2006年9月25日月曜日
オペラ 「リゴレット」
ベルデイのオペラ、リゴレットを観た。原作はビクトリアユーゴ。
リゴレットは公爵の使用人で、とりまきの一人だが、せむし(これは差別用語か?ならば脊椎湾曲症で歩行障害のある人)でいつも取り巻きからは ばかにされ からかわれてばかりいる。彼は美しい娘、ジルダを自分の命より大切にしている。
一方公爵は女好きで、人妻であろうと誰の妻であろうと、人前であろうとなかろうと かまわず口説いて自分のものにしないと気がすまない。ジルダは箱入り娘で、教会以外には出かけるのを許されていないが、実は、教会で会った男に恋をしている。ある日、その人に 愛をうちあけられて純な乙女心は、天にも昇る思い。男は貧乏学生と名乗るが、実は、公爵。
ある夜、公爵の取り巻きたちが酔った勢いで、ジルダをリゴレットの愛人だと誤解して 彼女を誘拐して、公爵宅に閉じ込める。そこでジルダは 貧乏学生に出会う。娘を取り戻そうと 怒って公爵宅に乗り込んできたリゴレットにむかって、ジルダは意外にも 貧乏学生 すなわち公爵を愛していたと、告白する。こんな男によりにもよって、、、と、りゴレットは あきらめさせようと、ジルダを娼婦宿に連れて行って、公爵が娼婦と遊び呆けているところを見せる。それでも公爵をあきらめられない娘のために リゴレットは遂に殺し屋を雇って公爵を殺害するように依頼する。で、殺し屋がナイフで、約束を果たし、死体をいれた小麦袋を渡す。
ここが、最後の泣き場な訳だけど、リゴレットは死体を確認しようと袋を開けると、出てきたのは公爵の身代わりになった虫の息のジルダで、お父さん ごめんなさい。でも私は心から公爵を愛しているの、と言い、父は父で、もうこの世は終わりだ、命より大切な娘が自分の仕掛けた罠にかかって、死んでしまうといって嘆く。
このリゴレットのバリトンと、ジルダのソプラノのデュエットで、泣かない人はいない。公爵のテノールも素晴らしかった。新人だが、オーストラリア生まれのイタリア人。とても良くて、すっかり泣かされた。
オペラは美しい。豪華な舞台。よく訓練されたパワフルなボイス。ミュージカルと全然ちがう。オペラがバイオリンとすると ミュージカルはギターかな。ギターは自己流でも弾けるし、弾くためにそれほで集中力を要さない。が、バイオリンは専門のトレイナーについて、音が出るようになるのに10年、オペラ歌手も同じ、声が出るようになるのに10年。基礎を作るために時間もお金もかかる。オペラもバイオリンもバレーもそうだが 美とは時間をかけて基礎をつくりあげた上での努力の結果なのだ。
こういった古典はこれからだんだんと時代とともに支持する人々を失い、衰退していくことだろう。素晴らしいオペラを観た後、満足感だけでなく、わずかに もの悲しい痛みを感じるのは滅び行くものたちへのレクイエムを予感するからだ。