その後、マニラに赴任先が移り、娘たちがインターナショナルスクールに入り、やっと文化的な生活ができるようになった、というのに夫も、それに付随するビザも失った。帰る国も帰る家もない。弁護士の力添えで、娘たちの学校でバイオリン教師の職を得て6年、その後、娘たちの大学入学のためにオーストラリアに移民した。あのころ生きるのに必死で、娘たちがどんな気持ちでいたのか、考える余裕もなかった。
いま、この詩集を読むことは、あのころの娘たちの独白を聴くようで痛みを伴う。
その時に何かを強く感じたので、しばらく記憶に残っている。言葉にできないままでいるときに、若い詩人の言葉に出会って、その時の自分の強い気持ちが嵐のようによみがえる。言葉があふれるように心の中で広がっていく。そんな言葉にいくつか出会った。あなたも、あなたも、あなたも、とても強く感じて、言葉にできなかった感情を、この若い詩人の言葉の中に、見つけられるかもしれない。