2008年2月16日土曜日

ミュージカル 「ビリーエリオット」



キャピタルシアターで、ミュージカル「ビリーエリオット」を観た。

2007年の11月から 公演が始まって、好評で続行中。 A席:105ドルーC席45ドルまで。

ロンドンのヴィクトリアパレスで このミュージカルが 開始されたのが2005年5月で、まだ現在まで引き続きロングランで 上演が続行されている。2000年に公開された映画「ビリーエリオット」、邦題「リトルダンサー」を舞台化したもの。

背景は、1984年、マーガレットサッシャー政権下,緊縮財政策で、イギリス北東部の石炭の町は 炭鉱閉鎖の波にゆれていた。労働者組合は1年に及ぶストライキに入り、政府の合理化政策と、ストライキを止めさせようとする警官と戦っていた。 炭鉱夫の父と兄をもつビリーエリオットは12歳。小さい時に母が亡くなって 無骨な父と兄と祖母に育てられてきた。

父も兄もビリーに強くなって欲しくて、ボクシング教室に送り出すが、ビリーはひょんなことから、バレエクラスに紛れ込んでしまう。行き掛かり上、女の子達と一緒にステップを踏むうちに ビリーはダンスに興味をそそられて すっかり夢中になってしまう。バレエの先生も、ビリーの身のこなしから 彼にはバレエの才能がある と見抜いて、個人レッスンを始める。厳しい訓練ののちに ロンドンのロイヤルバレエ団のオーデイションを受ける段になって、ビリーは父と兄の猛反対に合う。おまけに炭鉱閉鎖が決まって ストライキにはいっている家族の生存権そのものが失われる事態に追い込まれたことを知って、ビリーは絶望する。

時がたち、ビリーが ひとりバレエを踊る姿を 偶然目にした父親はビリーには本当に才能があることを知って、炭鉱夫たちのストライキのピケを抜け駆けして スト破りをして お金をかき集め ビリーを連れてロンドンに行く。ロイヤルバレエ団に来てみると いるのはお金持ちの子弟ばかり。ビリーは気押されながらも 遂にオーデイションに受かる。 そしてビリーは 閉鎖される炭鉱に残る父と兄に送られて、本格的にバレエを勉強するためにロンドンに向かう。
というストーリー。

おもしろいのは、炭鉱の町、荒くれ男ばかりの家庭で ビリーが ボクシンググローブを首に下げたまま、バレエの楽しさに目覚めていくところ。顔も体も真っ黒になって石炭を掘る鉱夫と、クラシックバレエの優雅さ対照的なコントラスト。

息子を罵倒しながら、遂には息子の才能を信じて ストライキ中の鉱夫仲間から どんな屈辱を受けても 息子を支える父親の無骨で あつい愛情。

一見、ひ弱で、亡くなったお母さんの手紙を宝物にしている か細い12歳の少年が踊り子になることを夢見る けなげな姿。
親友の少年が女装趣味をもっていることへの 戸惑い。

素晴らしい舞台だった。何より驚いたのは、13歳の少年が プロの大人の役者と同格に、歌い踊るプロフェッショナルな姿。ミュージカルだから、例えば、バレエの「くるみ割り人形」のように バレエを踊るだけで進行するわけではない。ダンスもクラシックバレエだけでなく、タップダンスも アクロバット顔負けのジムナステイックも、モダンダンスもある、おまけに踊りながら、会話があり演技をしなければならないのだ。完成度の高い 素晴らしいパフォーマンスだった。3時間の舞台を、ビリーが、4人。かわるがわるに出演していたが、全く同じようで、どこで役者が変わったのか 全然わからなかった。

音楽:エルトン ジョン
原作;リー ホール(LEE HALL)
演出:ステファン ダルドリー(STEPHEN DALDRY)
配役:ビリー役の4人の13から14歳の少年は、オーデイションで決まった。    
LOCHLAN DENHOLM (メルボルン出身)    
RHYS KOSAKOWSKI (ニューカッスル出身)    
RARMIAN NEWTON (メルボルン出身)    
NIVK TWINEY   (シドニー出身)

やはり エルトンジョンは天才だ。暗くなりがちな炭鉱夫たちのストライキや警官との激突を、明るい力強さ たくましい歌とダンスにまとめ、随所に笑いと 生きることの喜びを歌い上げていた。

バレエの振り付けも すごく良い。12歳のビリーが、大人になったときのビリーを思い描くシーンで、ビリーと大人のバレエダンサーとが デュオで踊るところは、二人とも全く鏡のように 同じ動きで優雅に踊って夢のようだった。

素晴らしいパフォーマンス。 総勢70人の出演者はみなオーストラリア人。半分は ビリーの年齢だ。この舞台の為に、舞台練習をしながら学校の勉強ができるように、出演者達と一緒にいられる先生が ハイヤーされたという。友人が ロンドンの舞台を観て来て 感激して、シドニーでも観て、どちらも同じくらいに良かったと、目をうるうるさせて言っていた。 すごく良い舞台なので、お勧め。