカでは911。英国では999と112、ドイツでは110と112、スペインでは091、ロシアでは02か03、シンガポールは999、台湾は日本と同じ。フィリピンでは117、中国は110番だ。ビジネスマンなど今日はロンドン、明日はドバイなどと世界狭しと飛び回っているのに、緊急電話番号を、世界で統一しなくて良いのだろうか。自分が命の危険を感じた時に、「えーと ここはトルコだから110番じゃなくて、えーと えーと、、。」と迷っているうちに間に合わないことになっているかも知れない。

「ザ コール」のストーリーは
ジョーダン(ハル ベリー)は、緊急警察電話911のオぺレーター。長年にわたって勤務についていて、どんな時にも慌てずに、パニック状態で電話をかけてくる市民に 適切な助言を与えて救急車や警察やパラメデイックチームを手配してきた。警官の恋人がいる。

ある夜、家で留守番をしていた少女から、誰かがドアを壊して侵入してくる という電話を受ける。さっそくジョーダンは警察を家に向かわせる一方、恐怖でパニックになっている少女にできるだけ逃げてベッドの下に隠れるように指示する。不気味な男の息使いと足音だけの恐怖。
男は家の中をすべて物色して 少女が居ないと思って、外に出る。いったん 途切れた電話に不安を感じたジョーダンは、少女の携帯に、本当に男が外に出ていったかどうか問い合わせる。その電話の音を、家の外から聞いた男は、少女が家に隠れていることを知って、家に戻ってくる。少女の絶叫とともに、不気味な男の荒い息を残して通話は切れる。数日後、少女の無残な惨殺死体が発見される。たった一本に電話に命を託していた少女を守るどころか、死に追いやってしまったことで、ジョーダンは責任を感じてふさぎ込む。

数か月後、ジョーダンは 誘拐されて車のトランクに押し込まれたという少女から電話を受ける。泣き叫んでいる少女をなだめすかして、誘拐された時の様子や場所を聞き出し、トランクの中を物色するように促す。さらにジョーダンは、少女、ケイシーに、中からテールランプを蹴飛ばして、トランクに穴をあけるように指示する。警察はパトカーやヘリコプターで、車を探し始める。少女は テールランプが落ちた穴から手を出して、後続車に知らせたり、ペンキを見つけて穴から流したり、パニックになりながらもジョーダンの指示に従う。しかし高速道路を飛ばしている車を、警察は見つけることができない。途中で何も知らない市民が 車の異常に気が付いて 少女を助けようとしたりするが、二人とも誘拐者にあっけなく殺されてしまう。その過程で、犯人が指紋から 逮捕歴のないドクターであることが割れる。犯人は 二人の子供を持つ、普通の家庭人だった。

一方、少女は依然として車のトランクから、唯一生き延びる希望を911のジョーダンに託している。あきらめないで。必ず助けるから。ウィークエンドには一緒に映画に行きましょうね、と。しかし、男に携帯電話を見つかり、不気味な息使いを残して通話が切れる。ジョーダンは、男の対応から 数か月前に、自分が対応して惨殺された少女を殺した犯人と、この男が同一人物であることを知った。同じ過ちを繰り返して、助けを求めてきた少女をむざむざ殺されるのを待ってはいられない。長時間の少女との通話で疲労困憊して自宅に帰るように上司に命令されたジョーダンだが、少女のことを思うとたまらずに、男が所有していた森の山荘に向かう。そこで待っていたのは、、、。
というサイコスリラー。

とても怖い。
月曜日の朝10時。こんな時間に、一人でサイコスリラーを見るなんて。他には年配のカップルがいるだけの広々とした映画館で、握っていたホットチョコレートも、すぐに冷え切った。

誘拐されて泣きじゃくって電話をかけてきたケイシ―に、「何色の車に乗せられているの」と問われて、彼女はブルーと答える。その直後、少女を乗せた真紅の車の上を 警察のヘリコプターが、飛んでいるシーンが映る。ヘリの音だけがむなしく聞こえるロングショット、、、。 カメラワークが、冴えている。
ハル ベリーは、ベリーショートなヘアで女戦士みたいな役ばかりやっていて、アフリカンアメリカンの美しさをすべて持ち合わせた女優だが、ここでは、長いカーリーヘアで、可愛らしい。911番では、どんな件に出会っても「 私情を挟まない、助けに行くことを約束するが、それ以上の約束をしない、助けを待っている間にできることをさせて適切な助言を与える」、といった 911の決まり事を若い人たちに教育しているが、自分の過失で、少女が亡くなり、トラウマに陥ってしまう。それが自然だ。とても理解できる。しかし、犯人はサイコパスで 少女だけでなく、他の少女を助けようとした大の男たちも、ジャンジャン殺していて、危険な男だと十分認識しているはずなのに、ジョーダンは一人きりで夜、男の山荘に行く。これが不自然でなくて何だろう。全然理解できない。
けれど、そこを道理とか、理屈を優先すると、怖いサイコスリラー映画にならないから、ジョーダンとケイシーにちょっと無理させないとね。そこで、色んなことがわかる。少女が、殺してと泣き叫んでも殺さない。犯人が、何を欲しくて少女を誘拐してくるのか。少女を生かしておいて、そ、そ、、、そんなことまでするのか、と。
とても怖い。映画の作り方が、上手だ。

アゲイル ブレスリンが、とても綺麗な少女になっていて驚いた。「リトル ミス サンシャイン」では、8歳の分厚い眼鏡をかけた 太っちょの女の子だった。
監督は 「マシ二スト」を制作した人。このクリスチャン ベールの作品も忘れられない。寡黙な監督だ。