2025年11月13日木曜日

世界の石油埋蔵量

世界の石油埋蔵量を、その国の順位から見てみると、米国がどれほど世界の産油国を蹂躙してきたかがわかる。
石油埋蔵量第1位
ベネズエラ
今年の9月からトランプ大統領はカリブ海に原子力潜水艦、巡航ミサイル搭載の軍艦、ジェット機満載の空港母艦を配置して、たくさんのベネズエラの船を撃沈させてきた。中南米麻薬カルテルを取り締まるためだと言うが、公海で他国の船を拿捕することも、乗務員を取り調べることもなく問答無用に船を沈没させて乗務員を殺している。国際法にも国連憲章にも米国憲法にも違反している。
ベネズエラはコカインの生産国でなく、麻薬の流通国でもない。南米産コカインはコロンビアとエクアドルで栽培され、太平洋沿岸から米国に向かう。にも関らず民間船を撃沈させたうえ、ベネズエラの人々が民主的選挙で選んだニコラス マドロ大統領の首に5千万ドル(75億円)の懸賞金をかけた。
マドロ大統領は、前大統領チャベスの後を継いで、ベネズエラの石油を国有化した。世界一の埋蔵量を誇るベネズエラの国有財産だ。
それが欲しくて米国は長いことCIAを使って政権転覆をはかってきた。その手先がノーベル平和賞を授与されたマリアマチャドだ。彼女は、2002年、CIAの豊富な資金を得てクーデターを試みて失敗したが、米国やイスラエルにベネズエラに軍事介入するように要請している。米軍のベネズエラ介入を許してはならない。

石油埋蔵量第2位
サウジアラビア
この国は完全に米国に取り込まれている。自国の原油をドル建て決済で供給する代わりに、米国に安全を保障してもらう約束のために、国内にはたくさんの米軍基地を擁している。米国の思惑通り、サウジ連合軍はイエメンを攻撃しイランと対立している。

石油埋蔵第3位
カナダ
トランプは、大統領就任当時カナダは米国の一部だと言っていた。カナダのマーク カーネイ首相が米国に迎合しないとわかると、彼は米加間の関税を50%かけることにした。

石油埋蔵量第4位
イラン
1979年ホメイニ師によるイスラム革命後、イランは西側諸国に経済封鎖され石油、天然ガス、石油化学製品の輸出を止められ、核施設ではウラン濃縮を制限させられてきた。常に経済活動を監視され、核施設を検査されているうえ、経済封鎖によりイラン中央銀行の資産、3520億ドルの国家資産が凍結されている。
2025年6月には、イスラエル軍が事前にイランに密入国しドローンをセットして、遠隔操作でイランの対空防御施設を破壊して、大規模な空爆を開始、イラン軍指導者を暗殺し、核施設を破壊した。
これに続いて米軍はイランの3か所の原子力発電所を地中深くまで破壊するバンカーバスター貫通砲で攻撃。18時間で215トンの爆弾が投下され、1000人余りの市民が命を落とした。イスラエルと米国の軍事介入は許されない。

石油埋蔵量第5位
イラク
イラクに大量化学兵器があると報じさせ、イラクに侵攻した米英連合軍は、100万人のイラク人を殺した。実に人口の5%だ。サダムフセイン大統領を、その地位から引きずり下ろし反裸にして首に縄をかけ西側全メデイアの前で凌辱したあと絞首刑にした。独裁者サダムフセインを打倒した、と彼の銅像を引き倒した民衆は、いま、米軍基地に囲まれて植民地同様のみじめな姿をさらしている。サダムフセイン打倒は、米国主導によるオイルを強奪する目的で仕組まれたものだった。世界はまだ、この件について十分検証し反省していないのではないだろうか。

石油埋蔵量、第6位から10位は、クエート、UAE、ロシア、リビア、ナイジェリアと続くが、それぞれすべて米国が介入している。

環境保全という世界の潮流を逆行するトランプは、「掘って掘って掘りまくれ」と言っているが、その暴力的で地球破壊的な言動は許させるべきではない。

またガザの沖合には莫大な資源330億立法メートルの天然ガスが手つかずで眠っていることも忘れてはならない。



2025年11月11日火曜日

ホワイトオーストラリアン

去る11月8日土曜の朝、シドニーのニューサウスウェルス州(NSW州)議会前で、約60人の黒服ネオナチグループが集会を持った。よりにもよって彼らは「ABOLISH JEWISH LOBBY」(ユダヤ人圧力団体をつぶせ)というでっかいバンダナを前面にして20分間、示威的集会をした。ポリスに警備されながら、彼らは20分後に解散し人ごみに紛れて消えていった。シドニーの議会のあるマッコリー通りは議会以外には古い旧官庁のビルがあるだけで店もカフェもないから、土曜の朝に通行する人も居ないが、彼らはマスコミ受けを狙って行動した。

それを知って、労働党でNSW州知事クリス ミンは激高の記者会見をして「こんな人種差別者が公の場で集会することが許されるなんて、何という恥、実に恥ずかしい。州民を侮辱している。二度とこんなことが許されることがないようにNSW州の法規制を厳しくする。」と息巻いた。

豪州にはたくさんの差別禁止法がある。しかし現在の豪州連邦法でも、NSW州法でも、事前に申請されたデモや集会は、人々の安全を脅かさない限り禁止も、規制もできない。この団体は、デモをしたわけではないから、交通妨害を理由に規制できない。禁止されているナチのカギ十字を身に着けていないから逮捕できない。ヒットラー式敬礼をしていないから、人種差別法で検挙できない。民族憎悪を発言していないから反差別法で取り締まれない。
この団体名は「THE NATIONAL SOCIALIST NETWORK」(豪州社会主義ネットワーク)と名乗っている。ソーシャリストとは、もともと労働者階級の生活を社会保険制度によって、すべての国民の生存権を保障する制度のために働く人々のことを言うのだけれど、、、。

彼ら黒服黒マスクの団体は、「WHITE AUSTRALIAN」(白人だけの豪州)をモットーとしている人種差別、レイシズム団体で、白豪主義、ヒットラー礼賛、ユダヤ人虐殺説否定、白人優性主義、反ユダヤ、反モスリム、反パレスチナ、反アボリジニ、反先住民族、反LGBTQ、反移民、反難民、を標榜している。

しかし豪州の国民の4分の1は外国生まれ、そうした「移民」だけでなく戦後だけでも100万人の「難民」を受け入れ永住権を出してきた、移民と難民で形作られた国が豪州で、じっさい純粋な「ホワイトオーストラリアン」など居ない。必ずどこかで血はミックスされている。
日本も同じ。氷河期が終わって日本は中国大陸から切り離された。純粋な大和民族などという生き物は居ない。だから日本人ファーストとか、先住民差別や移民や難民差別をすることは、とても恥ずかしいことだ。

この黒服グループは、メルボルンを拠点に徐々にシドニーや、地方に影響力を浸透させてきた。論理が単純なほど多くの人を引き付ける。歴史に無知なほど、今の社会に不満な若者の心をとらえる。
だから、いつまでも放置して笑っていてはいけない。ミュンヘン一揆のヒットラー、そして今回の日本の選挙結果という前例がある。差別社会は誤りなのだ、ということを大人はあきらめずに、自分の周りの若者たちに語り掛けていかなければいけない。



2025年11月4日火曜日

中国のレアアース

10月26日から、韓国で開催されたAPECアジアサミットで、トランプ米国大統領は、カナダ、インドネシア、南アフリカ、豪州、フィリピン、東チモールなど24国のトップリーダーと顔を合わせて経済、通商問題の話し合いを持った。

注目されたのは、30日のトランプとシージーピン中国主席代表との会談だった。世界経済のナンバー1とナンバー2との6000憶ドルの交渉だ。トランプは、会談前には11月1日からすべての中国からの輸入品に100%の関税をかけると息巻いていた。
結果は100%の関税は1年先送りして、中国からのレアアース(希土類)は、これまで通り米国に輸出されることで合意が得られた。かねてからトランプは、「中国はレアアースで世界を人質に取っている」と中国を非難してきた。

文字通り、この20年間、中国は世界のレアアースの生産における圧倒的優位に立っており、中国からのレアアースがなければ、電気自動車のバッテリーも、スマートフォンも、戦闘機のレーダーも、風力タービンも、人工知能AIも、再生可能エネルギーシステムの半導体も、動かなくなる。戦闘機も生産できない。例えば、F-35戦闘機は1機に数千ドルのレアアースが使われているそうだ。
希少なのは、使用するに当たっての濃度の分離工程がきわめて複雑なためだ。中国は、レアアースの豊富な自国で採掘し、秀でた精製技術で世界全体の需要の90%を精製加工している。
また中国は、原材料のレアアースの生産だけでなく、電気自動車、風力発電、エレクトロ二クス、などの最先端技術でも優位に立っている。

トランプは、アメリカファーストと言いながら、イスラエルとウクライナに、米国製の武器を湯水のように注いできたが、米国の防衛産業、一つを取ってみても、中国からのレアアースがなければ、製造できない、実のところ、米国の武器防衛産業は、中国に依存している。
中国を脅し、卑しめ、見下し、宥め、懐柔し武器の原料を売ってもらって、作った武器で台湾をダシにして中国に戦争を仕掛ける、、、という漫画のようなことが今、世界では進行している。
最後に笑うのは誰だろう。

「死んだ男の残したものは」作詞:谷川俊太郎 作曲:武満徹



2025年10月30日木曜日

トランプ天皇を訪問

根っからの商売人、金儲けのことしか頭にないトランプ大統領が、頼まれてもいないのに日本に弾丸入国したが、着いて早々会ったのは、政治家でも企業家でもなく、天皇だった。

どうしてかな、と考えた。
これから大規模な世界制覇の大望をもって、戦争を始める予定のトランプにとって、どうしても腑に落ちないのは、日本人の天皇を崇拝する独特の国民性だったのではないか。人としての天皇に会って彼なりに理解しておきたかったのだと思う。彼にとっては、ワビだのサビだの武士道だの名誉の切腹だの恩だの義理だのと、理解できないことばかりだ。

太平洋戦争で天皇は「現人神}だった。国力に大差があり、勝てるはずのない戦争のために、日本人は戦争することを選び、300万人の命を「現人神」に差し出した。米国や豪州国の太平洋戦争に従軍した兵士たちの回顧録を読むと、食料もなく、武器もなく、連合軍に囲まれて投降するしかない状況で、日本兵が「天皇万歳」と叫びながら、待ち構えている戦車や機関銃を構えている戦陣に向かってくる姿が何よりも怖かった、とある。餓死寸前の真っ青な顔で、もはや武器もなく、それでも殺されるために走ってくる。天皇の名をもって他国を侵略し、天皇の栄誉のために捕虜になることを拒否して、武器もなく「天皇万歳」といって敵陣に向かってくる人の形相は、真に悪夢に出てくるほど恐ろしかったろう。

そうやって日本人は、侵略によって中国人と軍民合わせて1100万人、インドネシアなどアジアの国々で800万人、合わせて1900万人を殺した。そして対するアメリカ連合軍は日本軍人230万人、民間人80万人を殺した。
このようなことが繰り返されてはならない、にもかかわらず、日本の現政権は、すでに米国の連合国となり、軍備費を増強させる。

トランプは「天皇万歳」を叫んで敵陣に裸で向かっていった日本人の「魔訶不思議」を、実際天皇に会って、どう理解しただろうか。
キング万歳と叫んで敵陣に突っ込むようなチョロい国民だと感じただろうか。
横須賀米軍基地から次の日に飛んだ、韓国では全く異なった感触を得たのではないだろうか。
古い韓国の民謡、反戦歌「アリラン」



2025年10月26日日曜日

トランピャニフ

トランピャ二フというそうだ。
いま米国大統領とイスラエル首相によって世界情勢が書き換えられていっている。トランピャニフは、217億ドルの予算を使い、わずか365平方㎞のガザの土地に、7000トンの爆弾を落とし完全破壊した。第二次世界大戦で使われた爆弾総数よりも多くの爆弾で、6万7000人のパレスチナの人々の命を奪い、1万人と予想される人々を瓦礫の下に埋めた。

9月30日のトランピャニフ、ピースプランによって、南部から帰ってきた人々は、自分の家が瓦礫となって、いまだその下に埋まる子供たちや妻や夫や親たちを掘り出すことができない。
トランピャニフは、ガザ状況が世界に伝わらないように報道管制を強いたが、ガザに残ったジャーナリストたちによって伝えられた真実のためにイスラエル軍のターゲットとなって270人ものジャーナリストが殺された。停戦発効後のいまも殺され続けている。

ハマスは停戦合意の人質を全員解放したにもかかわらず、国連主導の支援物質トラックはいまだ封鎖が解けず、待機させられている。飢餓に陥る人々は空腹から解放されていない。
南部に強制移動させられていた人々が、ガザ市に戻るために安全を保障された通路に、黄色い線が示されているわけではない。通路からはみ出して走っていた、とされて11人の子供を満載した車が爆破されて全員が死亡した。標識があるわけではない道路から外れたと、誰がどう判断できるのか。
いまだハマスに連れ去られた人質の13の遺体を返せ、とトランピャニフは言う。イスラエル軍によって破壊されつくした瓦礫から、それを掘り返すために、エジプトから重機が到着するそうだ。1万人近くのパレスチナ人の遺体とともに、数台の重機で簡単に回収できるとは思えない。
イスラエルから返却されたパレスチナ政治犯たち、約120の遺体の多くは虐待された跡があり、腐食が激しく、DNA検査の器具もないため遺体確認もできないまま埋葬されている。

トランピャニフは、この2年のうちに、ガザの80%、ヨルダン河西岸、レバノン領の一部、ゴラン高原、ヨルダンの一部をイスラエル国家として手に入れた。トランピャニフは、もうすぐ米英主導の国際平和軍が編成されてガザに向かいます、と得意げに言う。

ガザ沖合に眠る莫大な資源、330憶立法メートルの天然ガスが、もうじきトランピャニフのものにされるだろう。初めから、これが目的だったのだ。

米軍は4500人の水兵、ミサイル駆逐艦、原子力潜水艦、巡洋艦、ごっそりそろえてカリブ海では、ベネズエラの11の船が、撃沈された。殺された船の乗務員は50人に上る。
米国にとってはベネズエラの国有財産である莫大なオイルが目的だ。それを奪うために、国際法も人道法もなく有無も言わさずに暴力で奪おうとしている。

そのトランピャニフに声援を送る、日本の腐敗した新政権。

不法、不正のまかり通る弱肉強食の醜い世界の前で、正気を保て!!



2025年10月12日日曜日

2025ノーベルピースアワード

10月11日ノーベル平和賞が授与されるのを、口を開けて待っていたトランプ米国大統領を素通りして、賞はベネズエラのマリアコリーナ マチャドに授与される、と発表された。

ベネズエラで民主的選挙によって選ばれた、現ニコラス マドロ大統領政権を完全に無視、侮辱するかのように、反政府運動家に賞金と賞状を授与するとは、ノーベル賞も地に落ちたものだ。あまりにも公正に欠けている。フェアではない。選挙では、故チャベス大統領の後継者として、チャベス派のマドロ大統領は、疑いもなく圧勝したはずだ。

賞を受けたマチャドは、米国から多大な資金援助を受けて反政府運動をしてきたが、それは米国が、反米チャベス派のマドロ大統領政権をつぶし、ベネズエラのオイルを奪取するのが目的だからだ。いまベネズエラのオイルは、国有財産になっていて、中国に輸出されている。米国国務長官のマルコ ルビオは、エクソンモービル社と深い関係にあるが、ベネズエラの国有財産であるオイルを、モービル社と契約させることでオイルの利権を乗っ取ろうとしている。マチャドは、そのためのコマに過ぎない。

マチャドはCIAの資金を使って、チャベス大統領罷免運動を起こし、有権者権利団体を設立して、チャベス追放クーデターに関与した。彼女はソーシャルネットワークXで、アルゼンチンやイスラエルに、ベネズエラに軍事介入すべきだ、唆していた。ノーベル委員会は、トランプに平和賞を授与すると世界中でブーイングが巻き起こるので、それを避けるためにトランプの小型繰り人形に授与することにしたのか。

トランプは、麻薬カルテルを取り締まる、と言い、カリブ海に軍艦を出して、ベネズエラの船を撃沈させている。9月2日に11人の乗組員ごと船を撃沈させ、9月15日には別の船を爆撃し3人の乗務員を殺し、9月19日には3人、20日に,続行けて、船を撃沈し4人の乗務員を殺した。合計21人の乗務員は、単に漁船に乗った漁師だったかもしれないし、善良な人々が日用品を運んでいたのかもしれない。今となっては何もわからない。仮に麻薬を運んでいたにせよ船を拿捕して乗員を取り調べ、証拠を上げて裁判にかける常識を省略して、何の予告もなく国際水域で一方的に船を沈めて殺すなど、人のすることと思えない。国連だけでなく米国内からも非難の声が上がって当然だ。公海で国際法にも国連憲章にも、米国の憲法にさえ違反している。

ベネズエラはコカインの生産国ではない。また麻薬取引国でもない。南米産コカインは、コロンビアやエクアドルで生産され、太平洋沿岸から米国に到着している。カリブ海からではない。トランプがカリブ海に軍艦を出してベネズエラの船を沈めているのは、麻薬撲滅が目的ではなく世界にベネズエラが麻薬まみれの腐敗した国だというイメージを作り、マドロ政権をつぶし、国家財産のオイルを盗み取ることが目的だ。マチャドは、そのための米国の操り人形に過ぎない。

トランプは、現ベネズエラ大統領マドロの首に5000万ドルの懸賞金をかけた。他国の大統領が、ベネズエラの人々が選び圧倒的な人気で大統領になったマドロに懸賞金をかける、などという無法社会は、私たちの歴史のどこにも見当たらない。こんな恥に満ちた不正、不公正で、頭のトチ狂った独裁者に、勝手なことをさせ続けてはいけない。世界は、正気に戻らなければ。
米国のベネズエラに対する軍事介入を許してはならない。マチャドのノーベル平和賞受賞は、悪い冗談よりも犯罪的だ。



2025年10月7日火曜日

マゴの日本交換留学

目の中に入れても痛くない、かわいい可愛いマゴが交換留学で日本に行った間に、外国人嫌いの人種差別主義者が日本の首相になったことは、皮肉な出来事だった。

豪州に引っ越して30年近くになるが、「純粋日本人」の2人の娘は日本人ではないパートナーを選んだので、マゴたちは「純粋日本人」ではない。姿も形も日本人ではない。
娘たちも外国で教育を受け、日本語の論文が書けないという理由で日本の大学には入れず、豪州の大学で学んだから、日本語能力は頼りなく、マゴともなれば日本語は話さない。

ヒットラーはユダヤ人絶滅を標榜して、純粋ユダヤ人と、父親か母親がユダヤ人の混血児も収容所に送ったが、ヒットラー自身が、実はユダヤ人の血を引く祖母を持っていたのではないかという話がある。 手塚治の「アドルフに告ぐ」は、ヒットラーがユダヤ人の血をひくという文書をめぐって、人々が醜い争いをする、という深い内容の漫画だ。

白土三平は、「カムイ伝」で、忍者と将軍と侍が息をのむような手に汗を握る長編作品を書いたが、これは徳川家康が被差別部落民の出身であるという文書をめぐって血を血で洗う抗戦を描いた作品だ。
ヒットラーは自分の中にユダヤ人の血が混ざっていることがそんなに嫌だったのだろうか。徳川家康は部落民出身だったかもしれないことを、どうしてそんなに恥じたのだろうか。

血は水よりも濃い、とか大和民族の血を誇るとかいうけれど、医療従事者の私の目からみれば、血にはDNAなどないし、血の大半の成分の赤血球は120日の命で、毎日入れ替わる。その血はタンパク質だから多く含むレバーを食べれば貧血に効果があるし、飲茶ではダックの血を固めた黒いソーセージが出てきて栄養がある。血など、それ以外に血の意味などない。

マゴはハイスクールになって、交換留学生として神戸に行って、京都でたまたま天皇が車で通り過ぎるのを見たり、奈良で鹿におやつを上げたりした。
16歳になったばかり、なんでも見たり体験したい時期の子供。体つきや顔つきが日本人と異なっても「人はみなおなじ地球人」と、等しく扱ってもらいたいと、切に願っている。帰ってきて「おばあちゃんの生まれた国、日本大好きだよ。」と言ってくれたら、それほどうれしいことはない。