バットマンシリーズ最後の「ダークナイト ライジング」が、じきに公開される。 第一作「バットマン ビギンズ」2005年と、第二作「ダークナイト」2008年に続いて この第3作「ダークナイト ライジング」2012年が 最終作になる。 3作とも同じ、クリストファー ノーラン監督、脚本。主演バットマンをクリスチャン ベール、彼を執事マイケル ケインと、モーガン フリーマンの名優達が支える。
「ダークナイト」でアカデミー主演男優賞を授与されたヒース レジャーのジョーカーは、残念ながら、もうこの最終作に出演することができない。 第三作目の公開に先立って 前作の2作品を復習しておくために ナイトムービーが企画された。日曜の夜6時に始まり、深夜12時に終了する。これに 初めて行ってみて、とてもおもしろかった。 日本に居た時、オールナイトと称する映画5本立てを 新宿で観たのは大昔。朝6時に終わると、赤い目をして電車の始発で家に帰ったりしたものだ。
ナイトムービーに、やってきていたのは、家族連れや中年夫婦も居たが、圧倒的にテイーンの男の子グループが多かった。それぞれがバットマンスーツを着たり、自作のマントを背中に張り付けてきたり、ジョーカー風の化粧をしてきたりして、勝手に盛り上がっていた。誰もが大きな袋を抱えていて、長時間の映画見物に備えて、超大型ポップコーンやチップスや飲み物を持参。おにぎり持参で ひとり若い人たちに混じって、映画の名場面には拍手をしたり声援を送り みんなと一緒に楽しんだが、まわりの青少年達は 私のことを、変なおばさんと、思っていたかもしれない。普段 映画は一人きりで観て 誰にも邪魔されずにじっくり味わうが、こんな風に、手をたたいたり 口笛を吹いたり足を踏み鳴らしたり 画面と一体になって映画を沢山の若い人たちと、共有して観るのも、実に楽しい経験だった。
ゴッサムシテイーの教会の尖塔の頂上に黒い影、、、やがて月に照らされて蝙蝠の姿が浮かび上がる、その美しいシルエットに、ヒエーイとばかり観客が手をたたく。あるいは、戦車のようなバットマンの車がブレイクダウンして もう追跡が出来ないかと思うと 車がバイクに変わって疾走するシーンなど観客は、ヤンヤの歓びようだ。また、みんなのヒーローバットマンだけでなく、ジョーカーも人気があって、彼のジョークに笑い転げ、みんながヒース レジャーに好感をもっていることが、観ていてよくわかった。観客達の呼吸が伝わってくるようだ。ヒース レジャーは、この映画で真に迫る名演技を見せたが、映画完成前に たった25歳で事故で亡くなってしまった。このパース出身のオーストラリア人俳優を、みんなとっても好きなんだ、という心情が伝わってきて切ない。私だけでなく、みんなみんな ヒースの死を惜しんでいるんだな、、、。
でも、この映画が若い男の子達を夢中にさせる理由は、やはりメカにある。
ウェイン財閥の尽きることの無い豊富な資本で、専門の科学者を抱えて、ものすごい多機能をもった車や、バイクや 空を飛ぶ羽のついたガウンや、100メートル直下に落ちても怪我をしないバットマンスーツなどが、次々と出てきて魅力満載だ。007の特殊スパイ装置を上回る。アイアンマンよりも優れていて格好が良い。 悪を征伐して、一晩暴れまわってバットマンは、傷だらけで、家に帰ってきてベッドに倒れこみ、親代わりの執事に介抱される。そんなとき、無垢な坊ちゃんブルースは 傷ついたヒヨドリのように頼りない。この強いヒーロ-と 現実のブルース ウェインとのアンバランスが、また一層魅力だ。バットマンを主演するクリスチャン ベールは実にハンサム、全然年をとらない。メカに夢中な永遠の少年の横顔を持った役者。若い俳優の中で 最も実力のある良い役者だ。
バットマン ビギンズ 2005年
ストーリーは
ウェイン財閥の一人息子ブルース(クリスチャン ベール)は、広大な敷地をもつ屋敷で子供時代を過ごす。ある日、従兄弟のレイチェル(ケイテイ ホームズ)と庭で遊んでいて、古井戸に落ちる。井戸の底は地下につながっていて、落下したブルースに驚いた蝙蝠の群集が 羽ばたいてブルースを怖がらせた。このとき、たった一人で暗い古井戸の底で 父親が助けに来てくれるまでの間、恐怖に脅かされたトラウマから 助け出された後も、ブルースは 時々恐怖感から、身動きが出来なくなる発作が起きて両親を心配させる。
ある夜 ブルースは、正装した両親に連れられてオペラに、連れて行かれる。観賞していて、舞台に蝙蝠が出てきたとたんにブルースは、観ているのに耐えられなくなって両親に伴われて劇場を出る。悪い運が重なって、両親は強盗に会って無慈悲にも、犯人に銃で撃ち殺されてしまう。残ったブルースは たったひとり屋敷で執事(マイケル ケイン)に世話をされながら成長する。ブルースにとって、古井戸に落ちた時の恐怖に立ち向かうこと、そして死ぬ間際の父の言葉「怖がらずに勇気をもって生きなさい。」という言葉に従って生きることが、自分の課題となる。
大人になったブルースは 両親を殺した強盗犯を殺そうとするが、強盗犯が軽い刑期を言い渡された直後に、何物かによって殺される現場を目撃し、復讐が正しいことなのか 正義とは何か、という葛藤に苦しむ。彼は、人間の本当の強さを求めて ヒマラヤの奥地にまで放浪の旅に出て、体を鍛え 秘密の武等組織に入りヘンリー デュカード(リーアム ニーソン)から闘いを伝授される。 訓練を経て、ゴッサムシテイーに戻ったブルースは ウェイン財閥の跡継ぎとして会社の経営にかかわりながら、科学研究者のフォックス(モーガン フリーマン)の力を得て、犯罪の蔓延するシテイーから、市民を守るための方法を考える。そして、犯罪者に恐怖感を与えるために蝙蝠になって、悪者を取り締まり、警察に突き出して、街を浄化することにした。バットマンの活躍の始まりだ。
幼友達だったレイチェルは 成長し弁護士になっている。彼女は法によって善者を守り悪を防止することに使命を感じているから、バットマンのように直接犯罪者を取り締まり、罰を与えることには批判的だ。しかし、ヒマラヤで厳しい戒律をもった武闘組織を抜け出してきたブルースに、制裁を与えるためにヘンリー デュカードらがやってきてブルースを攻撃し始め、、、。
というお話。
ダークナイト 2008年作
ストーリーは
ブルースはウェイン財閥の会社経営を続けながら、夜になるとバットマン服に身を包み。悪のはびこるゴッサムシテイーで、市民を守るために活躍していた。いまやバットマンは、街の英雄だった。 新しくシテイーにやってきた地方検事ハービー デント(アーロン エカット)は、腐敗し汚職と暴力など諸悪のもとであるマフィアと、正面から闘うことを約束し、マフィアの資金源を断つ。ブルースが恋心を抱いているレイチェル(マギー ギレンホール)は ハービーの恋人で右腕として共に働いている。ブルースはそれを知って、ハービーに多大の支援を申し出て、ゴッサム市の市長として推薦する。
ときに、極悪犯ジョーカーが出現して銀行を襲い、マフィアと手を組んで次々と警官を襲って殺害する。ジョーカーは人殺しをゲームとして楽しんでいた。彼の悪行にルールはない。徹底して人を苦しめて罪の無い人々を殺す事が楽しい、精神分裂症患者だった。彼は 人々の英雄バットマンを殺すことが自分の最大の目的だと考えて、バットマンをおびき寄せる為に ハービー市長とレイチェルを拘束する。そして、どちらかがバットマンによって助けられた時に、どちらかが爆破して死ぬことになるという残酷な罠を仕掛ける。何も知らないバットマンは、最初に目に付いたハービー市長を救助する。と同時にレイチェルは爆破されて命を失う。瀕死状態で救出されたハービーが、手当てを受けている病院に、ジョーカーが現れて病院は爆破され、犯罪者に爆弾を仕掛けられて警察署は爆破され、次々とジョーカーは、バットマンに挑戦をつきつけてくる。
レイチェルと結婚してバットマンを引退するつもりでいたブルースは レイチェルを失い、茫然自失の状態に陥る。しかしレイチェルは、ジョーカーに拉致される前に、執事にブルースあての手紙を託していた。そこには、レイチェルが、ハービーと結婚するつもりでいることや、バットマンの生き方は間違っているというレイチェルの率直な意見が書かれていた。何も知らないブルースを、これ以上傷つけないために執事は密かにその手紙を燃やして、、、。
というお話。
第一作で、レイチェルを、ケイテイ ホームズガ演じたが彼女はトム クルーズと結婚して女優を引退してしまったので第二作では 顔の似ているマギー ギレンホールが演じている。 また第二作で 極悪人のジョーカーを、バットマンに殺させなかったのは、第三作で続けて ジョーカーを活躍させる予定だったのだろうが、ヒースが亡くなってしまったので、ジョーカーはもう居ない。他の役者にジヨーカーを演じさせても ヒース以上に、血も涙もない異常犯罪者の役をこなせる役者が他に居ないので、あきらめたのかも知れない。 バットマンでは、本当にクリスチャン ベールが輝いている。バットマンを支える執事マイケル ケインとウェイン財閥責任者のモーガン フリーマンも とても良い。この3人の役者が演じなかったらバットマンの良い味は出てこなかっただろう。第3作が楽しみだ。