2022年10月20日木曜日

マイナンバーカード義務化に反対

日本のマイナンバーカード義務化に反対。必ず情報漏れが起きて後悔することになる。オーストラリアで今月、私を含めた100万人の個人情報が漏洩した。人々は日々恐々としている。
オーストラリアにはTELSTRAテレストラと、OPUTUSオプタス、という2つのインターネットプロバイダーがある。テレストラは以前半官半民組織だったが民営化され、オプタスやボーダーフォンなど海外からの企業も参入して、家庭電話、携帯電話インターネットのサービスを提供している。オプタスの顧客のうち100万人の個人情報がハックされ、ハッカーから脅迫を受けていたが、会社が要求された金額を払わなかったので、ハッカーは個人情報を流出させた。盗まれた情報は、
1)名前、住所、イーメイル、電話番号、生年月日
2)運転免許証
3)パスポート
4)健康保険証
以上が流出し、闇の世界で売買されている。これだけの情報があれば、本人になりすまして銀行からお金を引き出すことも、車や家を買うことも、世界のどこからでもローンを組むことができる。人々が恐々とするわけだ。

オプタスから謝罪のMSGがきている。
大変残念なことに、わが社オプタスはサイバーアタックの被害を受けました。あなたの個人情報が漏洩しました。名前、生年月日、イーメイル、住所、電話番号、運転免許、パスポート、健康保険証などです。幸運にもオプタスの電話、WIFIサービス、パスワードなどは影響を受けていませんので、このまま安心して利用することができます。今後オンラインで銀行口座に不審な動きがあったり、異常なことが起きたら当社に連絡してください。見知らぬところからきたメイル、MSGや電話、ソーシャルメデイアの動きには十分気を付けてください。誰にも貯金番号やパスワードを教えないでください。当社は、予想外のことが起きて残念に思いますが、みなさまに被害が起きないように、対策を万全にして今後も注意していきます。
CEO ケリーロズマリン

政府はこの事態を引き起こした会社に巨額の罰金を科すという。しかし個人情報が露出して売買された結果、今後起こりうる個人の被害には責任を取らない。こういった事態で問題なのは、原因がインターネットプロバイダーのミスであっても、個人に起こりうる損害には誰も保障、損害賠償しないことだ。売買された情報は、成りすまして実を取った後、また別の人に買われ延々と利用される。被害はその人が死んだ後でもずっと利用されるのだ。

いま日本で支持率が20%台の内閣が、「閣議決定」でマイナンバーカードを義務化しようとしている。カードと健康保険証と運転免許証を1本化するというが、健康保険証から情報が洩れたら、その人の勤務先、家庭状況、保健や年金の情報や既往歴、投薬歴がダイレクトに保険会社や研究団体に利用され、運転免許証からは犯罪歴や警察情報の得られ、政府と一体化した産業だけが漁夫の利を得ることになる。怖いのは闇で売買され犯罪が起きることだ。

人はミスを犯す。どんなに優れたAIがあって情報管理が完璧でも、それを作動させるのは不完全な存在としての人なのだ。
マイナンバーカードをもつことも、それに免許証や保険証を付帯させるということも反対。情報を1つのカードに一本化したら必ず後悔することになる。

「黒の舟歌」を歌ってみた。作詞:能吉利人、作曲:桜井順
作家野坂昭如がウイスキーを飲みながら、ゴールデン街で歌っていたような記憶が、、。
I am singing [ Sorrowful Sailor ] composed by Sakurai Jun.
Lyrics tells.
There is a deep and wide river. Between men and women.
No one can across the river. No one can reach other side.
Even though try and fail. Row and Row.
There is a dark and huge river. Between you and me.
Unable to across the river . Unable to reach you.
Even though can't stop trying. Row and Row. Row and Row.




2022年10月17日月曜日

反政府運動と危機意識

ロシア国内でも、イランでも、レバノンでも、チュニジアでも人々の反政府プロテストが火を噴いている。侵略戦争、前時代的宗教警察の横暴、ガソリン、食料の値上がりのために生活が圧迫された人々の怒りは、簡単には収まらない。

中国では全国人民代表大会が行われ、320人の代表らがシャンシャン拍手喝采する中で、習近平は、3度目の国家主席に「選出」された。彼は演説の中で、香港と台湾の SEPARATIST(国家分離分裂主義者)を激しく攻撃した。香港の人々も、台湾の人々も自分たちが中国における分離主義者などという認識は全く持っていないだろう。大陸の漢民族と香港の広州人とは言語も文化も歴史も全く異なる。

4年前、香港に戻り反政府運動に身を投じていた親友の身が心配で仕方がなかった。彼女が仕事を辞めて香港に向かう4年前、私が遺言状を作ってもらった弁護士を紹介してほしいと言うので教えた。どれだけの覚悟で香港に向かうのかと思うと、ずっと気が気ではなかった。彼女は香港で国家安全法に抗議する若い人々を救援する活動をしていた。そして口を封じられ傷ついて、香港のパスポートを更新せずにオーストラリアに戻ってきた。彼女は2重国籍だったが、香港のパスポートを捨てると言うことは、自分が生まれ育った国にはもう帰らない、という意思表示であり、自分のアイデンテイテイを捨てるということだ。
彼女が香港に居た間、彼女の身が心配でラインもワッツアップもなるべく送らずにいた。デモ参加者を警察が顔認識のカメラでとらえて後で逮捕に来ると聞いていたが、携帯の情報はどれだけ警察に探られるのか分からなかったからだ。
でも今年の6月4日にキャンドルに火を灯して写真に撮り、彼女に送った。せめても1989年6月4日の天安門で殺された人たちを思い、忘れない、という気持ちだった。それでそのあと10月に彼女が帰ってきたので聴いてみて、驚愕した。大学の寮で友人たちがキャンドルを灯していたら、窓からのぞかれて、通報された学生たちが拘束されたというのだ。権力によって殺された学生たちを追悼することが、国家への反逆であり国家安全法違反になるというのだ。私が送ったキャンドルの映像も誰か他の人に見つかっていたら拘束されたのかもしれなかった。「反政府運動に連帯を」と簡単に言うが、それがどんな危険を冒すことになるのかを知らされて頭を抱えた。


竹田の子守歌を歌ってみた。京都府伏見区竹田地区に伝わる民謡。1965年東京芸術座が、住井すゑの「橋のない川」を上演するとき音楽を担当した尾上和彦が、部落解放同盟の合唱団のメンバーの母親から教わって採集された曲。この曲が京都府竹田部落で伝わってきた民謡で、歌詞に「在所」という部落を表す言葉と、「もんば飯」という言葉が出てくるので、公営放送の自主規制で放送禁止となった。「在所」とは家のことだが部落を指す差別用語で、「もんば飯」とはオカラのことで部落の貧しさを表す差別語だという理由だった。この曲は長いこと放送禁止になり、歌ったグループ「赤い鳥」の後藤悦治郎などは、メデイアから締め出された。しかし実際に後でわかったことは、部落解放同盟京都府連は、竹田地区の歌も、それが放送禁止になっていたことも知らなかった。部落差別を恐れるあまり、歌を歌うことも自主規制したメデイアの愚かしさを物語るエピソードだ。
これは笑っていられるが、いま香港で「GLORIA HONGKONG」を歌うと、香港独立の言葉が出てくるので、国家安全法で拘束される。権力者は、歌の持つパワーを知っているから、ひとつの歌でも見逃さない。私たちは、常に危機感をもち続けなければならない。



2022年10月7日金曜日

母国語喪失

自分が使っている言語が権力によって禁止され使えなくなったら、ある意味でそれは死と同じではないか。言語は思考そのものであり、その人のアイデンテイテイだ。人は生まれ育って自然と身に着けた自分の言語で物を学び、物を考える。それを失うことは自分を失うことだ。

中国人は「標準中国語」マンダリンを使うが、香港の人は広東語カントニーズを使う。2者は文法も発音も全く異なる。しかし公式には広東語は、広州地方の方言ということになっている。中国には広東語以外に、上海語、福建語、延辺朝鮮語、モンゴル語、ウイグル語など沢山の言語を使う沢山の民族が居る。「標準的」マンダリンを使う人口は世界中でほかのどの言語よりも多く、13憶4800万人、英語の11憶3200万人(2022,6月統計)をしのいでいる。

香港は100年英国に統治され人々は広東語と英語で生活してきた。700万人の香港の人々は英国式民主主義に慣れ、表現の自由に身を置いてきた。「国境なき記者団」による報道の自由度は、180各国中148位を誇り、日本のジャーナリズムよりはるかに高い報道の自由を持っていた。それが2020年6月「国家安全法」が施行され、あっという間にメデイアが封鎖され、外国メデイアが撤退させられ、外地ウェブサイトも遮断された。アップルデイリー編集部は国家転覆罪、立場新聞は扇動的刊行物発行、共謀罪で裁かれている。国家安全法の怖いところは、解釈によってどうにでもとれる法が、終身刑を含む重罪を課すことができるところだ。

今まだ広東語は禁止までには至っていないが、学校の教科書は「標準中国語」に取って変わられた。これから教育を受ける子供たちは、徐々に香港人との会話が出来なくなってくる。世界から一つの言語が失われ死につつあるのだ。

4年前に自分の生まれ育った国、香港に帰っていった親友がもどってきた。無事な姿で会えて嬉しい。しばらく連絡不通だった。オーストラリアの市民権があり、2人の息子はシドニーで生まれ今は独立してそれぞれ家庭を持っている。長いこと同僚だったが、退職して香港に職を得て、逃亡犯条例反対、国家安全維持法反対運動に身を投じた。デモに参加した学生たちを黒服の男たちが深夜、怒号と共にドアをたたいて拘束していく。大学の入り口で待ち構えていた公安が、学生のカバンをこじ開けさせて、香港独立思想の本を所持しているといって暴行の上、逮捕していく。そういった日常に耐えられず、彼女は母親の会を作って救援活動をしていた。

その彼女が香港のパスポートを更新せずにオーストラリアに戻ってきた。無事でいてくれて嬉しい。しかし生まれ育った土地への彼女の思い、失われていく文化、亡くなっていく言語のその先を思うと、胸がつぶれる思いだ。

日本は秋だが、こちらは春。異常気象で雨が降り続き寒い。作詞、吉丸一昌、作曲、中田章の「早春賦」を歌ってみた。

I am singing [ SOUSHUNFU] written by Nakada Akira, lyrics by Yoshimaru Kazuaki. Song tells:
People said Spring has come. Although wind chilly. Even birds not singing. But snow melt in the lake. Buds unfold in the Sunshine.



2022年10月3日月曜日

大内兵衛と宇佐美誠次郎と母

写真は経済学者大内兵衛と宇佐美誠次郎。
私の大叔父と叔父にあたる。背が高くて立派に見えるのが、兵衛の弟子の誠次郎だ。私の父は京城の朝鮮総督府官舎で生まれたが早くに親に死なれ、その弟の兵衛が父親代わりだった。その兵衛が父と、東大で可愛がっていた弟子の誠次郎の妹を結婚させて、私が生まれた。

母が兄の誠二郎のことを大好きだったので、私もこの叔父が好きだった。私にバイオリンをくれたのも、高いレッスンフィーに躊躇する父に続けるように言ってくれたのも、学生時代にデモで逮捕されたことで怒り狂う父をなだめてくれたのも、この叔父だ。母にはもう一人の兄、宇佐美正一郎が居て、理学博士で北大と神奈川大で教えた。叔父たち二人とも、この時代の人にしてはとびぬけて背が高くハンサムだった。

母は5歳上の正一郎と3歳上の誠次郎に、思いきりちやほやされて育った。母のアルバムには、体の大きな兄たちにはさまれ両腕にぶら下がるようにして銀座を闊歩しているベレー帽の姿や、2人に手を取られて「竹」のスキーを履いて滑る姿の写真がある。「銀ぶら」帰りの車も、しゃれ者だった兄のおかげでオープンカーだ。外国語に堪能で最新の蓄音機や写真機を取り寄せて楽しんだ兄たちは、宝塚に夢中だった母を、望まれるまま劇場に連れて行ったし、軽井沢でテニスに興じた。結婚前の母は幸せそのものだったろう。むかし母に戦争中は何が辛かったの、と聞いたらテニスできなかったことかな、と母が答えてがっかりさせてくれたことがある。大事にされていた母には兄たちの苦境や学問するものの姿は目に入らなかったろう。

大内兵衛大叔父は1938年に治安維持法違反容疑により逮捕され1年半もの間拘禁されていた。共産党員でもない、政治活動するでもない、赤でも黒でも緑でもない、経済学者が国家転覆を図っているといわれて逮捕される異常な時代だった。宇佐美誠次郎も1942年に治安維持法違反容疑で逮捕、投獄された。翌年懲役2年執行猶予5年の判決を受け出所したが、「死んで来い」とでもいうように、1943年臨時招集を受け補充兵として中国の前線に送られた。1945年9月に召集解除されるまで生きのびることができたのは、スポーツで鍛えた堅固な体と幸運のおかげだったろう。

母は1997年に夫と家族に見守られながら、癌の痛みも苦しみもなく亡くなった。言わないでいたが1年半前には、頼りにしていた兄、正一郎が同じ癌で亡くなっていて、母の死の2か月前には誠次郎が、また同じ癌で亡くなっていた。二人の兄が亡くなっていたことを知らないまま母は逝った。母はモルヒネの浅い眠りの中で2人の兄に腕を取られ、夫と子供たちに見守られて幸せに旅立ったと思う。