2010年10月3日日曜日

キンバリー10日目 ホールスクリーク




アーガイルダイヤモンド鉱山から350キロメートルの距離を走る。着いたところは ホームズクリーク、アボリジニーの町だ。
1885年に金が発見されて 牧畜ばかりでなく鉱山として栄え、ゴールドラッシュで、一挙に人口が増えた。今は人口4000人。


町に行く途中に、「チャイナ ウォール」という奇観をほこる名所がある、と言うので行ってみた。なるほど1000メートル近い岩壁の先端だけが白くギザギザになっていて、切り立っている。それが見ようによっては、中国の万里の長城に見える。岩岩の白い先端は、クオートストーンで、自然に山の侵食をくりかえすうちに、露出したものだという。カメラに収めて 険しい岩壁と砂漠のなかの ちいさな町に戻る。

ホールスクリークの町は よく整備されていて、学校も職業訓練校もある。小学校には25メートルプール、病院、スーパーマーケットもあるし、パブも2軒ある。
公園は広々としていて、ヴィンセント イヤーリの銅像が誇らしげに立っている。彼はアボリジニーの英雄。アボリジニーの公民権獲得のために大掛かりなストライキを戦いとって、キャンベラまで行って アボリジニーの人権抑圧を訴えた人だ。となりには、金鉱で、昔使われていた掘削機や蒸気によるピストンなどが、展示されている。木陰には アボリジニーの老人達が座り込んで のんびりしている。

今までオーストラリアの北端ダーウィンから西オーストラリア州キンバリーをリ旅行してきて、ホールクリークは いちばん「アウトバック」といわれる 文明のどこからも一番遠い、田舎の過疎地だ。しかし、ここのモーテルで出された食事が一番 本格的な料理で、それが今までに無く とても美味しかった。オーストラリアはイギリス人の移民で出来た国だから、料理には何も期待できない、と言う事実が常識だ。肉は焼くだけ、野菜はクタクタに茹でるだけ。生ぬるいビールと砂糖の乗った馬鹿でかいケーキのデザート、これが典型的なオージーデイナーだ。

このモーテルのレストランは、まず外見からしてファンシー。赤一色の壁と椅子とテーブル、テーブルナプキンまで深紅。壁にはジェームス デイーン、フランク シナトラ、マリリン モンロー、サミーデイヴィス ジュニアなどの写真が一面に飾られ、ジュークボックスには、プレスリーが、、、。
ビュッフェの料理は チキンのパイ皮包み、薄切りビーフのレバーロール、ビーフストロガノフに、ポトフー、野菜もサラダが5種類選べる。ケーキは昔々おばあちゃんが焼いてくれた硬いパンプキンケーキの砂糖乗せ とかいうのじゃなくって、柔らかくて甘すぎない上等のマンゴーケーキとチョコレートケーキだった。久しぶりの料理された料理に 大満足。どんな田舎にも、ハリウッドファンは居る。そしてファンシーな趣味、良いテイストをもった人たちはいるものなのだ。

翌朝、職業訓練学校を覗かせて貰う。
40人の若い人たちが ここで職業訓練を受けている。ビジネスコースと鉱業コースとがあって、将来ダイヤモンド鉱山や その他の鉱山で働く人を育成している。アートコースもあって、見学を許された。たくさんのアボリジニーの絵画や 壁飾り、ガラス細工などの作品が無造作に積み上げてある。3-4人の生徒が キャンバス ペインテイングを製作中だった。
作品を交渉次第で購入することもできるかもしれない と聞かされていた。若い生徒達に絵画を教えている年配の女性の説明を聞いて 彼女自身の作品を見せてもらった。なかで、赤い土色に、湖を描いた絵が とても気に入った。絵の値段を聞いてみたら 300ドルという。財布を探ってみると 手持ちは200ドルとコインだけ、、。失礼を承知で、「あなたの絵が欲しいけれど これしかない。」と言って財布を見せると 彼女 優しい笑顔で、持って行きなさい と絵を包んでくれた。

絵は赤土の大地に5つの湖がある。ここがわたしの生まれたところなのよ と、穏やかな笑顔で説明してくれた。年のころなら60くらいだろうか。THELMA MOGINTY という彼女の名前が表の絵の下にサインされている。アイリッシュの苗字を持っている。アボリジニーの子供達の多くは キリスト教育を施すために 子供の時に白人家庭や教会施設に入れられて 実際の親と引き離されて育った。そのためイングリッシュネイムをもつアボリジニーが多い。
とても細かい 手の込んだ 時間をかけて描いた作品だ。アボリジニーの絵を その本人から手に入れることができた、ということが とても嬉しかった。一緒に見学した人たちから 買ったばかりの絵を見せて、見せて と請われて、うらやましがられる。他の人たちは アートクラスのマネージャーを通して絵や作品を買おうとしたが 高価な値を言われて 買うことが出来なかったそうだ。わたしが、クラスに中に入っていったとき、絵を売ってくれた人と目が合って、自然と彼女と会話ができたのだったが、そうして絵を買うことが出来たのは 幸運だったようだ。とても嬉しい。うちの家宝ができた。
きょうもビールが美味しいはずだ。

写真は、1)購入した絵:オイルペインテイング 2)バオバブの木の実に彫刻:アボリジニーアート3)チャイナウォール