2007年8月24日金曜日

映画 「NO RESERVATION」


映画「NO RESERVATION」邦題「幸せのレシピ」を観た。スコット ヒックス監督 ハリウッド映画、主演 キャサリン ゼタ ジョンズと、アーロン エクハート。

この映画の前に、全く同じシナリオで、2001年に ドイツ版があって、邦題「マーサの幸せレシピ」で、上映されていて、とても好評だった。監督はサンドラ ネット ルペック 30代のシングル女性で、ハンブルグにある、評判のフレンチレストランが、舞台だった。

有名レストランのマスターシェフ、ケイトは、料理こそ自分の生きる道と決めて腕を磨いてきた。自分の名前のついたレシピを持っていて、固定客を沢山抱えるほど、評判の高いシェフとして、ワークホリックな毎日を送っている。彼女のキッチンは 冗談も余裕もスキもない、完璧主義の彼女の性格を反映して いつもピリピリしている。そんな彼女を、レストランのオーナーは、心理療法士のコンサルテーションに送り出す。にもかかわらず、彼女の頭の中は、新しいレシピのことばかり、自分の欠陥に気ずかないでいる。

そんな彼女の妹が9歳の娘を乗せた自動車で事故に合い 急死する。妹はシングルマザーで、この母親を失ったばかりの子、ゾウ(ABIGAIL BRESLIN )を、ケイトが引き取ることになる。結婚にも興味なく仕事ひとすじだったケイトが 急に母親役を引き受けることになり 子供の心をつかめない彼女はゾウの拒食症にあって、誰からも賞賛されてきた自分の料理を拒否されて、どうして良いかわからない。

そんなときに、レストランにイタリア人コックのニックが登場する。ハンサムで明るくてオペラを歌いながら料理する彼に早くもレストランオーナーやキッチンの働き手達の心は奪われてしまっている。自分こそがチーフとして固定客を持ち レストランを牽引してきたのに、自分の誇りと よりどころをケイトはいっきに失いそうになる。ニックはケイトのレシピにあこがれて来たというが、ケイトにはニックの何もかもが気に入らない。

しかし、そうしているうちに 心を閉じていたゾウが、ニックには 心を開きかけてきた。段々とケイトはニックを無視することが出来なくなってくる。そこで、まあ、子供がカスガイになって、二人が結ばれる めでたしめでたし、というお話。

ハリウッドの顔きき、マイケルダグラスと結婚して、エリザベステーラーが リチャードバートンから せしめたのよりも大きなダイヤをもらって、二人の子を産んだキャサリン ゼタ ジョーンズの本格的映画界への復帰作というので、大宣伝している映画。彼女の出産前に主演したミュージカル「シカゴ」では、彼女、アカデミーも取ったけれど、歌も踊りも本当に素晴らしかった。彼女、子持ちになっても相変わらず美しい。 この映画も、娯楽作品としてそれなりに楽しいし、シングルマザーの子が孤児になってしまって拒食症になるなど、泣けるところもあって、良い映画だった。

しかし、2007年アメリカ版のこれよりも、2001年ドイツ版のほうが ずっと良かった。比べ物にならない。 40才近くなろうとしている美女が料理に、うちこんで、他のものが見えなくなっている様子や、彼女が家に帰ってきて静まり返った よく整頓された部屋の様子、神聖な料理場で歌を歌ったり冗談をいって人を笑わせるようなイタリア人料理人に対する軽蔑心、嫌悪感を、ドイツ映画では女優がとても、自然に演じていて、共感がもてた。アメリカ女がこれを、まねてみても 全然寂寥感とか、嫌悪感がでてこない。

ハリウッド映画では、登場人物が良く動きよく しゃべり過ぎる。しゃべりすぎて下品だ。私はフランス映画の静寂、ひっそり喜び哀しさを暗示するような音のない瞬間が好きだ。 だいたい、この映画ではマンハッタンの人気フレンチレストランという設定だけど、忙しいニューヨーカーに、食い物の味がわかるのか? ソースに命をかけるフランス料理が、前の映画では、ヨーロッパだったから まだ納得できたんだけど。 前の映画では、イタリア人シェフが全く美男でないところも、良かった。今回のハリウッド版は、男が役の割りにハンサムすぎる。美男美女のコミカルな娯楽映画になってしまって、限りなく、無価値な見てすぐ忘れてしまう映画のひとつになってしまった。残念だ。