2010年5月31日月曜日
オーストラリア日本の調査捕鯨を国際提訴
5月28日、オーストラリアの外相ステイヴン スワンは、「南氷洋での日本の調査捕鯨を止めさせる為にオランダ ハーグの国際司法裁判所に公式に提訴する。」ことを発表した。
2007年 労働党のケヴィン ラッドが政権交代したときの 選挙公約のひとつが、やっとのことで実現することになった訳だ。遅すぎる決断ともいえるが ようやく実現することになったことを評価したい。世論調査では オーストラリア人の ほぼ100%が捕鯨に反対している。あたたかい海で出産したクジラが エサを求めて空腹の長い旅をして オーストラリアを通り過ぎて南極を回遊するときに、はるばる遠く日本からきた捕鯨船に捕まり殺されるのではたまらない。冬の晴れたボンダイの高台で クジラが潮を吹く姿が頻繁に見られる。クジラはオーストラリア人にとって天然のペットのようなものだ。海洋動物は私たちと、これから生まれてくる人たちとの共通の財産だ。長いこと絶滅の恐れがあるとされ、保護対象として討議されてきたザトウクジラやナガスクジラなどを、獲って食べるべきではない。
国際捕鯨委員会(IWC)が、この6月にモロッコで開催され、日本の調査捕鯨について 話し合いが続行される。それに先立つ4月、対立が膠着したままのオーストラリアと日本の関係を 打開するために、議長の改定案が出されていた。改定案では、日本の南極海での日本の調査捕鯨で、「捕獲枠を 年間205-410頭まで、と従来の半分以下にし、日本沿岸の捕鯨を年120頭まで許す」というものだが、これに対して日本側も、オーストラリア側も受け入れを拒否していた。オーストラリアは、一貫して調査捕鯨も商業捕鯨も認めない立場だ。
1972年、国連人間環境会議で、商業捕鯨の一時停止(モラトリアム)を米国が提案、1982年に、IWCでモラトリアムが採択された。2年後の1984年に日本が南極海鯨類捕獲調査計画を開始、以降、国際的な批判をあびながら日本は調査捕鯨という科学の名をつけた商業捕鯨を続けている。
私は 野生動物保護の立場から、商業捕鯨にも調査捕鯨にも、沿岸捕鯨にも反対だ。日本は、世界中から顰蹙をかっている「クジラを食べる野蛮人」というレッテルを返上し、捕鯨を中止し、国際社会と協調すべきだ。捕鯨ひとつのことで、国際社会から孤立している姿をはっきり認識しなければならない。そして、日本の独自文化の尊厳を取り戻し、知性ある外交での国際間のリーダーシップを持つべきだ。
調査捕鯨にも商業捕鯨にも沿岸捕鯨にも反対な理由を以下にあげる。
1)他に蛋白源となる食品が豊富な日本で 鯨肉を食べ続けなければならない理由がない。鯨肉を食べるのは日本の伝統文化だという歴史的事実はない。都市に住む多くの日本人が鯨肉を食べ始めたのは敗戦前後の食糧難の時期だった。鯨肉が日本人の蛋白源だったという歴史的事実はない。
2)和歌山県太地町、北海道網走市、宮崎県牡鹿地区など、一部の日本沿岸に残されている鯨漁は伝統的遺産であるが、現在、この地域の経済基盤が 唯一鯨漁に依存しているという事実は 全くない。
3)海は誰のものでもない。そこに、生息する野生動物を 世界の顰蹙を受けながら日本だけが 殺して食べ続けて良いとは思えない。野生動物は、殺されて人の食料となる家畜とは全く異なる。
4)殺生方法が残酷きわまる。日本側は度重なるIWCからの 殺生方法についての批判に対して、「瞬時に殺している」と弁明しているが、逃げ回る鯨をモリで突き、力尽きるまで泳がせて引き上げて、殺している。沿岸鯨漁では 岸に追い込んで一昼夜網で囲み、突き棒で一頭一頭殴り殺している。鯨やイルカなど、自由に大海を泳ぎまわっていた野生動物を、瞬時に殺す方法などあり得ない。
5)調査捕鯨予算の多くは 捕鯨した鯨を市場で売った利益で資金ぐりをしていることが明らかになっている。これでは公正で科学的な調査研究ができる訳がない。科学の独自性 独立性もない。科学と言いながらIWCが評価できるような科学的研究発表が、なされていない。科学の名を借りた悪辣商売だ。
6)鯨やイルカなど大型海洋動物は、水銀汚染されているので食用にすべきではない。厚生労働省でさえ、鯨肉の摂取は週40グラム以下にすべきだと言っている。現実に和歌山県太地町で鯨肉を食べてきた住民の毛髪から日本人平均の10倍を超える水銀が検出され、WHOの安全基準を超えていることがわかっている。危険とわかっている食物を妊婦や子供に食べさせてはいけない。
以上だ。今後の政府とIWCの行方を見守っていきたい。