2021年7月15日木曜日

沢山の人が死ぬだろう

                    
シドニーでは6月29日から7月30日まで、1か月のロックダウンとなった。
オーストラリアでは昨年初めから、外国から人を入れない、国民を外国に出さない、という徹底した「鎖国政策」で、コビッド流行を抑えてきた。EUや、米国、インドですさまじい流行が繰り返されて、米国での死者が60万人、ブラジルでは40万人を超えてもオーストラリアでは、コビッドゼロと言っても良い状態を保ってきた。外国に居て自分の国に帰れなくなったオーストラリア人が、4万5千人を超えても、頑として政府は、その国境を開けなかった。

しかし4月末から国民の2%しかワクチンを打っていないインドで、これまでのコビッドの数倍感染力の強いデルタ型が猛威を振るい、1日で何千人もの死者が出るニュースが流れ、これまでの鎖国政策を強化しなければならないときになって、「特殊事情」でインドから帰国してきた人を空港から隔離先のホテルに送った、リムジンの運転手からデルタ型が入ってきた。政府が5月2日に、新しいセキュリテイー法を導入して、インドから帰ってきた人に、罰金$6600、5年間の実刑を課したにもかかわらず、だ。緊急事態にこのような強力な法が、定められると、必ず人権団体などが猛反対する。政府が総攻撃にあって腰砕けになったところでデルタ型が入ってきた。

いま私たちは外出禁止、1日1回1人だけ家から10キロ以内なら必要最低限の買い物か、エクササイズに出ることができる。冠婚葬祭禁止。家族に会いに行くことも禁止。戸外でマスク、人との間隔は2m。町ではスーパーマーケット以外どこも店は開いていない。
感染者がでた家やアパートの前にはパトカーが常駐して誰も外出できないように監視。エッセンシャリワーカーは、3日に1度PCRテストをし、その結果を持って出ないと働けない。
最低の状況だが、少しマシなことはこの1年で、人々はレストランやイベント会場などに入る時にQRコードを厳守してきたことから、感染者が出てもいつ、どこで、何時ごろに居たかがわかるのでコンタクトした可能性のある人々を同定できることだ。その人々が、2週間自宅隔離をすれば感染を抑えられる。
とりあえず今できることは、ロックダウンを守り、少しでも多くの人がワクチンを打つことだ。

エッセンシャルワーカーで、エイジケアにフルタイムで勤めてきた、この1年半は地獄だった。今も、これからもそれが続く。
オーストラリアのコビッドでの死者は、2020年1月以来今まで合計しても、100人程度、他の国に比べればわずかだが、そのほとんどがエイジケア施設に居る年寄りだった。当然、エイジケアのナースは何をやっているんだ、とバッシングにあった。バスや電車で「コビッドがうつるから近寄るな。」と言われたり罵倒される被害が多発して、医療関係者を口頭または物理的に攻撃した人は$1000の罰金が科せられる「新法」までできた。
また職場では、いつ、どこでメデイアの人にインタビューを受けても、業務上のことで質問に答えてはならない、という厳重なお達しが出ているので、私も政府や医療業界やシステムに、100も200も言いたいことがあるが、今は言えない。

去年ボリス ジョンソンがコビッドで死にかかったとき、ICUでずっと彼に付き添ったナースはオージーナースだった。ボリスは、こんな非常時に献身的に働いてくれたナースはエンジェルだと褒めたたえて、彼女に感謝しまくっていたが、その後彼女はナースを辞めた。「ナースはやっている仕事を充分尊重されていないし、充分正しく評価されていない。」というのが理由だった。同感だ。この1年の間にストレスから、深刻な病気になった同僚が沢山いる。職場を離れ、辞めて行くナースが後を絶たない。

こんなときに日本はオリンピックをやって、選手たちだけでなく、その何倍もの関係者やマスメデイアが日本に入ってきている。
たくさんの死者が出るだろう。
そしてそれらの死者の死因は、心筋梗塞とか、脳卒中とか、喘息の悪化とか、糖尿病の悪化とか、過労とかの名前をつけて葬られるだろう。

どんなワクチンも、人によっては副作用は出る。しかし血栓ができる可能性は、コビッドに感染するよりずっと少ないし、血栓ができても症状がすでに一般に知られていて対応できるので病院に行けば完治できる。
すれちがっただけで感染するデルタ型で、死んではいけない。デルタ型は、年齢を問わず感染が広がり10代でも死者が出ている。
一刻も早くワクチンを打ってほしい。