領事館のあるシテイまでは、車で10分、駅に車を置いて電車で30分ほど。平日の午前中、領事館には他の人はおらず、4人の担当者がひとつひとつ記入する用紙の説明をしてくれて、8つの目に注視されながらの記入であったから、間違えようがない。
東京を離れて沖縄に3年,フイリピンに9年、オーストラリアに30年経っていて、むかし私が育った日本では自民党と社会党と共産党しかなかった。いま投票用紙を見て、見たこともない聞いたこともない政党がたくさん並んでいて驚いた。
日本は戦後80年のうち、そのほとんどを自民党1党独裁国家だったのであり、それは日米安保条約と日米地位協定を背景に米国属国に甘んじてきたがゆえだ。戦後の朝鮮人学友らの運動も、60年代安保条約反対運動も60、70年代の三里塚、ベトナム反戦運動も、その後の気候変動に抗する市民運動なども広がりを見せているが、反対に欧州と米国の極右化に押されて「いま極右がトレンド!」とばかり日本でもトランプの真似をする輩が出てきたのは驚きだ。
しかし極右を批判する左翼陣営が「移民」は日本の漁業、農業、医療などで日本人より安い賃金で働いてくれて、なくてはならない存在なので移民を排除するな、人種差別反対、と主張する人の言い分にもあきれる。
オーストラリアに来てみれば、働く人の最低賃金は、時間最低$24、10ドル(2506円】週給915、90ドルだ。移民であろうがなかろうが、ワーキングホリデイの学生であろうが、パートのおばさんであろうが、民間企業や公務員であろうが、労働者はすべて同じ最低賃金以下で働かされたら雇用主が罰せられる。性別、年齢、国籍に関係ない。
そのうえ給料の12%分のお金を雇用主は、その人の年金として積み立てておく義務がある。仕事をやめて他に移ったりオーストラリアを去るとき、人は働いた分の積み立てられたお金を受け取って自分の国に帰ったり、他国に移動したりする。最低時給と積立貯金は、すべての労働者の権利だ。
そういったスタンダードを持った人が、日本に来て働くことになって、最低時給も定まっておらず、日本人より安い賃金で働かされて、右翼からは「移民反対、自分の国に帰れ」と叫ばれて、左翼からは「移民は安くてきつい仕事をしてくれてありがとう。人種差別反対」などと言われたら面食らう。何が差別反対か!移民は安くてきつい仕事をする労働力ではない。ほかの日本人と何ら変わりのない人間で、あなたもあなたも同じ労働者なのだ。移民の待遇の悪さや低賃金を、まず怒らなければいけない。