「香港に栄光あれ」を歌う。革命とか独立とか過激な言葉は歌詞にない。2019年逃亡犯条例改正案に反対する運動の中から生まれた曲。
この歌を歌う者はもういない。
香港国安安全維持法により公衆の前で歌うことは香港の独立を扇動する行為として刑事罰の対象になる。終身刑を含む国安法のもとで香港教育局は、これを歌うことを禁止した。
歌うことを政府が禁止しても歌詞を変え、人々が歌い続けることを止めることはできないだろう。その歌詞も禁止されたら、また別の詩が書き換えられるだろう。その歌詞も禁止されれば人々はハミングで歌い続けるだろう。権力は歌を禁止することはできても人々の心をつぶすことはできない。
香港で革命を起こそうとか、独立を願うわけではない。民主的な普通選挙を望んでいるだけだ。政治に民意を取り入れる、ごく普通の当たり前の普通選挙を願っているだけだ。
香港はかつて英国領だったが、1997年に2047年までは、中国と1国2制度を認める形で中国に返還された。2012年に、中国はシーチンピン(習近平)国家主席が新体制を施いて以来、中国国家安全のためにキャリーラム特別行政長官をして、徐々に1国2制度の香港の自治を狭め締め付けてきた。
2019年、逃亡犯j条例改正案で容疑者を本土に引き渡すことを可能にする条例には、人口300万人香港の市民のうち、延べ200万人史上最大の反対デモが繰り広げられたが、キャリーラムはこれを意に介さず、さらに、2020年6月30日には国家安全法が採決され、ただちに施行された。終身刑を含む国家安全法により、区会議員47人に加え120人近くの逮捕者が出た。
2021年6月、民主派の新聞アップルデイリーでは主幹のジミーライが逮捕、新聞は廃刊、社の資産は凍結、従業員全員が解雇さた。2021年11月、香港アムネステイインターナショナル事務局が閉鎖され、その40年の歴史が閉じられた。
2021年12月29日には、スタンドニュース(立場新聞)の幹部6人が逮捕され、ニュース配信が停止させられた。さらに2022年1月4日、衆新聞も発信停止を命じられた。
2021年12月19日、香港立法会選挙が行われ、かつての民衆派の議員たちは立候補することさえできず、香港議会の90議席のうち89席は親中派に独占された。こうして100人以上の民主派議員の議員資格が失われた。また1月に香港大学にあった天安門事件記念モニュメントが未明に撤去された。
怒涛の勢いで、香港の中国化、同化政策が進んでいる。せめて私にできることは、この歌を歌い続けるだけ。そしてこの過酷な現実の目撃者となること、歴史の証人となることだ。