2012年7月27日金曜日

オペラオーストラリア公演「アイーダ」

                                   
オペラオーストラリア定期公演の「アイーダ」を観た。

1870年 ヴェルデイ作曲
初演;1871年 カイロ オペラ座
4幕 2時間30分 イタリア語
演奏;オーストラリアオペラ バレエオーケストラ
指揮:アルボ ヴォルマー
監督:グレイム マーフイー

キャスト
アイーダエチオピア王女:  ラトニア モーア 
ラダミスエジプト軍将軍:  ロザリオ ラ スピナ
アムネリスエジプト王女:  ミリアナ ニコルフ
アイーダ父エチオピア王:  ワーリック ファイファ
アムネリス父エジプト王:  ジェド アーサー

「アイーダ」はオペラの中でも 豪華絢爛、派手で立派でスペクタキュラー。堂々とした凱旋の歌が 劇中、何度も何度も繰り返されるので、勇ましくて、最も好きなオペラだ。エジプトでは、新年のお祝いに、ピラミッドの前で公演が行われたりしてきた。
ヴェルデイは、「リゴレット」、「椿姫」、「トロバトーレ」、「ドンカルロ」、「オテロ」などを作曲したが、このオペラはイタリアオペラの良さを存分にて味わうことができる。
5年前にオペラオーストラリアで観たが、再演されることになって、どうしても観たいと思ってきた。長いことオーストラリアで たくさんのオペラを観てきたが、印象的で いつまでたっても、どうしても忘れられないオペラは、そう多くない。この「アイーダ」と、「真夏の世の夢」くらいだ。どちらも 意表をつく舞台の作り方をしていて 舞台美術のお手本のような素晴らしい作品だった。

「アイーダ」では、舞台の前に、端から端まで細長いプールが出来ていて、これがナイル川。登場人物たちが咽喉の渇きを癒したり、バレエ団が泳いで渡って見せたり 川べりでニンフ達が遊び呆ける姿を見せてくれて とても楽しい。
物語は三角関係の末に 愛し合う二人が悲劇の死を迎える悲劇だが、ファンファーレが鳴り響き 凱旋の行進とともに50人を越える男性コーラスが力強い合唱をする。その立派な行進とそれを取り囲む豪華な衣装の王族達、バレエ団の踊りなど 華やかな明るさに満ちている。舞台一杯に すべての登場人物がそろうと100人ちかい人々が 晴れやかに歌う。観ていてオペラって何て素敵なのだろう、と心から思う。

ストーリーは
エジプトの若き将軍、ラダミスは 将来エジプト国王の一人娘アムネリスの夫に選ばれることになっている。アムネリスは心から 勇敢なラダミスを慕っていた。ラダミスが戦勝っをあげて帰国し次第 王女と結婚して、国王は引退して王座をラダミスに譲るつもりでいた。

ところが、実はラダミスは エチオピアから連れて来られて奴隷になっているアイーダと 密かに愛し合っていた。
エジプト国王はラダミスを、エチオピア討伐に行かせる。アイーダは愛する人の安全を願いながらも、祖国への愛と父親の安全を危惧して、苦しむ。アムネリス王女は かねてからアイーダが誰かを愛しているのではないか と思っていた。ラダミスの留守中に、試してアイーダに、「ラダミスが闘いで殺された」と言って見る。それを聞いて 取り乱すアイーダの様子を目にして、王女は アイーダが間違いなく自分の恋敵であったことを知ってしまう。

ラダミス将軍は、勝利の歌とともに凱旋する。強国エチオピアを打ち破り、国王達王族を捕虜として辱めるために引き連れてきた。アイーダは愛する人が無事で帰ってきてくれて、嬉しいが、自分の父親や兄弟の変わり果てた捕虜姿を見て悲嘆にくれる。

捕虜となったエチオピア国王は、悲しむ娘アイーダに巧みに近付き、その夜、監視のない逃げ道を聞き出そうとする。父に祖国への愛と忠誠を迫られ、拒みきれなくなったアイーダは ラミダスに 逃げ道を聞いて、父親に伝えてしまう。捕虜達は逃亡し、追っ手が出され、国王は捕獲されて殺される。しかし、結果的にエジプトに裏切りを働くことになってしまったラダミスは 謀反人として審判にかけられ、死刑を言い渡される。刑罰は生き埋めの刑。
ラダミスが、砂漠に埋められた石棺の中に入っていくと、そこには、逃げたはずのアイーダが待っていた。二人は再会を喜び合い、ともに抱き合って、息絶える。地上では 愛する人を失ったアムネリスがラダミスの冥福を、一心に祈っている。
というお話。

今回の主役 ラダミスは オーストラリア生まれのイタリア人、ロザリオ ラ スピナだった。大好きな歌い手。すばらしく甘い、伸びのあるテノールを聞かせてくれる。6年くらい前、イタリアから帰国したばかりで新人として「リゴレット」を演じた。美しい声に感激したが、オペラが終わってオットと劇場を出たところで、たった今 感激させてくれたこの青年が、ひとりきり ひょいと舞台裏から出てきて、歩いて帰るところだった。思わず、バイバーイと、手を振ると、にっこり笑って手を振ってくれた。何の飾りもないブーツにジーパン姿の好青年の後姿に、思わず見惚れてしまった。
その時から何年もたったが、彼は二倍の大きさになっていた。しばらく見ないうちに、しっかり太って貫禄がついていたのには驚いた。スパゲテイの食べすぎか、、。アンドレア ボッチエリのような声の輝きはない。ホセ カレラスや パバロテイのような強靭さはない。プラシド ドミンゴのような明るい、伸びやかなう美しい声だ。ヨーロッパで活躍しているらしく、オーストラリアにあまり帰ってきてくれないが 今後もここで歌って欲しい。

ソプラノのラトニア モーアはアフリカンアメリカン。声につやと輝きがあって、キャサリン バトルのような声に清らかな美しさがある。彼女も太っていて、彼女とロザリオ ラ スピナが抱き合ってアイの歌を歌っていると、互いの腕が腰まで回らないみたい。二人のウェストを合計すると3メートルくらいか、、。
でも二人とも声が素晴らしい。

アルトのアムネリス役は背が高く舞台栄えのする人だった。登場人物すべての衣装が とにかく秀逸。白地の長いガウンに金色をたっぷり使った冠や衣装はとても豪華で美しい。
とてもとても豪華で晴れやかで素晴らしい舞台だった。忘れられない。いつまでたっても、凱旋の歌が頭の中で鳴り響いている。