2007年12月26日水曜日

クジラを食べないで

世界最大の哺乳類で野生動物クジラは、あたたかい南太平洋で、赤ちゃんを産み、子連れで、餌を求めて、南極海まで回遊する。空腹の赤ちゃんを連れて、グループで襲ってくるシャチによる攻撃をかわし、何千何万キロを移動しなければならないクジラの旅が、楽ではないことを、BBC撮影チームが追跡撮影に成功して デビットアッテンボロウも紹介している。

このザトウクジラを、シドニーで観るための、ホエールウォッチングは、観光の目玉になって、世界から観光客が押し寄せる。シドニーから1時間ほど走った、ネルソンベイなどがホエールウォッチングの名所で観光客を満載した船が次々とッ出航する。そんなところまで行かずとも、まだ水が冷たい時期には シドニー湾の中にクジラが親子で迷いこんできたり、ボンダイや、ダブルベイといった高台から、クジラが勢いよく水を噴き上げる姿がよく観られる。それほどオーストラリアでは人とクジラとの関係が密だ。

12月21日、日本政府は今季、南氷洋での調査捕鯨でザトウクジラを捕獲しないことにした。50頭 殺される運命だったザトウクジラが12月19日の時点でアメリカの説得工作を続けていたトーマスシーファー駐日大使によって、2008年6月のIWC会議まで捕鯨中止を合意させた、というニュースが流れ、直後にあわてて日本政府がそれを否定するといったドタバタがあったのち、ともかく、ザトウクジラ捕獲中止が決定されたのは、当然とはいえ、朗報だった。

しかし、この12月に、日本の調査捕鯨が開始され、とりあえずザトウクジラは難を逃れたが、依然として、南氷洋ではナガスクジラ50頭、ミンククジラ950頭の捕殺が始まっている。

ザトウクジラとナガスクジラは、CITES(絶命の恐れのある野生動物の国際敵商取引に関わる条約、通称ワシントン条約)で、絶滅危惧種に指定されている。 また、ナガスクジラ捕獲は南半球では1976年に禁止されている。

オーストラリアのケビン ラッド首相は ザトウクジラ、ナガスクジラなど絶滅危惧種の殺害と肉の輸入はCITES違反であるとして、日本政府に抗議をした。東京在住のマレー マクリーンオーストラリア大使も政府の公式抗議を日本政府に手渡した。 スミス外相と、ピーターギャレット環境相は 外交手段で、抗議するだけでなくオーストラリア政府として、国際裁判に、提訴するため、国際法違反の証拠を収集するため、ビデオカメラを搭載した船舶、オーシャニックバイキング号と、航空機を、現地に派遣した。

ピーターギャレット環境相は現労働党政権の閣僚でありながら、元はグリーンの活動家だった。ちょっと前までミッドナイトオイルという名のロックバンドのリーダーでボーカル、保守政権批判、政府の白豪主義を揶揄し、人々の物欲主義を罵倒し続けた正統派活動家。この彼が 環境相では 日本の調査捕鯨という名の商業捕鯨が ケチョンケチョンに批判されるのが当然、このまま外交問題に、発展していくだろう。

捕鯨反対というとグリーンピースのレインボー号や、小さなボートで命がけの体当たりでクジラの殺生をくい止めようとする実力行使を思い浮かべるが グリーンピースや動物福祉基金や、RSPCAなどの民間ばかりでなく 今やオーストラリア政府が日本政府に対して抗議、船舶や航空機を使って行動に出ていることについて、事態を甘く見るべきではない。

世界で限りのある野生動物を、ひとつの国の国民だけが 殺して食べ続けていて良いわけがない。世界中から、ノンを言われている立場を はっきりと認識すべきだ。

クジラを殺して資源にしたり食料にする時代は終わった。世界の流れに日本だけが逆らって食べ続け、「野蛮人=日本人」のレッテルを貼られている現実から目をそむけてはならない。他に、食べ物が何でもある繁栄の極にある日本人がどうして、クジラを食べ続けるのか。

オーストラリアでは今、毎日のように日本の捕鯨船がクジラを捕らえ、甲板で切り刻んでいるフィルムがニュースで流れている。日本人と わかると、すれちがいざま唾と吐き掛けられたり、「クジラ食うなよ」と、脅かされたりする在外日本人の身を想像してみてくれないか。それを知らずにいる君に ビートルズのイマジンを送りたい。

ザトウクジラ50頭の捕殺は 一時中止されたが依然として ナガスクジラ50頭、ミンククジラ950頭は 今現在、日本の捕鯨船によって、捕殺され続けている。南氷洋はいまごろ、野生動物の赤い血で染まっていることだろう。