2010年10月7日木曜日

ブルームの真珠養殖場



シドニーの家を出て、北部準州ダーウィンから西オーストラリア キンバリーを 2週間かけて旅行している。オーストラリアのなかでも アウトバック、秘境といわれるところばかりを旅行してきて、やっと、観光地ブルームについたところ。この旅の終わりが近ずいている。

ブルームの街を歩く。
街には真珠を売る宝石屋が ひしめいている。海岸沿いに広がった海辺の リゾートタウンには 宝石屋とパブと食べ物屋くらいしかない。ガソリンスタンドの横に ATMがあるのを見て、開けた街まで やっと来たことを実感する。いままで、アウトバックにいて、現金を使う機会もなかった。
せっかくだから、宝石屋を見てみる。お客がある程度 入ると 主人が真珠ができあがるまでの 説明をしてくれる。やはり、高いものは良い。とても手がでない。宝石屋もピンからキリまであって、ちょっと遊びに来て 友達や家族にお土産を、と思って手がでるくらいの値段の真珠は みんなブルームで獲って加工したものではなく 中国製だ。

街から 白砂の海辺が広がる ホテルのあるケーブルビーチまで バスで10分。ケーブルビーチクラブリゾートというホテル。ファイブスターだ。
そこからバスを出してもらって 真珠養殖場を見物に行く。バスで30分あまり 赤土のでこぼこ道を揺られて 小さな養殖場に港に着く。砂は真っ白なサンドストーンで、海は白濁したミルキーなエメラルドグリーン。カルシウムが多いために海の色が透き通ったグリーンでなくて、ミルキーな優しい緑色になっている。遠浅の海には アシやヒルギが蔽い茂り、ワニも海鳥も たくさんいる。陸には野生の馬までいた。鳥では、シラサギとトビが目立つ。足の長い優雅な鳥たちが 魚を獲り 巣を作っている。

船に乗り込み しばらく沖にいくと、海中に網が張り巡らされていて ひとつの網を引き上げて見せてもらうと 大きな真珠貝が6つずつ きれいに収まっている。真珠貝の大きさは15センチ四方くらい。2年かけて、真珠貝を大きく育てるのだそうだ。
真珠貝は上皮から唾液のような内分泌液を分泌する。貝の生殖器に核を埋め込むと その分泌液で核を大きく育てる。いったん、核入れのために貝をこじ開けられて 核入れをされた真珠貝は また6個いりの網に収まって 海に戻され波にゆられて 何度も位置を変えられ転がされて約1年 丸い形に育つように工夫されながらで育つ。 

核入れをする技術が一番難しいそうだ。優れたテクニシャンは1日に1000の核入れをするという。このへんのところを ミキモトは特殊な技術を持っていて、マル秘中のマル秘らしくて、日本のテクニックを盗もうとする 業界スパイが暗躍しているらしい。プロの潜水士を雇って 日本の真珠養殖場のサンプルを盗んだり そのへんは もう007の世界らしい。
でも、私が見物したノーテンキの真珠養殖場では、真珠貝をこじ開けて 核入れするところも見せてくれたし 見学者の中から やりたい人にもやらせてくれた。これがうまい人は85%の核の定着率だそうだ。ということは、15%は無駄になる訳だけど、、、。

核入れスペシャリストは とても良いお金で雇われて 短期の間にちょっとしたお金持ちになれる。説明してくれたお兄さんも その一人で、「ぼく85%の成功率」と自慢する。「3ヶ月で 1年分の稼ぎをもらってしまったたあとは どうするの?」と聞いたら 3ヶ月フィージーでサーフィンやって、3ヶ月カジノで遊んで、3ヶ月メイト(友達)とパブでビール飲みながらフットボールみるんだよー。と言っていた。じつにオージーらしい 国民平均的模範解答だ。

というわけで真珠貝の核入れの成功率が85%。その後 同じ貝に2度目、3度目の核入れをする。それごとに貝は成長して大きくなっていくから、できる真珠も大きくなる。しかし貝も若くはなくなるので、4度目のときには 成功率は落ちていって 5%くらいまでになる という。直径10ミリくらいの真珠は3回目の核入れでできたもので、成功率40%というから、やはり大きいものほど高価になる。直径15ミリくらいの 今人気の真珠は 一粒300ドルとかいう値段になるそうだ。

養殖場を見学してからボートを降りて 港にある養殖場の経営する店の中を見て回る。ここで見学者達は お茶とケーキを ふるまわれて 安楽椅子で休んだ後は、店の宝石を見せられて ついつい買い物をしてしまうことになる。
うっかりして私も 娘達にイヤリングを買ってしまった。一緒にボートに乗った人たちは、一粒15ミリの大きさの真珠のネックレスを思わず 何を血迷ったことか ついつい買ってしまっていた。良い商売だ。
ミキモトも こんなことをやっているのだろうか。そちらにも行ってみたかった。

真珠養殖場から帰って、ケーブルビーチを歩く。インド洋に沈む太陽を見ながら フィッシュ アンド チップスを食べる。ラクダに乗って海辺を歩く人たちが一列になって、ゆっさゆっさと進んでいく。一日 すっかり日焼けして ほってった体にビールが美味しい。

今日で旅を始めて2週間。
明日は最後の日。朝、海岸を散歩して 荷物をまとめて飛行期に乗る。ブルームからパースに飛んで、そこで乗り換えて、パースからシドニーへ。着くのは夜だ。明日の夜は 2週間の旅行を終えて、なじみのある枕で眠ることができるはずだ。
オーストラリアの北の先 ダーウィンから キンバリーを見てブルームまで下りてきた。
良い旅だった。
明日もビールが美味しいだろう。