2021年10月1日金曜日

「椰子の実」をめぐる島崎藤村と柳田国男

「椰子の実」を歌ってみた。1901、島崎藤村が出版した詩集「落梅集」に収められている。作曲大中寅二。
舞台は愛知県渥美半島。島崎藤村の友人、柳田国男が大学生2年生で、ひと夏を過ごし伊良湖岬の海岸を歩いていたときに、椰子の実を見つけた。それを聞いた島崎藤村が、それを詩にした。

のちに民俗学者となる柳田国男が、椰子の実を見て、黒潮に乗って南洋諸島からその実が流れてきたように、日本民族も南洋から渡ってきたのではないかと考えた。柳田は、これを契機に日本人がどこから来たのか考察するが、仲の良かった島崎は、椰子の実をセンチメンタルな旅人の心に託して歌を作った。椰子の実ひとつについて語り合った二人が、そののちに民俗学者と文学者になっていったことは興味深い。
歌詞は古い日本語なので、日本で教育を受けていない娘たちに藤村の詩は、スペイン語で聖書を読むより難解なので現代語にしてみた。吉丸一昌の「早春賦」を歌った時も???だったから。
 名も知れない遠い島から 流れ着いた椰子の実
 故郷の岸を離れて どれほど長い旅をしてきたのか
 実のなっていたもとの樹は 今もなお 茂っているか 
 枝はなお 影を作っているか
 わたしは波の音をききながら ひとり旅をする人
 椰子の実を胸に当てれば 旅人の憂いが身にしみる
 海に沈む夕日をみれば 故郷を思い涙ぐむ
 遠い旅路で思いをはせる いつの日か故郷に帰りたい

I am singing " A Coconut" written by Toson Shimazaki and Toraji Daichu in 1936.
A traveler found a coconut fruit drifting on the surface of water in the seashore in Aichi prefecture. That fruit might be arrived from South West Island and traveling days and months. Like the coconut fruit the traveler has been traveling alone. His sentimental memory flushed back, then he decided some day he will back to his place where he came from.