2008年4月9日水曜日

また、鯨とドルフィンを食べないで


オーストラリアが 日本の捕鯨に強硬に反対しているのは 絶滅危惧種に指定されている鯨を調査目的といいながら捕獲して食肉として流通させているからだが、オーストラリアの観光産業の目玉であるホエールウォッチングを侵害し、また、南極のオーストラリア領を日本船が侵入して捕鯨を続けているからでもある。 野生動物はいったん絶滅すると回復することができない。人間社会は人口を増やし続け、たくさんの貴重な野生動物を絶滅に追い込んできた。

日本では 捕鯨を批判されたお返しに、オーストラリア政府が400頭のカンガルーを処分することについて オ-ストラリアのやっていることの方が残酷ではないか、という人たちがいる。 それはちがう。人間社会と動物が互いに協調しあって生きていくためにはある程度の動物の処分は止むを得ない。私達のペットの犬や猫も大切に飼うためには避妊手術をしなければならない。放っておけば1年に10匹以上子供を産むことになリ、そのまま全部を繁殖させるなどできない事情は、人間の避妊同様だ。 北海道の熊も保護動物に指定されているが 山から下りてきて人を襲うようになったら処分する。野性のねずみや兎は放っておけば畑を荒らすので駆逐しなければならない。

オーストラリアは日本国土の22倍の大きさに日本の6分の1の人口しかなくて、国の大半は砂漠大陸だ。人の数に比べて圧倒的に野生動物が多い。一度でもオーストラリアの国道を車で走ってみた人ならば 道路に小型カンガルーが車にひき殺された死体を あちこちに見たことだろう。カンガルーは繁殖力が強い。また 光に向かって走ってくるから 300キロも体重のある大きなカンガルーが車のヘッドライトに向かって走ってきて正面衝突すると、車は大破、命に関わる。カンガルーは羊や牛の牧草を荒らす害畜でもある。彼らの肉は寄生虫が多く食肉にも ペット用の肉にもならない。観光客が食べるのは食用に特別に繁殖されたものだ。今年に限らずカンガルーはプロのハンターによって、定期的に処分されてきた。従って400頭の処分に異論はない。

数年前、野生犬のデインゴが 観光客を襲い乳幼児が殺される事件がおきて百頭のデインゴが銃殺されたことがある。観光客が増え 自然の海辺でかもめなど襲って食べていたデインゴが 食べ物を確保できなくなって人を襲うようになった不幸な例だ。

これもちょっと前、クイーンズランドの国立公園で野生馬が増えすぎて 群れで走り回る野生馬に踏み潰されて、羊や牛の牧草地や水源が破壊されるので、やむなくヘリコプターで野生馬を撃ち殺したこともある。野山を駆け巡る野生馬の躍動感は言い様もない美しさだが、ヘリコプターから狙われて 撃たれても1発で死に切れない馬たちの様子はあわれだった。 悲しいことだが、人と動物が共に生きていくためには、ある程度の処分は止むを得ない。

しかし鯨やドルフィンは違う。鯨もドルフィンも一箇所に定住する動物ではなく 暖かい海で出産して 冷たい海で子育てをする移動性の動物だ。鯨とドルフィンが増えすぎて 魚がいなくなって漁師が干上がるということはない。ザトウクジラやナガスクジラが絶滅危惧種に指定されたのは 科学的な根拠があってのことだ。日本の捕鯨船に捕獲されなくても間違って漁師の網にかかって命を落とす鯨もドルフィンも少なくない。プラスチックごみ投棄の犠牲になって死ぬ個体も多い。環境汚染によって、かれらの体内水銀蓄積量は、格段に増えている。保護されるべき動物なのだ。

また、クジラ肉を食べることは、韓国人が犬を食べるのと同じで伝統だから 牛を食べる欧米人が鯨を食べる日本人を批判することも 鯨を食べる日本人が犬を食べる韓国人を批判することもしてはならない、と言う人もいる。 それはちがう。欧米人が食べる牛も、残念ながら韓国人が食べる犬も食肉であり、ペットでも野生のものでもない。食べるために繁殖されたものだ。それに反して、日本人は 野生動物を 日本だけのものではない海から勝手に取って食べているのだ。

オーストラリアが日本の捕鯨を批判することが白豪主義の人種差別だ、と言う人がいる。それはちがう。オーストラリアに限らず世界の目は、クジラを食べる日本人ではなく、それを奨励している日本政府のありかたを批判しているのだ。 オーストラリア人のなかに白豪主義者がいる、って日本の捕鯨推進団体のおっさんなんかにいわれたくねーよ。おっと、失礼!

水産庁のおじさんたち。そんなに鯨を食べるのが伝統だと信じるのなら、試験管ベビーから国内で育てて 養殖池で大きくして、養殖クジラを食べなさい。それができないなら、日本だけのものではない公海で日本人だけのために生まれてきた訳じゃない鯨とドルフィンをもう食べるな。もう食べるのを止してくれ。