2025年4月1日火曜日

トランプのロシア、ウクライナ間の停戦案

バイデン前米国大統領が無条件でウクライナに送った、総額1197憶ドルの武器代金を回収するために、トランプ現大統領は、ウクライナの鉱物収益分配協定への調印をゼレンスキー大統領に求めている。
トランプの意向を受けて、スコットベーセント財務長官が、ゼレンスキーに調印を求めている18項目の協定は、ウクライナを米国に売り飛ばすような協定だ。協定には、ウクライナのレアな鉱物だけでなくウクライナ全土の石油、ガス、未開発鉱床を含む全部の鉱物を、無期限に米国が採掘権を持ち、管理するという酷い内容だ。これにゼレンスキーがサインすると、ウクライナは米国の植民地になる。
ここに来て、ゼレンスキーが協定にサインする代わりに、NATOに入れてくれる約束はどうなったのか、トランプに聞いたら、彼はそんな約束はない、と激怒したという。

しかし事実は今年の1月に、英国ストーマ―首相とゼレンスキーとの間で、ウクライナの地下資源を英国と共同で開発し、英国が100%負担して利益を取るが、その代わりにウクライナの安全を保障する、という2国間の合意ができていた。もちろん英国はウクライナを単独で守らない、空約束だ。
安全を保障しないが、今までの武器費用を返済しろと迫る米国と、安全は保障するが鉱物は全部英国の物だと言い張る英国。

トランプは、もう一方のロシアの大統領プーチンにも激怒していて、どうして停戦しないのか、と恫喝している。トランプの停戦案をロシアが飲むわけがない。まず停戦して、NATO 軍を両国の間に平和維持軍として送る、というとんでもない提案だ。EUからの軍の派遣は、そのままEUの参戦を意味する。今までウクライナに武器を送っていたEUが、中立の立場で停戦を維持するわけがない。ロシアに対し開戦することになって、戦線拡大以外の何でもなくなり、EUは国境監視団、平和維持軍という名の攻撃型最先鋭の兵をロシアに送るだろう。仏国、英国、独国の要請を受け、求められたならば、オーストラリア政府まで平和維持のために派兵するとアルバニー二首相は言った。冗談ではない。

クリミア、ドネツク、ルハンスク共和国の独立を認め、ロシアにもウクライナにも帰属しない自治権を認めることを、ロシアのプーチンは開戦前から主張していた。彼らのことは彼らが決める。ウクライナは手を引くべきだった。また、ゼレンスキーはNATOに入れてもらって米国基地と英国基地のもつようになる夢を見るべきではなかった。
ロシアもヨーロッパ各国も、英国も、みんなみんなウクライナのオイル、ガス、鉱物を欲しがっている。それを武器産業が煽って戦争が起きて、また停戦という名の戦線拡大が起きつつある。

国家とは、国民に安全と平和を守り、それぞれの生活と命を保障する義務があるにも関わらず、、、。
なんということだろう。エイプリルフールでも笑えない。

2025年3月31日月曜日

50年前の日本の職場

日本の学生も、有配偶女性も103万円の年収を超えると、所得税の支払いが発生し、親や夫の会社からの手当の支給が無くなる。また収入が130万円を超えると、収入全体に掛かる15%ほどの社会保険料を払わなければならない。
だから、
税金も社会保険料も払わないで済むように、学生も主婦も、月に10万円程度の給料以上にならないように、時間を調整しながら働いている、という。
また5千人以上の大企業で働く女性の70%が非正職員で、同じ5千人以上の大企業で働く男性の70%が正社員という雇用形態を保っている。女性がいかに優秀でも時給1000円で働け、学生は親に、女性は夫に食べさせてもらえ、ということのようだ。
男女差別の醜い日本。

50年前大学でマスコミを学び、小さな業界紙新聞社に入り、女性の編集記者は初めてと言われ嬉しかったが、醜いセクシャルハラスメントを受けて1年後に退社。ずっと女性が働ける職場と思ってナースになった。悲しかったのは、新聞社に入社したとき、5人の男の新入社員同士で、ものすごく結束して仲が良くて、互いに新米で叱られながらも強い友情で結ばれていた。だけど1年後に社長からハラスメントが起きた時、嘘のように5人の結束が消えてみんな瞬時に離れて行って、孤立無援になったことだ。誰も話を聞いてくれなかった。今思い出しても胸が痛い。

オーストラリアに移住して30年目に入る。いまもナースをやっていて、オージー同僚たちに、日本の自慢話をしている。
実際日本の都立病院に居た頃、美濃部都知事の計らいで、ナースの為には寮も、保育所も確安で用意されていた。大きなナース用のロッカーがそれぞれにあって、その日に着た白衣は、備え付けのエアシューターで地下3階に送ると、翌々日にはパリっとアイロンがかかった綺麗な白衣が届けられた。風呂もシャワーも完備していた。「白衣をドーンとエアシューターで落っことすと、ピューンとアイロンのかかった白衣が届くんだよ。クリーニング代無料だよ。50年前の話だよ!!!」と言うと仲間の誰もが目を丸くして「日本ってすごい」と感嘆してくれる。その病院で2人の娘を持ち、職場の高い窓から下を見ると、よちよち歩く娘たちを含めた幼児らが病院のテニスコートで遊んでいるのが見下ろせた。真冬でも半そで短パンの幼児たち。幸せだったころの話。そんなのをオージー同僚はしっかり羨ましがってくれる。日本も良いことろが沢山あった。
しかし制度的にはこの半世紀、50年もの間、何も変わらず、女性は男性に食べさせてもらわなければ生きてこられないという、なんという差別社会。

オーストラリアでは正社員の時給より、非正職員の時給がずっと高い。非正職員には、年次有給休暇や有休の病欠がないので、当然だ。私は年6週間の有給休暇は絶対きっちり取る。
最低賃金は正職員で時給$24.10(2506円)、非正職員で$30.13(3133円)これはワーキングホリデイで来ている若い人も、バイト学生も共通で、最低賃金を守らない雇用主は罰せられる。
給料のほかに、給料の12%を雇用主は、それぞれの職員の積み立て年金に入金する義務がある。また12%は自動的に国民健康保険に引かれる。税金額も20%くらい引かれる。額面と実際の受取額のすごい違い! だから毎年給料アップを求めてフツーにデモをやる。
こうしてこの国で30年近く働いてきて、職場のセクシャルハラスメントや男女差別は感じないが、パワーハラスメント、ボスからの虐め、管理職のポジション争いの醜いやりとりは、しっかりある。自分が働く目的意識を持ち、常に向上意識をもたないと、蹴落とされるし、職場に留まっていられない。それは、どんな職場にも言えることだと思う。働くと言うことは、生きる事、男でも女でも大変だ。

日本で、職場や地域社会にセクシャルハラスメントを受けた人が、駆け込めるような場がないことは間違っているし、、、非正職員の時給がが正職員の時給より安いなんて絶対、間違っているし、、、シングルマザーが保育園や学童保育に子供を任せて働けないような地域社会は、間違っているし、、、仕事の悩みで自殺者が出るようなことは全くもって、間違っている。
性別に関係なく、年齢に関わりなく、学歴に関りもなく、熱意を持った者が快適に職場で働きながら、結婚したり、子供を持ったり、離婚したり、定期的に旅行したり、職場の仲間と誕生日を祝い合ったり、年を取っても大学で学びなおしたり、趣味を楽しんだりできる社会が、ぜんぜん間違ってないのだ。

2025年3月12日水曜日

アンチセミチズム法

豪州のNSW州では、この2月に、アンチセミチズム法という新法が施行された。
アンチセミチズム:反ユダヤ主義という民族差別行為を取り締まり、ユダヤ教信者が安心してシナゴクで宗教行事ができることを目的とする。
ガザでイスラエル政府によるパレスチナ人へのジェノサイトが止めようもなく、5万人の犠牲者が出ている状況で、パレスチナ支援の声が広がっているが、ユダヤ人団体の圧力に負ける形でこのような規制が法制化された。これで豪州のユダヤ人は特別に保護される対象になった。

パレスチナを支援することは決してアンチセミチズム(反ユダヤ思想)ではない。現在の狂信的イスラエル政府によるシオニズムを批判しているのだ。にも関わらずパレスチナへの人道的支援を呼びかけ、イスラエル政府を糾弾する動きに、アンチセミチズムのレッテルを張って規制しようとする動きが急速に進んでいる。
豪州では先住民族アボリジニが、総人口の2%を占めるが、それ以外の、98%は主に欧州からきた移民で形作られた国だ。その中には長い歴史の中で欧州で差別されてきたユダヤ人もたくさん新天地を求めて豪州にやってきた。総人口のうちユダヤ人がどれくらいの比率を占めるかの統計はないが、ユダヤ教を信ずる人口は、豪州の総人口の、0.4%とされる。わずかなそれらの人々を保護するためにアンチセミチズム法が新設された背後には、右傾化する世界情勢と、増えつつあるイスラム教徒の勢力を制したい政府の意思がある。ユダヤ教信者に比べれば、豪州ではムスリム人口は、少なくとも10倍いる。クリスチャンの国だから、ムスリムへの嫌悪感もあるだろう。

法規制ができた切っ掛けは、1月にシドニー東部ドーバーハイツのシナゴクが放火され、ユダヤ人宅の塀に落書きがされ、家の前に駐車した車2台に火がつけられた事件だ。これは3月10日になって犯人が14人逮捕され、アンチセミチズム法とテロリスト法で起訴されるようだ。報道ではムスリムのテロリストによるものとされている。

また2月13日にシドニーの公立病院で、男女2人のナースがソーシャルメデイアでユダヤ人インフルエンサーと会話をしていて、「私たちはユダヤ人はケアしない。そうよ殺すわ。」と軽口をたたいたビデオが大々的に公表され、ナースたちは逮捕起訴された。若者同士の軽口とソーシャルメデイアの影響の大きさを示すものだが、これ以来ナースへのアタック、公立病院への人々の不信と不満で私の職場も影響を受けた。

また政府はこういった事件を機にムスリムへの規制を明らかに強化している。昨年イスラエル政府は、パレスチナガザのハマスをサポートしていたレバノンヒズボラの宗教指導者、ナスララ師を暗殺した。イスラエル軍は、1トン爆弾を、80発投下して彼のいたヒズボラ本部を破壊し彼を殺した。ナスララ師はレバノンの政治リーダーというよりも宗教指導者として人々の信心の支えだったから、彼を暗殺した罪は大きい。2月24日彼の葬儀がレバノンのベイルートで国家行事として行われたが、豪州政府はこの葬儀に参加するために国外に出た人は、二度と豪州に戻ってこられないように、ビザも永住権もはく奪する、と発表した。ムスリムは心の支えだった宗教指導者を悼むこともできなかったのだ。

アンチセミチズム法が出来て、テロリスト法もできて、うっかりユダヤ人をサカナに軽口をたたくこともできなくなった。
こうして社会の監視が強化され、報道管制と言論弾圧が進行していく。
ユダヤ人で冷酷無比の守銭奴、スクルージを皮肉ったデイッケンズのクリスマスキャロルは、アンチセミチズムか?
あくどい金貸し老婆は生きてる価値がないと、ラスコリー二コフに思わせて殺させた、ドストエフスキーはもう読まれないのか????

2025年3月11日火曜日

腐敗するウクライナ政府とNATO

ウクライナ、ロシア間の戦争が始まり、3年目に入った。
開戦前、もともとウクライナのルハンスク州の3分の1、ドネツク州の半分の市民は、親ロシアでロシア国内のパスポートを持ち、ロシアの国政選挙には、国境を越えて投票しに行っていた。かねてからプーチン大統領は、ルハンスク、ドネツク人民共和国の独立を承認するように、ウクライナに呼び掛けていた。

しかしゼレンスキー大統領は、2021年10月ロシア、ウクライナ間のミンスク合意を破り、親ロシア地域をドローン攻撃し2600人の市民を殺害した。
火種を持ち込んだのは、ブッシュジュニア大統領で、ウクライナを、NATO軍に加盟させようとして内戦を拡大させた。1990年ドイツ統一の際には、米国がロシアに「NATO軍の管轄は1インチも東に拡大しない。」と確約した約束を簡単に裏切ったのは、ブッシュからオバマまでの米国大統領だった。
ルハンスク、ドネツク人民共和国のことは、国民投票で独立するのか、ウクライナに帰属するのか、住民の彼らが決めることだ。ウクライナが介入すべきではなかった。

2022年2月にゼレンスキーが国家動員令を発令してから、16歳から60歳までの徴兵が行われウクライナの人口2000万人のうち200万人の国民が参戦している。
EU,米国、豪州からもウクライナには義勇兵が参戦し、純粋にウクライナの領土を守りたいと言う動機の若者もいる。一方雇われてお金のために入隊する兵も多い。コロンビアが最大で、中南米から来た傭兵が最前線に立っている。彼らに払われる給料は、米国とEUの援助金だ。

ゼレンスキーは、国際調査報道ジャーナリスト連合によると、イギリス領バージン諸島にペーパーカンパニーを作り、戦争が始まったばかりの2年間足らずの間に8億5千万ドル蓄財した。現在の資産は18憶ドルだと発表されているが、エジプトの高級避暑地にも、イタリアのトスカーナにも、ヤルタと英国にも豪邸を持ち、キーウには4つのアパートを所有していることを、2017年ウクライナ政府に資産申告している。ほかにもコートダジュールとフロリダに別荘を持っていると言われているが申告されていない。

欧米がお金を出し、ウクライナに戦争を継続させるように充分な兵器を送り込み、ウクライナ人だけでなく最貧国から傭兵を雇って使い捨て、ウクライナのトップは欧米の市民の税金からなる支援金で私財をため込んでいる。 
また新たに英国が米国の代わりにゼレンスキーに送ることを約束した450憶ユーロは、英国が自由にできる資金ではなく、ロシアの凍結されている資産なのだ。これは窃盗罪という立派な犯罪だ。
こういった構造を、腐敗と呼ばずに、何というのだろうか。

ノームチョムスキーは、「人々を受動的にかつ従順に保つ賢明な方法は受け入れられる意見の範囲を厳しく制限しながら、その範囲内では非常に活発な議論を許すことだ。」と言った。トランプに侮辱されたゼレンスキーが可哀そう。味方になってあげて、どんどん武器を送ってあげようーもっともっと殺さなくちゃ、、と言い続ける軽薄な論争を、もういい加減止めよう。
武器を送るな。殺すな。

2025年2月26日水曜日

映画「教皇選挙」

映画「教皇選挙」
監督:エドワード エルガー
2025英国アカデミー賞作品賞受賞作
ロレンス枢機卿:ラルフ フィネス
ベリーニ枢機卿:スタンレィ ツッチ

バチカン教皇の死に伴い、教皇の信認を得ていたロレンス枢機卿が、教皇選挙の指揮を執ることになった。
教皇の死後15-20日のうちに世界から集まってきた120人の枢機卿の中から、選挙で3分の2の得票を得た新しい教皇を選び取らなければならない。世界で14億人の信徒を持つバチカンの元首、ローマ教皇の選出だ。
システイン教会は、選挙のために外部からは閉ざされ、密室で枢機卿だけで協議がなされる。4人の候補者がいる。米国人のベリーニ、カナダのトンブライ、イタリア人のテデスコ、とナイジェリアのナデイミだ。3分の2の得票数が得られないたびに、票は燃やされて黒い煙となって、システイン教会の煙突を見上げている信者たちを落胆させる。候補者同士の陰での争いが始まっている。互いの過去や落ち度が醜いスキャンダルとなって流布される。

まず女性問題でナイジェリアの枢機卿が候補を落とされ、次に金銭の横領でカナダの枢機卿が落とされる。おりしも,教会付近でイスラム教徒による爆破事件が起こり,怒ったイタリアの枢機卿が取り乱し、これは宗教戦争だとイスラム教信徒を侮蔑する差別発言をして人格を疑われる。
そこで立ち上がった、アフガニスタンのカブール出身の枢機卿がクリスチャンの原点に立つ感動的な発言をして、彼が新教皇に選ばれる。人格的にも彼は申し分ない。
しかし降ってわいたように、彼の秘密が暴かれる。秘密を追及するロレンスに向かって、彼は自分が神によって生まれ、神によって作られた人であると言いロレンスを説得する。
というストーリー。

一貫して選挙を取り仕切るロレンスの苦悩が描かれる。新事実が現れるたびに事実を追求し候補者を一人ひとり落としていく。そのたびに苦悩する。正しい判断をきちんと出していくロレンスは、まるで映画の中でキリストのようだ。ラルフ フィネスは苦悩する男を演じる適役と言える。
俗に、人は「セックス」と「金」で堕落するものだが、映画でもそれだけでなくむき出しの人種差別意識まで、崇高であるはずのバチカンの枢機卿の世界でも存在する俗っぽい姿が描き出されていて、残念極まりない。現実では、こんなであって欲しくない。

しかし現実に、ドイツ出身の前教皇も、小児性虐待に関与していた過去がずっと囁かれていた。また、
オーストラリア人で現教皇から全信頼を得て、バチカンの財務長官まで勤めていた、ジョージ ペル枢機卿も、2019年小児性的虐待で逮捕され、6年の禁固刑を言い渡され、実刑に服していたが2020年最高裁で逆転無罪となり釈放された。彼がレイプした少年の1人は自殺し、生存者が訴訟を起こした。
バチカンは公式に、被害者に謝罪すべきだった。
また、世界でも最も豊かな財政を持つバチカンの財務に常に不正が囁かれている。それを止めたいなら財政を公表すべきだ。

ここで、カトリック聖職者が男性ばかりで、結婚は許されないという何百年の歴史に終止符を打つべきではないのか。このまま男だけをトップに立たせるのか。
このまま聖職者による少年少女へのレイプを許すのか。
子供の従順さを利用して個人の欲望を果たすことで、子供を裏切ることは何よりも重大な犯罪だ。
また、このまま教会は、トランプ大統領と同じに「世界は男と女しかいない。」と断言するつもりか。間違っている。この世には男でも女でもない人が沢山居る。数万人に一人の割に、子宮も精巣も持って生まれる人がいる。多くは普通に生活し問題なく結婚する。あなたのとなりにも、そのような人が居て、知らないだけであなた自身がそうした人であるかもしれない。だから差別をしてはいけない。世の中は男と女しかいなくはないのだ。神はそのような人を、人として造られた。

カトリック教会は、変わらなければいけない。それを映画の最後でラルフ フィネスが、穏やかな笑顔で空を見上げ、やっと煙が上がって人々が喜び歓声を上げるシーンで語り掛けている、と私は解釈した。



2025年2月23日日曜日

映画「ブルータリスト」

映画「ブルータリスト」
上映時間200分、途中で15分の休憩が入る長編映画。
監督:ブラデイ コーベット。2024年ベネチア国際映画祭、銀獅子賞受賞、主演のエドリアン ブロディは、今年の英国アカデミー主演男優賞を受賞し、アカデミーでも候補作になっている。
美男とは程遠いワシ鼻、「八」の字の眉毛、これほどユダヤ人の典型的な顔の男優はほかになく、「戦場のピアニスト」では忘れ難い優れた作品を主演した。今回もピアニストに続いて、ホロコーストから生還した男の役を演じている。

映画はナチの嵐を生き延びて、難民としてアメリカに渡ってきた人々が、運ばれた船から自由の女神に迎えられ、喜び涙して激しく抱き合うシーンから始まる。しかし、彼らが船底からみたのは、逆さの自由の女神だ。行く先の困難を暗示しているかのようだ。

ポーランドのワルシャワで図書館や市庁舎などを設計、建設したキャリアを持つ建築家ラズローは、戦直後の混乱の中で妻と離れ離れになってしまった。到着したアメリカで富豪の実業家ハリソンに出会い、彼の妻を探し出しアメリカに呼び寄せる事を引き換えに、ハリソンの望む母親の名を冠した礼拝堂を建設することを約束する。

ラスローは依頼に合わせて巨大な街のコミュニテイ全体に貢献できるような、図書館やジムやプールを備えた教会の図を描く。建物の上の窓からは、正午と夜明けの光が差し込むと、教会の教壇に十字架の光が現れるような工夫を凝らしてある。
ラズローはナチから生還してきたが、深い傷をもっていて、生きることを渇望している。彼の激しい性愛も、絶望と苦渋の性愛も、アルコールやドラッグで踏み外さないと正気を保っていられなくなる精神の弱さも、ただただ痛々しい。

題名のブルータリストは、残酷な人の意味だが、この映画では建築様式を言う。フランス語で生のコンクリートを(BETON BRUT )というが、ロココ調などの装飾を凝らした様式ではなく、コンクリートを打ちっぱなしにして壁にペンキを塗らない、モダンで無駄のない建物のことを言う。このようなヨーロッパから来たスタイルや知的なラスローに、アメリカ人の依頼者は、優位性と同時にコンプレックスを持っている。

監督は若干36歳、今後が楽しみだ。映画の初めから終わりまで音楽の使い方が秀逸。不協和音の連発と、同時に流れる音楽に工事現場のくい打ちの音か製鉄所の雑音のような音が、低音に流れていて不安感を呼び起こす。楽しい映画じゃない、と主張しているようだ。

ナチズムによるユダヤ人迫害の歴史は、これまでも数々の優れた映画を生み出して生きた。
エドリアン ブロディの「戦場のピアニスト」、メリル ストリープ主演の「ソフィーの選択」、ケイト ウィンスレット主演の「愛を読む人」、ロベルト ベニーニ監督主演の「ライフ イズ ビューテイフル」、どれも忘れ難い名作だ。
600万人の殺された人々にはそれぞれ600万の「語り」があっただろう。600万人のユダヤ人の悲劇を言うなら、いま、このときに5万人のパレスチナ人はどうか。5万人の語るべきストーリーがある。自分たちの祖父や祖母が過去に痛みを受けた人々が、なぜパレスチナ人の痛みを自分の痛みとして感じられないのだろうか。



2025年2月17日月曜日

USAIDシャットダウン

米国大統領就任式で、新設された政府効率化庁のイーロンマスクが、スピーチのあと人々に向かって異様な敬礼をした。この日、トランプ大統領が矢継ぎ早にサインした沢山の大統領令の内容に、度肝を突かれた世の人々は、マスクの行状などに大して驚かず、話題にならなかったが、そのまま気にせずに通り過ぎてしまいたくない。
豪州では公共の場でナチのシンボルの鍵十字や、ナチ式敬礼をすることは刑法で禁じられている。違反者は1年の実刑と罰金230万円ほどが科される。

右手を胸に当て、腕を伸ばし手のひらを下に向けてから右上に掲げるナチス式敬礼の起源は、ローマー帝国のカイサルにある。 
カイサルは、ルビコンを超えアジア、北アフリカにヨーロッパのほとんどの国々を支配下に置いて、ローマに凱旋した時に、熱狂するローマの人々にこの敬礼で応えた。凱旋パレードは、背中に高く松明の火が燃える象の行列に導かれ元老院議員、楽隊、戦利品を陳列した馬車、捕虜になった敗者を載せた馬車があとに続き、兵士や市民にはボーナスが与えられ、祝宴は4回続いたという。コロシアムではテビレ河の水が引かれて海戦ショーや、剣闘士の剣技、400頭のライオン狩りを人々は楽しんだと伝えられている。

で、、、カイサルの真似をしたマスクだ。就任後、彼の最先鋭の
部下を連れてUSAIDに乗り込み、そのメインコンピューターの情報にアクセスして内容を検討ののち、大統領にシャットダウンするようにアドバイスしたという。
USAIDは1961年、ケネデイ大統領が393憶ドルを計上して創出された組織だ。1961年11月に人類学者を装った(確認できるだけで)12人の米国人スパイが南ベトナム中部山岳地帯に入った。彼らは200万人の文字を持たない山岳民族でベトナム政府に不満を持っていた。それを組織化して低地に住むべトコンと戦わせてベトコンを全滅させてべトナム政権を乗っ取る、というケネデイ大統領による分裂支配の実験だった。1962米国は南ベトナムに宣戦なしの戦争に入った。米国はこんな汚い手で、傀儡の反共サイゴン政府を作ったが、結果は散々たるものだった。ベトナム人によるベトナムは、他国がどんなに資金と武力をを投入しても民族独立の志を奪うことはできなかった。

その後、USAIDは、米国が仕掛けたすべての戦争に、CIAとともに、CIAの手足となって関わってきている。
1999セルビア攻撃、2003イラク攻撃、2011アフガニスタン侵入ではケシ栽培に関わった。2011リビア政府崩壊、ベネズエラの反チャベス運動、ブラジルのボルセナロ支援、中国武漢に生物研究所に出資してコロナ研究に力を入れ、2014ウクライナでマイダン革命を主導し、2021アゾフ連隊を支援した。

USAIDが、難民支援で救った命は数えきれないとしても、組織自体が望む望まないに関わらず、「世界で他国の政権転覆」と「内政干渉」に利用されてきたことは事実だ。最貧国を援助すると言うことは、それぞれの国の特殊性、国内事情やそれを握る経済構造に精通する必要がある。そういった情報は、軍や帝国主義者が最も欲しい情報でもある。良かれと思って援助することが、腐敗した新たな権力者を作り出す。また、どんな組織も大きくなって、豊富な資本がつくと腐敗する。組織というものが、必ず大きくなると腐敗するものだと言う事実を忘れてはならない。

ワシントンでのトランプの就任式に、アマゾンのジェフべゾズも、メタプラットフォームのマークザッカーバーグも、トランプに100万ドル寄付した後、式に同席していた。この2人の男たちのトランプへ忠誠を誓う態度の豹変は、ただの損得勘定だけではなかった、と思う。
カイサルも、ローマで暗殺されたあとは、しばらくはその死体を放置されたのである。

写真は都庁の建物に映し出されたゴジラ。会えて嬉しかった。