2011年7月2日土曜日
2011年 上半期 映画ベストテン
2011年の1月から6月末までの間に 映画館で見た新作映画は26本、ヴィデオは14本 合計40本。
それ以外に、映画館で HD劇場ライブのフイルムのオペラを数本観た。その中では ロンドンのロイヤルオペラ シアターの「カルメン」と、ニューヨークメトロポリタンオペラの「ヴァルキューレ」が良かった。本当のオペラを劇場で観たのは オペラオーストラリアだが、「カルメン」がやっぱり良かった。
2010年に観た 映画ベストテンは、「終着駅トルストイの謎の死」、「剣岳 点の記」、「アバター」、「インセプション」、「シャッターアイランド」、「ゴーストライター」、「ソーシャルネットワーク」、「リミット」、「インヴィクタス負けざる者たち」、「ドン ジョバンニ」以上の10作品だった。2011年の上半期のベストテンは、
第1位=「英国王のスピーチ」 1月23日の日記で映画評を書いている。
第2位=「ザ ファイター」 1月25日
第3位=「ヒア アフター」 2月15日
第4位=「127時間」 2月24日
第5位=「コンヴィクション」 3月5日
第6位=「ソース コード」 5月11日
第7位=「オレンジとサンシャイン」 6月14日
第8位=「ノルウェイの森」 6月27日
第9位=「ザ ウェイ バック」 3月28日
第10位=「ふたりの女」
第1位 「英国王のスピーチ」
主演のコリン ファースがアカデミー主演男優賞をとり、脚本家が脚本賞を受賞した。この脚本家は 自分の書いたものを 亡くなった英国王ジョージ5世の妻(エリザベス女王の母親)に見せて、映画化の許可を願い出たが、彼女に「吃音障害を持った夫のことは、余りにもつらい思い出なので 映画化するのは自分が死ぬまで待って欲しい。」と言われた。彼女はとても長生きしたので 脚本家は20年余り待たなければならなかった。20年間暖められてきた作品がようやく映画化されて、芸達者な訳者ばかりが出演して完成度の高い映画になった。
コリン ファースも良かったが、人を食ったような言語療法士のジェフリー ラッシュの演技は本当にうまい。映画館でオージー俳優のジェフリー ラッシュが出てくるたびに 観ていたオージーたちが手をたたいて笑い転げ、男の友情に涙する様子が これまたおもしろかった。
第2位 「ザ ファイター」
クリスチャン べイルの役者としての徹底した役作りに ただただ感服、脱帽する。役になりきるということが こういうことなのか。「マシニスト」で体重を35キロ落とし、カンボジアの米軍捕虜役で20キロ痩せて、「アイアム ノット ゼア」で ボブ デイランになりきって、「ダークナイト」のバットマンと、「ターミネイター4」で 立派で美しい肉体美を見せてくれた。
この映画では ドラッグ中毒の元ボクサーの役。ガリガリにやせ細った体で、鋭いジャブを出す。予告編のフイルムを見た時は、彼だとわからなかった。弟役のマーク ウェルバーグも ごまかしの効かないボクサーの体作りで、しっかりクリスチャン べイルの役者魂を引き継いでいた。この映画も芸達者の役者ばかり集めていて ほんの端役まで手抜きがない。優れた映画だ。
第3位 「ヒア アフター」
心に傷をもった人たちの 心の再生を描いた クリント イーストウッドが作った32番目の映画。愛する人を突然失ない、哀しみを持っていく場を持たない人にとって とても慰めになる映画だ。
第4位 「127時間」
単独登山中 落石に手を挟まれて動けなくなり 自ら腕を切り落として 127時間後に生還したアーロン ラストンの実話。軽やかな音楽とともに ジェームス フランコが岩山に登り、自然と戯れる。とても素敵な役者だ。アメリカ ユタ州の広大な自然が美しい。山を愛する男は みんな 孤独だが勇敢で心優しい。
第5位 「コンビクション」
身の覚えのない殺人を犯したとして収監された弟を救うために、シングルマザーの妹ががんばって弁護士になり 無罪を勝ち取り弟を連れ戻す 実際にあったお話。ヒラリー スワンクのがんばりが、迫力満点で 勇気をもらえる。
第6位 「ソース コード」
アフガニスタンで戦死した空軍パイロットのジェイク ギレンホールが 死ぬ直前の脳の記憶装置を 実験的に利用されて これから起こるテロを事前に食い止める という近未来SF映画。名作「ジョニーは戦争に行った」のような 優れた反戦映画に仕上がっている。
第7位 「オレンジとサンシャイン」
イギリスとオーストラリア政府の合意によって 1970年代までの間に 13万人のイギリスの子供達が ボートに乗せられてオーストラリアの孤児施設などで 強制労働を強いられたという 歴史的事実を暴露した映画。つい最近になって両国の首相が 議会で正式に謝罪したが 謝って済むことではない。人口たかだか2千万人の国に 17万人の傷ついた子供達がいる。その労働力によって発展してきたオーストラリアの恥ずべき歴史の暗部を前にして、言葉もない。
第8位 「ノルウェイの森」
村上春樹の原作を ベトナム人のフランソワ トリュフォーと言うべき トラン アン ユン監督が映画にした。音楽と映像が美しい。会話がなくても音楽と映像だけでも 完成した映画になっている。
第9位 「ザ ウェイ バック」
1949年にシベリア流刑地から脱走して ゴビ砂漠を越えヒマラヤを迂回して インドまで逃れたポーランド人とロシア人捕虜の実話。ナショナル ジェオグラフィックが協賛しているだけあって 雄大な自然が素晴らしい。6500キロを自由を求めて歩いた男達に感動する。
第10位 「ふたりの女」
1960年作品 ビットリア デ シーカ監督。ソフィア ローレン主演 ジャンポール ベルモンド共演の白黒フイルム映画。若いときに これを見逃していたので どうしても観たいと長年思っていたが、VHSフイルムしかなくて手に入れようがなかった。2006年に「クラシックシアター」名作シリーズで 2本の古い映画と抱き合わせでDVDが出されたので ようやく手に入れて観ることが出来た。
第2次世界大戦中 ローマに住んでいた シングルマザーのソフィア ローレンは 13歳の娘を連れて田舎に疎開する。ロ-マは 日々空爆で危険になっていて、田舎に通じる道も、連合軍のスパイや、ドイツ軍や、イタリアの軍事政権で混沌としている。避難の途中で 母娘はモロッコ兵によって輪姦される。自分だけが傷つくならいい。しかし自分の娘がひどい事をされるなんて許せない。ソフィア ローレンの大きな瞳が絶望し、素足で土を蹴って前に進んでいく姿に圧倒される。大昔の名作を観ることが出来て 嬉しい。