2017年1月2日月曜日

映画 「マリアンヌ」


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ロマンテイック アクション アメリカ映画。
日本では2月10日公開。
邦題:「マリアンヌ」
原題:「ALLIED」
監督:ロバート ゼメキス
キャスト
ブラッド ピット  : マックス バタン
マリオン コテイヤール : マリアンヌ ビュセジョール

ストーリーは
1942年 フランス領モロッコ。
カサブランカも事実上ドイツ軍占領下にあった。フランス人レジスタンス活動家のマリオンは、カサブランカの社交界に深く侵入して、ドイツ軍上官たちの信頼を得ていた。そこにカナダ人で連合軍秘密情報部に所属するマックスが、送り込まれる。二人は新婚夫婦を偽装して、ドイツ軍高級官僚たちに近付き、ドイツ大使以下、占領政府の要人たちを殺害する。作戦は成功。首尾よくモロッコを脱出したマリオンに、マックスは結婚を申し込み、二人はロンドンで再会し、結婚する。

ドイツ軍による爆撃下にあるロンドンで、二人はそれぞれの仕事を続けながらも、幸せな家庭を持ち、マリアンヌは女児を出産する。ところがある日、マックスは連合軍秘密情報部に呼び出される。告げられたことは、全く信じ難いことだった。マリオンは、じつはドイツ軍の秘密情報員で、マックスが受け取っていた情報がマリオンを経てドイツ軍に漏洩している。モロッコのカサブランカでマックスとマリオンが殺害したドイツ大使らは、ヒットラーが処分する予定だった人物に過ぎない。マリオンと言う名のフランス人レジスタント活動家はすでに、前の作戦で亡くなっている。マックスは、72時間以内にマリオンと名乗るスパイを出頭させるか、処分しなければならない。というものだった。

マックスに与えられたのは72時間。マックスは、マリアンヌが出合った時から自分がマリオンに裏切られていたということが信じられない。マリアンヌの無実を72時間以内に証明しなけば、マリアンヌの命も、自分の命もない。
マックスは、懸命に昔のマリアンヌの同胞だったレジスタンス活動家を探し出す。ドイツ占領下のパリに飛んで、マリアンヌが、ラ マルセイーズをドイツ軍将校の前で、臆せず誇り高くピアノを弾きながら歌ったという過去の逸話を聞かされる。愛しい妻が本当のマリアンヌなら、ピアノが弾けるはず。ロンドンに帰ったマックスは、マリアンヌを酒場に連れて行き、ピアノの前に座らせる。すると、、、。
というお話。

美男美女のメロドラマというのは、良いものだ。
ブラッド ピットが何が何でも大好きという人とか、マリオン コテイヤールがどんな役でもいいから大好きという人のために作られたメロドラマ。

1940年代のカサブランカ。パリから来たレジスタンス活動家が、肩パッドのついた美しいシルクのドレスをまとい、真紅の口紅を差す。そんなマリオン コテイヤールの美しさ。 仕立ての良い3ピースの背広にネクタイをきちっとつけた立派な男が、歩きながら無造作にタバコをくわえる。真っ白なシャツに燕尾服で現れたかと思うと、連合軍空軍の制服を少しの隙もなく着こなして登場、美しい男とはこういう男を言う。53歳のブラッド ピットの無駄のない若々しい動きと、美しい着こなしに目を見張る。 砂漠から見る日没と夜明け。ひたひたと迫る恐怖政治の時代を背景に夢のようなメロドラマが繰り広げられる。

これらの映画の雰囲気は、古典名作映画の「カサブランカ」でおなじみだ。ハンフリー ボガードと、イグリット バーグマンの二人が醸し出した時代の郷愁、センチメンタルな甘い匂いが漂う。「カサブランカ」は今思えば、黒白映画だったが、この映画は独特のカラーで、この時代の一時の豪華、豊饒さ、艶やかな人々の姿がきらめく色彩で表現されていて、見事だ。画面が美しい。
ブラッド ピットも マリオン コテイヤールも良い役者だ。音楽も良い。

しかし内容は、、、困ったことに無内容。真実性に欠け、人としての誠実さが欠落して、愛とはいったい何なのか、と根本的な疑問が湧き上がる、何とも評価がクエッスチョン。
マリアンヌは、ドイツ国愛国者。殺されたレジスタント活動家に成り済まし、敵軍の男と結婚しても夫に送られてくる情報を、逐一ドイツ軍に送っていた。そのために命を失った連合国側の兵士は、数知らず、情報が漏れたために失敗した作戦も多数あっただろう。妻は、自分の名前も出生も、スパイとしての仕事も秘密にして、黙々と情報を収集していた。夫は、自分を通じて秘密情報が漏れていたことに気がつかず、うかつにも妻の思いのまま情報を垂れ流していた。その夫の軍人としての責任はどこにいったのか。まんまと騙されていたことの帳尻はどう取るのか。夫の持ってくる情報を盗み出すことによって成り立っていた夫婦関係では、家庭は妻にとって職場でしかなかったし、夫婦関係は仕事のための手段でしかなかった。

素性がわかった、事実が分かった、でも愛し合ってるから二人で手に手を取って外国に逃げて、幸せに平和に暮らしました とさ。というのはお伽噺です。
人には自分なりの信念というものがあり、達成したい目標をもち、仕事に就き、自分なりの仕事の仕方に少しばかりの誇りをもち、自分を育ててくれた社会や尊敬する人に囲まれ、自分の生き方に共鳴してくれるパートナーを持ち、ともに家庭を持って、そして老いていくものではないか。人を愛するというのは、そういったその人の信念や仕事やその人を取り巻く環境を含めて愛するということだ。その意味で、この映画は、真実性に欠けている。内容はペケです。

ブラッド ピットは長い役者人生を送ってきて性格俳優としても良い役者になってきた。この映画では妻を疑わなければならないという、悲しい夫として、本当に哀しい目で妻の後ろ姿を見る。妻の無実を証明しようとして狂ったように人を詰問する。うそだ。うそだ。うそだ。この映画の見所はといえば、そういった裏切られた男の哀しい姿だろう。そんな役をブラッド ピットは実に哀しい、哀しい姿で演じていて涙を誘う。
だけど、困ったことに、それだけなんだよね。この映画。