2012年12月26日水曜日
2012年に観た映画 ベストテン
第1位:「HUGOの不思議な発明」マーチン スコセッシ
第2位:「最強のふたり」 エリック トレダン、オリバーナカチェ
第3位:「J エドガー」 クリント イーストウッド
第4位:「アウンサン スーチー引き裂かれた愛」 リックべッソン
第5位:「ル オーブルの靴磨き」 アキ カウリスマキ
第6位:「人生の特等席」 ロバート ローレンツ
第7位:「ぼくらのラザール先生」フイリップ ファラルド
第8位:「レ ミゼラブル」
第9位:「アメイジング スパイダーマン」マック ウェブ
第10位:「バットマン ダークナイトライジング」クリストファーノーラン
第1位 「HUGOの不思議な発明」
原題 「HUGO」
監督: マーチン スコセッシ
原作:「ヒューゴカブレットの発明」
映画の説明と評価は1月27日に 詳しく書いた。
人は映像を観ることによって初めて自分の想像力に色彩や香りや動きがついてきて、イマジネーションを広げ、さらに夢を見ることができるようになる。それを明確に実証してくれたのが 映画人ジョージ マリエス(1902年の月への旅行)だ。この映画人マリエスと、ヒューゴというパリ駅の時計台に住む孤児との素晴らしい物語。
映像の美しさが例えようも無い。ヒューゴが少女に伴われて入るパリ国立図書館、パリ駅の中の本屋、巨大なぜんまいに取り囲まれた大時計の内部、公安警部と花売り娘との恋、陽気なカフェの音楽家たち、つかの間の逢瀬をする恋人たち。1930年代の人々を 美しいセピア色に染め上げて、紡ぎだされた映像が 身震いするほど美しい。今年観た映画の中で一番素晴らしかっただけでなく、人生のなかで観たすべての映画の中でも忘れがたい貴重な作品。スコセッシを心から敬愛。
第2位 「最強のふたり」
原題:「INTOUCHABLE」
監督;エリック トレダン オリバーナカチェ
映画評は、11月8日に書いた。
裕福だが脊椎損傷の障害者フリップと、ケア役のセネガルからきた移民のドリスとの交流を描いた作品。身体障害者に必要なのは、怪我をしないように真綿に包んで大切にされる事ではなくて、同等の友人として歓びを共有することだという当たり前にことを、気付かせてくれる映画。二人の男が車椅子を倍の早さで走れるように改造し、ハングライダーを楽しみ、時速300キロ出る黒のマセラテイでぶっとばす。童心に帰ってふたりの男達の魂が解放される。笑い転げる二人が子供のように輝いている。何て素敵な映画だろう。
第3位 「J エドガー」
原題:「J EDGAR」
監督:クリント イーストウッド
映画評は、2月9日に詳しく書いた。
8人の米国大統領に恐れられ、48年間休むことなくアメリカ連邦捜査局局長を務めたエドガー フーバーが現職で亡くなるまでのバイオゲラフイー。フーバーとクライドとの生涯の伴侶として尊敬しあうプラトニックな男と男の結びつき。求愛を拒否されながらもフーバーの小児病的いびつな愛情を受け止めて、右腕として生涯を貫くクライドの愛のかたちが、泣かせる。人間が描かれている。人を描いて、感動させることの天才 クリントイーストウッドの力量に感服。82歳で完成させた映画。映画を観た後で、様々なシーンが蘇ってきて感動が深まっていく。素晴らしい。
第4位 「アウンサン スーチー引き裂かれた愛」
原題:「The LADY」
監督:リック べッソン
映画評は 6月6日に書いた。 ビルマ独立建国の父アウンサン将軍の一人娘スーチーが ロンドンで家庭を築いて夫と二人の息子と暮らしていた1988年から、夫と離れたまま死に別れる1999年を描いた作品。1991年の自宅軟禁で、本人不在のノーベル平和賞を夫と息子が代わりに受け取るシーン、その後の2007年の僧侶達の勇気ある反政府デモのシーンに泣かずに居られない。この後これらの僧侶達は惨殺され、寺は打ち壊され、残るものは野に放たれたのが、現実だった。
現職の国会議員スーチーは非暴力 民主化実現のシンボルになったが、その現存の女性という難しい役を演じたミッシェル ヤオは、体重を極限まで落とし、難解なビルマ語をマスターし、スーチーの癖や仕草まで完全に習得。そっくりさんになってヤンゴンでの民主化要求演説したシーンでは、実際の国民民主連盟にいた映画関係者が 当時を思い出して取り乱して撮影が中断されたという。顔が違うのに映画を観ていると、彼女がアウンサン スーチーにしか見えない。楚々とした美しさ。孤立を恐れず一歩たりとも後ろに引かない。本当に美しい人。世界中に勇気を与え続けている。
第5位 「ル オーブルの靴磨き」
原題:「LE HARVRE」
監督:アキ カウリスマキ
映画評は 5月3日に書いた。
フランス北西部の港町、ル オーブルで、妻とつましく暮らす初老の靴磨きマルセルが、アフリカから密航してきたイングリッサという少年を匿って 彼の母親が働いているロンドンまで送り届けてやるために、貧しいル オーブルの住民達が一汗かく、というヒューマンドラマ。マルセロのヨレヨレのジャケット、埃だらけの破れそうな靴、顔の深いしわ、ぐちゃぐちゃのタバコの箱、めったに着ないけど大事にクロセットにかかっている背広、妻の服も2着しかない。徹底した市井の人々、権力にも法にも守られてさえ居ない。貧しいが、自分達の足でしっかり立っている生活者達を描いている。彼らの正義は金に縛られている人々の正義よりはるかに正しい。渋みと苦味とペーソスがあ合わさって やさしい笑いをかもし出している。さすがアキ カウリスマキ。
第6位「人生の特等席」
原題:「THE TROUBLE WITH THE CURVE」
監督:ロバート ローレンツ
映画評は12月12日に書いた。
83才で依然として立派な男、クリント イーストウッドは、いつまでもスターだ。イーストウッドの右腕としてプロデユースしてきたロバート ローレンツの初監督作。撮影中 彼が少しでも迷いを見せたら すぐにイーストウッドが代わって監督し始めるとわかっていたので、入念に準備して早いペースで撮影していってイーストウッドに口を出す暇を与えなかった と笑いながら言っている。映画の中でスタンドでイーストウッドに並んでいたスカウトマンらは、皆本当のスカウトマンだったそうだ。野球のダイナミズム、、、キャッチャーの弓なりになった全力投球、振り絞ったバットがみごとにヒットするときのカッキーンという音。野球が好きになる。イーストウッドは役者としても監督としても最高のストーリーテラーだ。
第7位 「ぼくらのラザール先生」
原題:「MONSIER LAZHAR」
監督:フリップ ファラルドー
映画評は8月29日に書いた。
カナダ映画、フランス語英語字幕。モントリオールの小学6年生のシモンとアリスは 担任の先生が教室で首を吊って死んでいる姿を見てしまった。学校側は心理療法士に事後処理をまかせ、何事もなかったように平常にもどるが、新しく雇われたラ ザール先生は、シモンとアリスの心の傷を放って置くことが出来ない。11歳の子供達の自然な姿が印象的。愛くるしい顔で心に痛みを抱えて、日常を過ごしている子供達の姿に涙が出て仕方が無かった。言葉でなく映像で子供の心を映し出すことに成功した素晴らしい映画。映像が詩になっている。
第8位 「レ ミゼラブル」
これについては、昨日観たばかりなので、あとで詳しく記載する。
第9位「アメイジング スパイダーマン」
監督:マック ウェブ
映画評は7月10日に書いた。
前回のスパイダーマンがサエなかった分だけ主役をアンドリュー ガーフイールドにして、全く別の作品のように素晴らしくなった。ガーフイールドはアメリカ人だがイギリスで育ち、映画よりシェイクスピアを演じる本格的な役者。スパイダーマンの動きも、悩める青年の心理描写も、感情の抑揚など良くわかりやすく見せてくれて、どうしてスパイダーマンになったのか理解、共鳴できる。3D画面がうまく生かされていて 画面の立体的で奥行きが深く美しい。スパイダーマンと一緒に風を切ってニューヨークの摩天楼をスウィングしている気分になれる。とても楽しい。今では、無駄にたくさんの3Dが出ているが この映画なら3Dにするだけの価値がある。
題10位 「バットマン ダークナイトライジング」
原題:「DARK KNIGHT RISES」
監督:クルストファー ノーラン
映画評は7月25日に書いた
2005年「バットマンビギンズ」、2008年「ダークナイト」に続いて、この2012年の作品が3部作の最終作になった。主演のクリスチャン ベール、執事のマイケル ケーン、ウェイン財閥代表のモーガン フリーマン、3人の芸達者が演じて、とても良い。両親を目の前で無慈悲にも暴漢に殺された少年が正義とは何か、そのために戦う真の強さとは何かを人として傷つきながら成長していく姿を見ることが出来る。悩めるバットマンに共鳴できる。素敵なラストシーンだった。