2023年10月5日木曜日

国民投票にイエスを!

今、オーストラリアでは、国民投票が行われている。最終投票日は10月21日だが、その2週間前から投票が始まっている。先住民族の地位を憲法に明文化し、連邦議会に彼らが提言できるようにする連邦憲法改正法案が上、下院で採決された結果だ。

憲法を改正してオーストラリアは、アボリジニートーレス海峡諸島民が、先住民族として6500年余り前から住んでいた土地であることを明記し、連邦議会に先住民族のアドバイザーを置くことにする、という提言だ。
投票は選挙同様、国民の義務でその投票義務を果たさないでいると罰金刑が科される。用紙に書き込むのは、イエスかノーだけ。

結果がどうなるかわからないが、現在保守派自由党から労働党政権になったので、ごく自然な流れだったと思う。
2008年、前労働党ケビンラッド首相は、政権を取ってすぐ先住民族アボリジニに対して、親子を引き離し、子供を強制的に取り上げて西欧の教育を強いた、ロストゼネレーション政策に対して公式な政府からの謝罪をした。いま活躍中のアボリジニのスポーツ選手、政治家、人権活動家などの多くは、彼らの親たちが、この強制教育の犠牲者だった。この人たちが生きているうちに、政府の植民地政策が間違っていたこと、重大な人権侵害を冒していたことを認め、国として謝罪した意味は大きい。ケビンラッドはよくやったと思う。

アボリジニがオーストラリアのFIRST PEOPLE(最初の人)、先住民族であり、独自の言語や文化を持った人々だと公式に認めることは、欧州人によるオーストラリア侵略、植民と、アボリジニの虐殺の歴史を認めるということだ。英国帝国主義の誤りを認めることでもある。
植民地としてのオーストラリアは、はじめの20年間は英国の刑務所として機能した。移住者の4分の3は囚人で、人口が急増したロンドンなどで犯罪人の大半は上流社会を不安に陥れるからという理由で国外追放となった。囚人の40%がアイルランド人、3分の1が女囚だった。女囚の65%は家政婦、20%が娼婦だったと記録されている。ともかく英国の国策として送り込まれた囚人は刑期を終え、農地を得て、そこに住む先住民族を奴隷化し、奴隷にも値しないと言う理由で「害蓄」として殺しまくった。クイーンランド州やタスマニア州では、アボリジニ人口がゼロになるまでジェノサイトを徹底した。
このような200年の歴史を、憲法に明記することによってはじめて歴史を正しく見ることができるようになるだろう。帝国主義による植民、侵略がいかに人道に反することであったか、改めて認識しなければならない。

この国で先住民族は平均寿命が、8年も短い。私がこの国に来た1996年は、アボリジニとノンアボリジニでは平均寿命が12年も異なっていた。差が縮小してきているとはいえ、自殺率はアボリジニが2倍、疾病率も乳幼児死亡率も高い。失業率も犯罪率も高い。北部準州では、今でもアボリジニに深夜過ぎるとアルコールを売らないという法がある。差別だとして半年してそれを解除すると、一挙に家庭内暴力が増え、被害者たちが音を上げたため、再び深夜のアルコール禁止令が発動されている。問題はたくさんある。しかしこれらのギャップを埋めていくこと、それが入植し、侵略し、虐殺してきた人としての進むべき道だ。

オーストラリアで27年暮らしているが、アボリジニの友達は居ない。人口は総人口の3.2%にすぎない。保護政策によって人口はここまで回復した。
でも以前シドニーの公立病院、心臓外科病棟に勤めていた頃、アボリジニのおばあさんが心筋梗塞で入院してきた。この方は手術の甲斐なく亡くなった。そのとき付き添いで来ていた親族の方々が、祈りの儀式をした。祈りの歌を歌いながら死者のベッドのまわりを列を作って回りながら踊った。夜明けで、深闇だった窓からわずかな光が差し込んできて、アボリジニの歌と祈りが厳粛な、それでいて優しい愛情に満ちた時間を作っていて、その姿に心打たれた。
投票にイエスを!

I am singing 「ALWAYS REMEMBER US THIS WAY」 written by LADY GAGA.
レデイ―ガガの「いつもこうやって思い出す」を歌ってみた。バンドを一緒にやっていた恋人に死なれた人の悲しい歌。
意訳は
あなたの目の中で  アリゾナの空が燃えている   あなたは燃える火を捕まえようとして   カルフォルニアの金みたいに私を焼き尽くす   あなたは私の中に光を見つけてくれた   息が止まる   言葉が出てこない   いつもサヨナラを言うたびに傷ついてた    陽が沈み  バンドが演奏が終わり  わたしはいつもこうやって思い出す     夜になると詩を書く   どうやって韻を踏むのかしらないけど  やってみる   だけど私にわかることは  どこに行きたいか   私の1部であるあなたは  決して死なない    だから私が息を止めるとき   言葉が見つからなくて   いつもサヨナラを言うたびに傷ついてた   陽が沈み   バンド演奏が終わると   いつもこうやって思い出す