オーストラリアでこの10月21日に行われた国民投票は、先住民の地位を憲法に明記し、連邦議会にアボリジニのアドバイザーを置くかどうかを問うものだったが、残念ながら否決された。
オーストラリアはキャプテンクックによって「発見」され英国人の侵略によって235年間人々が住んできた。しかしこの大陸では、2万年前から、アボリジニ、トーレス海峡諸島民が住んでいた。現在、これらアボリジニ、トーレス海峡諸島民は、オーストラリアに81万人、人口の3.2%いる。彼らがオーストラリアの先住民であることを憲法に明記し、欧州から来た人々が、植民し侵略してきた事実を謝罪し、彼らが連邦議会に直接提言できるように憲法を改正するというのは、ごくまっとうな、正当なことだ。
それは、総人口の3.2%の先住民アボリジニとノンアボリジニとの格差をなくすことにつながるが、その提言が、否定されたことは残念だ。現実にアボリジニは、ノンアボリジニの平均寿命では8年短かく、乳幼児死亡率も自殺率も、心臓糖尿病罹患率も2倍と、高い。にもかかわらず、国民の60.6%が、NO に投票した。
キャンベラ以外すべての州で提案が否決され、エメラルドの海、世界最大のサンゴ礁を誇るツーリストの州、クイーンズランドでは68.8%がNOと答えた。反対に、本島から一番遠い木曜島では、90%がイエス、国民投票の結果に島民は落胆している。
オーストラリアでは投票は義務で、投票しなかった人には罰金の請求書が来る。今回の投票では史上最低の投票率を記録して、250万人、実に7人に1人が投票しなかった。罰金を払ってまで投票したくない人、アボリジニの関心のない人、差別に自分は関係ないと関りを持ちたくない人、自分は民族差別者ではないと言いながら、少数者、障害者、フェミニスト、LGBTIQ+などマイノリテイから目を背けて避けていく人々が、とても多いことは、残念だ。NOを主張した大半は、アボリジニはすでに、十分保護されていて、これ以上特別扱いする必要はないという意見だ。しかし十分な保護を受けているかどうかを判断するのは、マイノリテイの保護されている側であって、マジョリテイの側ではない。圧倒的多数のアボリジニの声を謙虚に聞くべきだ。
今回の投票結果は60.6%がNOで、憲法改正に至らず、アボリジニが連邦議会に直接提言できるシステムを作ることができなかったが、アルバ二ジ労働党首相の提案そのものを評価したい。国民人口の3.2%の少数民族を、その地位を憲法に明文化し、連邦議会のアドバイザーに置くと言うことを実現している国が他にないからだ。
日本ではどうか。少数民族アイヌ省を国会に、在日中国朝鮮の人を議会のアドバイザーに、障害者による障害者省を、建設省や厚生保険省同様の存在として置くことができるか。それができれば少数者は生きやすい。すくなくとも差別的入管法や、LGBTIQなんじゃら法は成立しなかっただろう。
ブラジルのルーラ ダ シルバ労働党が率いる新政権は、人口169万人、ブラジル人口の0.8%の先住民族を尊重し「先住民族省」を新設した。先住民族団体の全国ネットワークから下院議員の当選した代表が、先住民族省の初代大臣に任命されて、アマゾン乱開発、森林破壊をくい止めるパワーを持つことになった。立派な判断だと思う。今後も注目していきたい。
パレスチナはどうか。ガザは。先住民族の土地を侵略し、75年間彼らの生きる権利を蹂躙してきたイスラエル国は、先住民族を尊重するどころか銃で追いやり、16年間ガザを封鎖し、自由を奪い、セトラーと呼ばれるシオニストが、新たな住宅を次々と建てている。国連はそれを違法だと非難しているが、止める力を持たない。
ガザで病院がミサイルで破壊され、先住民族がジェノサイトの対象になっている。国連は何をしているのか。国連平和軍を送って停戦を実現しろ。 民族差別はどこにでもある。差別されるものと差別する者とのギャップを埋めるためには、差別される側の声の耳を傾ける努力を常に続けなければいけない。マイノリテイの存在を過小評価するな!
武満徹作曲、谷川俊太郎作詞の「死んだ男の残したものは」を歌ってみた。
I am singing[ Shinda otokono nokoshita monoha ]( What dead man left ) Composed by Takemitsu toru , Lyrics by Tanigawa Shuntaro.
What the dead man left. He left his wife and a child. No other was left. no grave stone no cemetery.
What the child left. He left a wooden foot and tears. No other thing was left. No memory no record. What a soldier left. He left a broken gun and distored the Earth. No others were left. No peace no pacifist. What they left. They left me and you. No other people left . No men and women. What the history left. The history left shining today and bright tomorrow. No other thing was left. No others.