2012年3月22日木曜日

歯なしの話

自分が長いこと信頼して、診て貰って来た歯科医が 実はあまり腕の良い歯科医ではないことが わかった時のショックは大きい。
私の場合、二人の娘もオットも 家族ごと診て貰って来た。オットは困難な治療をしてもらい長いこと通ったし、二人の娘達は家を出て自立してからも定期検診に通っている。歯科医は 敬虔なクリスチャンで人権擁護活動もしていて、立派な人柄、穏やかで優しくて、二人のお子さんを持った良き家庭人。良い歯医者さんを探している友達を 紹介してあげて、感謝されたのも、一人ではない。

歯茎が異様に腫れて痛み、消毒を続けても、抗生物質を飲んでも、抗生物質で洗浄しても腫れが引かない。前から疲れたり、調子が悪いと歯茎全体が腫れて鈍痛がする体質。ぺリオドンテイストという歯茎専門のドクターに回されて、歯と歯茎の間を小手術で綺麗にしてもらっても 治らない。抗生物質が効果ないなら、副腎皮質ホルモンで炎症を抑えようと、錠剤だけでなく、ステロイド液で歯茎を洗浄することもやってみたが、効果がない。膠原病か、自己免疫疾患かもしれないと、血液検査もしたが、異常が出てこない。歯科医もぺリオドンテイストも お手上げ。仕事は忙しく とても休んでいられない。にも拘らず歯茎は腫れる一方で痛み、食事はほとんど流動食、、、これが 一ヵ月以上続いた。

意を決して別の歯科医の門を叩いた。
初めて会った女医さんは、実にたっぷり時間をかけて 私の腫れた歯と歯茎の間を掃除してくれた。麻酔をかけていたこともあって、眠ってしまった程だ。その日は痛みで、強い鎮痛剤を飲んで眠ったが、驚いたことに2日後には、嘘のように腫れが引いて、元に戻っていた。
彼女は実に、腕の良い歯科医だったのだ。

今までの歯科医は、一体何だったのか。
彼は、よく説明してくれる。歯磨きの仕方や歯茎の病気予防の説明に時間を割いてくれる。良心的な請求書。明細も丁寧に説明してくれる。そういった「良い歯科医」の条件をすべて満たしていた。しかし歯科では、正しい診断、適切な処置、そして、何よりも確かな技術がなければならない。歯科では技術がすべて といっても良い。技術は、毎日毎日コツコツと磨いていくものだ。そうした技術を、自分のドクターが持っているのかどうかを、見分けることはとても難しい。

良いドクターと良い技術者とは同義語ではない。必ずしも良い先生が高度なテクニックを持っているわけではない。都立病院に勤めていた時、形成外科で、「神の手」のような高度技術をもっている評判のドクターが居た。若くてハンサム。色白で精悍な顔。極端に口数が少なくて、会話が続かない。横に座られるとピリピリ神経が緊張して居たたまれなくなる。
形成外科は顔のケロイドを綺麗に修正したり、醜い手術跡を綺麗に縫い直したりして、傷のために劣等感をもったり、心理的にトラウマをもった患者の心の傷まで綺麗に治してくれる科だ。医師は技術だけでなく心理的な患者サポートが必要とされる。その後、このドクターが 年なりに丸やかになって、患者が話しやすい雰囲気を身につけたかどうかは、知らない。

というわけで、やっと普通に食べられるようになった。
医学知識がないわけではないが、その歯科医の腕が良いか 悪いか、自分でこんな経験をするまで、わからなかった。彼に紹介されて通ったぺリオドンテイストが行なった、過去2回の小手術に3000ドル、定期検査に毎回250ドルを10回くらい通っただろうか。それが、全く無駄だったということもわかった。

ドクターからドクターを渡り歩く患者が悪いとか、健康は自己管理をしないでドクターまかせにするのが悪いとか、いろいろ論議されているが、良い歯科医選びは、なかなか難しい。
歯なしにならないために、とても大切なことなのに、、、。